更新日: 2026/7/13
ICP 質量分析法(ICP-MS)は無機分析装置の中でも超微量分析ができるため、半導体や食品、材料などの多くの分野で使用されています。
一方、ICP-MS は基本的には比較分析です。
つまり、濃度のわかっているもの(検量線用標準液)を測定し、濃度と強度(比)との関係(検量線)を作成した後、未知試料を測定し、その強度(比)から濃度を求める方法です。
従って、検量線用標準液がうまく調製できないと、絶対に正しい定量値を得ることはできません。
特にICP-MSの場合、超微量分析を行うことができるため、検量線用標準液も低濃度(ppb=μg/Lレベル以下)で調製することもあると思います。
このようなときに検量線の直線性が良くなくて悩んだことは無いでしょうか?
スペクトル干渉の問題や、感度が不十分なこともあると思いますが、今回は溶液の調製が原因の場合について触れたいと思います。
特に今回は、直線性がバラバラというパターンについてお話ししたいと思います。
皆さんはいつも検量線用標準液をブランク(0 ppb)、標準液 1(0.1 ppb)、標準液 2(0.5 ppb)、標準液 3(1 ppb)、標準液 4(5 ppb)・・・といったように 2~5 倍程度の間隔で調製していると思います。
この時、皆さんは自然とブランク、標準液 1(0 ppb + 0.1 ppb)、標準液 2(0 ppb + 0.5 ppb)、標準液 3(0 ppb + 1 ppb)、標準液 4(0 ppb + 5 ppb)・・・といったように、ブランク(0 ppb と思われる。もしくは試薬ブランクを 0 ppb として減算している)に標準液を添加していると思います。
しかし、本当に標準 1 - 4 は標準液を添加する前はブランクと同じ 0 ppb なのでしょうか?
試しに、0 ppb を5 本調製して、測定してみてください。
もちろん、測定のバラツキというのもあると思いますが、それ以外でバラツキは無いでしょうか?
もし、標準液1に使用していた容器が 0 ppb ではなく、0.05 ppb と出てしまったら、0.1 ppb を調製しているつもりが、0.15 ppb(0.05 ppb + 0.1 ppb)になってしまいます。
これは、
容器からの汚染
ピペットからの汚染
環境からの汚染
などが考えられます。
この 5 本調製した 0 ppb と思われる溶液の濃度のバラツキが検量線の濃度に対して影響するほどあった場合、検量線は直線になりません。
図 1 は 5 本のブランク溶液の濃度が安定な場合(①)と、不安定な場合(②)を比較したものです。
青い部分がブランクレベルで緑色の部分が標準液になっています。
緑色の部分は正しくても、青色の土台の部分が不安定では直線性が得られません。

図1. 検量線の例
まずは、皆さんもブランク液を複数調製してみて、どれくらいのバラツキがあるのかを確認し、それが標準液の濃度に対して影響を与えてしまうのかを確認してみましょう。
複数のブランク溶液を調製した中で、最も低い強度を示したものが、正しいブランクレベルであり(もっと低い可能性はありますが)、それ以上、強度が出てしまったものは何かしらの汚染などが起こったものだと思います。
必要に応じて、
容器の洗浄方法の変更
容器の材質の変更
ピペット(プッシュ式)チップの共洗い方法の検討
環境からの汚染の確認(例えば、実験台の上に蓋を解放した容器をしばらく放置してどれくらい増加するかで確認できます。)-必要に応じてクリーンドラフト内で調製するなど環境を変える。
などの対応をしてみましょう。
ブランク強度が安定して高い場合には試薬ブランクの問題があるかもしれません。
より高いグレード(不純物の少ない)の酸を使用する必要があると思います。
これとは別に、濃度が高い場合に良くあることですが、強度が 200 万 cps を境にパルス信号からアナログ信号へ変わりますので、ここで傾きが変わるのであれば、パルス-アナログの係数がずれている可能性があるので、校正しなおしましょう!