更新日: 2020/10/20
パーキンエルマーの前処理装置には、ヘッドスペースサンプラー、トラップサンプラー、サーマルデソープションシステムがありますが、今回はトラップサンプラーについてお話しします。
トラップサンプラーとヘッドスペースサンプラーの違いは?
以前のブログでも少し紹介しましたが、トラップサンプラーは、ヘッドスペースサンプラーに「トラップ機能」を付加したもので、捕集剤が充填されたトラップチューブに揮発成分を濃縮することができるサンプラーです。
ヘッドスペースにはない、トラップサンプラーに特徴的な点として、下記の 4 点が挙げられます。
➀ ヘッドスペースサンプラーと比較して最大 100 倍の高感度
② バイアルからサンプルを採取する時間を長くしても, シャープな形状のピークを取得
③ サンプリング回数を増やすことで、成分を濃縮
④ ドライパージ機能を利用し、水分や酸素の影響を低減
トラップサンプラーってスゴイ!!
ヘッドスペースサンプラーと比較して高感度であることが最大のポイントです。実際の分析例を見てみましょう。
図1 はウィスキーをヘッドスペースサンプラーとトラップサンプラーで分析したクロマトグラムです。
図1 ヘッドスペースサンプラーとトラップサンプラーを用いたウィスキーのクロマトグラム
ヘッドスペースサンプラーで測定したクロマトグラムのスケール(最大ピーク基準)は、7.71 × 108 です。これに対して、トラップサンプラーで測定したクロマトグラムのスケール(最大ピーク基準)は、3.69 × 1010 で、約 50 倍の強度が得られています。このように、トラップサンプラーを用いて分析を行うことで、より高感度な分析を行うことができます。
捕集剤が充填されたトラップチューブは高速で昇温(40 ℃/sec.)されます。そのため捕集した成分は瞬時に GC に導入され、シャープな形状のピークを得ることができます。
また、サンプルからの目的成分を抽出する回数を増やし、トラップチューブに成分を濃縮することで低濃度の成分でも分析することができます(図2)。
図2 サンプリングを4回行った場合のイメージ図
さらに、トラップサンプラーには「ドライパージ機能」があります(図3)。これは、サンプルチューブを加熱する前にキャリアガスを流し、水分や酸素を除去することで、クロマトグラムに及ぼす影響を低減できます。
図3 ドライパージ機能のイメージ図
便利なドライパージ機能ですが、対象成分も一緒に欠損してしまわないよう、適切なドライパージ時間を設定することが必要です。
具体的な例を見てみましょう。図 4、5 を見て下さい。これは、ドライパージ時間を 5、10、15 分に設定した際に得られた各成分の面積値をプロットしたグラフおよびそのクロマトグラムです。
|
四塩化炭素 |
1,4-ジオキサン |
トルエン |
5分 |
4769 |
433 |
2220 |
10分 |
5763 |
542 |
2651 |
15分 |
2945 |
342 |
1771 |
図4 各ドライパージ時間における3成分(四塩化炭素、1,4-ジオキサン、トルエン)の面積値
図5 各ドライパージ時間と3成分(四塩化炭素、1,4-ジオキサン、トルエン)のクロマトグラム
ドライパージ時間 5 分では、水分の影響によってベースラインが上昇してしまい、面積値が小さくなっています。一方 15 分では成分が欠損しまっているために、面積値が小さくなっています。この場合、10 分が適切な設定時間と言えます。
サンプルによって最適なドライパージ時間は異なりますので、実際のサンプルに合った設定をすることで水分の影響を低減し、良好な結果を得ることができます。
便利なトラップサンプラーですが、各パラメータの最適化が重要になってきます。トラップサンプラーには、まだまだスゴイところがあるんです。次回のブログでまたご紹介しますので、お楽しみに!
JASIS 2020のお知らせ
毎年恒例の JASIS 2020 が 11月11日から13日の3日間、幕張メッセ国際展示場で開催されます。クロマトグラフィーのブースでは、下記の 4 製品を展示いたします。
- ガスクロマトグラフ質量分析計:Clarus SQ8 GC/MS
- ヘッドスペースサンプラー:TurboMatrix HS
- トラップサンプラー:TurboMatrix Trap
- サーマルデソープションシステム:TurboMatrix ATD
ブースでは、全て実機が展示されています。実際に装置に触れながら、確認していただくことが可能です。この機会に、ぜひパーキンエルマーのクロマトグラフィー装置を体感してみてくださいね!
スタッフ一同、感染対策もしっかり行いますので、安心してご来場ください。お待ちしております!