更新日: 2026/5/13
内標準補正を実施したことはありますか?個人的な感触としては半数以上の人は内標準補正を実施していない状況だと思います。また、内標準補正をしていてもイットリウムでしかやったことがない、というので大半を占めていると思います。さらには、内標準補正していても適切に補正されているかの確認まではしていない場合が多いです。しかしながら、これらはいずれも間違いではなく、多くの場合で問題はないと思います。それは ICP-OES がマトリックスに耐性があることや、希釈測定していれば大きな誤差にはならないためです。
一方で、共存元素濃度が高い状態の溶液で測定しなければならない時、なんらかの対策をする1つの手段として、妥協案ではありますが、内標準補正が手軽な一手となるわけですが、もう一歩進めて、その補正結果は妥当なの?というところまで確認できると良いですよね。内標準元素の選定はどうすればいいのか、その確認方法は?そういった疑問にも実験的な結果を日々得ていけば、事前検証の必要もなくルーチン的に評価していけるようになります。
そこで今回は、適切な内標準補正をもっと手軽に実施するために、具体的にどうやって内標準元素の溶液を、標準液とサンプルに添加していくかについて図解したいと思います。
今回は単なる内標準元素の添加作業だけではなく、内標準補正が適切に補正計算できるかの評価もできるように、添加回収率を見る作業も合わせて図解します。
私が普段やっている簡易的な添加方法を図解しますので、ご自身の判断でお試しいただければと思います。
【簡易的な添加方法】
今回はあくまで簡易的な方法で、教科書に載るようなものではありませんが、簡単な作業性でありながら、妥当な結果を得られているか確認ができますので、おすすめです。今回の図解では、すべて 10 mL 定容を前提として記載しています。
ステップ①:内標準溶液を準備する

ステップ②:検量線用の標準液を10 mL準備する

ステップ③:サンプルと添加サンプルを10 mL準備する

ステップ④:すべての溶液に内標準溶液を一定量添加する

ステップ⑤:測定して内標準元素減感率と添加回収率の類似性を見る

内標準元素の挙動と、添加回収率の確認をすることで、そのサンプルマトリックスに適した内標準元素を選定します。これをすべてのサンプルでやるのではなく、代表サンプルで実施します。サンプル検体数が少なければ添加回収率で補正すればいいのでは?と思うかもしれませんが、その通りですね。
実際のところ、添加回収率を求めるための添加濃度決定には、まず検量線法または定性分析によってサンプル中の各目的元素の概算濃度を求めておく必要があります。パーキンエルマー Avio 500/550 の場合は SmartQuant 機能(定性・半定量機能)が有効です。
第55回 「ICPで添加回収率の確認実験手順を図で解説~その定量値が妥当かを判断するために~」に書いてある添加回収試験を内標準補正と合わせて実施することが有効です。
そもそも溶液調製前に内標準元素は選定しておきたい場合は、どんな内標準元素が良いのかについては過去の記事に少し書いてありますので参考にしていただければと思います。今後さらに多くの情報を提供できるように文書化を進めています。
第47回 「検量線法が無理なら内標準補正をうまく使うしかない~内標準元素の選定、元素・波長毎のイオン化干渉挙動を把握すれば使えるはず~」
第48回 「検量線法では対応できないサンプルに、内標準補正法を適用しよう(カドミウムや鉛などのイオン線の内標準元素を選ぶ)」
【オンライン添加内標準】
もっと簡単なのは、オンライン添加です。T型のピース、Y字コネクターなどを利用してポンプチューブを使って合流させるものです。この方法は最も手軽ですが、いくつかの不安があります。どんな不安を想像するかというと、
- 異径ポンプチューブ送液による流量・合流の不安定さ
- 各ポンプチューブの劣化進行度合いの流速変化・誤差
- サンプル粘性による流路合流時の混合具合
- ネブライザー噴霧時までに混ざっていない場合のシグナル変動の影響
などです。しかしながら、これらの懸念は心配しすぎであることが多く、そもそも内標準補正自体や ICP 測定自体にばらつきを持っているため、定量結果についてはだいたい大丈夫になることが多いです。ただし、その“ばらつき”を極限まで抑えたい分析目的なら、オンライン添加は上記の懸念から利用は難しいです。極限の安定性を求める場合は、以前の記事を参考にしていただければと思います。
第28回 ICPの再現性、測定のばらつき、相対標準偏差(RSD)を可能な限り向上させるテクニック(第1話/全3話)

今回は内標準補正のための添加手順や、妥当な補正元素の見つけ方について解説しました。もし内標準補正をやったことがない、やっているけど妥当なのか判断できない、そんなときにはぜひ試してみていただくと良いでしょう。ただし、あくまで簡易的な調製手順ですので、メスフラスコ等を使ってきちんと定容する作業は基礎として一度は実施されることを推奨します。