特長
Falling Number フォーリングナンバー法
Falling Number® フォーリングナンバー法は標準化されており、測定は常に一定の方法で行われなければなりません。手順は以下の通りです。フォーリングナンバー法について理論・背景の詳細はこちらから。
![](/Portals/0/images/prod/food/fn_step.jpg)
- サンプルの準備
全粒サンプルの場合、ラボミル LM 3100 または LM 120 を用い、0.8 ㎜ シーブを使ってサンプル 300 g を粉砕します。サンプリングによる誤差を防ぐため、サンプル量は多くします。小麦粉サンプルの場合は代表サンプルを使用します。
- 秤量
7.0 ± 0.05 g の全粒粉または小麦粉を秤量し、ビスコメーターチューブに入れます。サンプル量は実際の水分量によって調整される必要があります。
- 蒸留水の添加
25 ± 0.2 ml の蒸留水をチューブに加えます。
- シェーキング
垂直に振とうしてサンプルと蒸留水を混和します。均一に分散するようにしてください。
- 撹拌
ビスコメーターチューブにスターラーをセットし、沸騰したウォーターバスに入れて機器をスタートします。5 秒後に撹拌が自動で開始されます。
- 測定
60 秒後(5 + 55秒)、トップポジションでスターラーが自動でリリースされます。スターラー自体の重みで沈降を開始します。
- フォーリングナンバー値
機器のスタートからスターラーが規定位置に到達するまでのトータルの時間が記録されます。これがフォーリングナンバー値です。
フォーリングナンバー法の化学
チューブを沸騰水浴に入れると、デンプンが糊化し始め、糊液はより粘度が上がります。 混合により糊液の糊化は均一化されます。この高温でもα-アミラーゼはでんぷんを分解し始め、粘度を低下されます。 デンプン分解の量はα-アミラーゼ活性に依存し、これはα-アミラーゼの活性が高いほど粘度が低くなることを意味します。 スティラーを落とすとき、その速度、したがってそれが底に落ちるまでにかかる時間は、糊液の粘度によって決定されます。
発芽した穀物が多ければ多いほど、α-アミラーゼの活性は高く、 α-アミラーゼ活性が高いほど、糊液の粘度は低くなります。そして糊液の粘度が低いほど、スティラーが底に落ちる速度が速くなります。 すなわち発芽した穀物が多いほど、フォーリングナンバーが低くなります。フォーリングナンバーとは、スターラーが底に落ちるのにかかる時間を指しています。
アプリケーション例
アミラーゼ活性の測定が必要な理由とは何でしょうか?収穫期の雨や天候不順が穂発芽の原因になります。発芽の際にアルファアミラーゼが生成されるため、アルファアミラーゼの活性は製パン、製麺の品質に直接影響し、モルトの製造にも不利に作用するためです。わずか 5 % 混入した発芽粒が、残りの 95 % の正常粒の品質を適切でないものにしてしまうこともあります。
小麦、ライ麦、大麦の加工では発芽ダメージの影響を受けるため、原材料を購入時にモニターする必要があります。農場から穀物集積まで製造チェーン全体で発芽ダメージに対応するためには収穫から配送までの間に測定を行う必要があるのです。
以下、穀物取引、製粉などでのフォーリングナンバーの利用の利点についてご覧いただけます。
穀物取引
収穫期に雨の多い年は発芽ダメージの発生が見られることがあります。そうした場合、すべてのトラックについて受け入れ時に積み下ろしの前に、または区別してサイロを分けて、正常粒に被害粒が混入するのを避けるために測定する必要が出てきます。穂発芽ダメージがあっても動物飼料やバイオ燃料など製パンに関係のない用途には使用できます。わずかでも深刻に発芽した被害粒が無計画に健全な穀物に混ざることで製パンやその他の最終製品の製造を不安定にするため、区分することは重要です。区分することで製粉で実際設けられている FN 値の規格に合わせた慎重なブレンドが可能になります。
フォーリングナンバー値は深刻に発芽した酵素活性が強い穀物が示す62秒から乾燥しt温帯で収穫された状態の良い 400 秒まで分布があります。区分の基準は国や市場、用途によって大きく異なっています。EU県内ではパン用小麦(一般)では 200 秒が基準となっています。250 基準、300 基準、350 基準まで国によって、例えば小麦輸出国やデュラム小麦向けでそれぞれ運用されています。ライムギの場合は基準値が低く、110 ~ 140 秒以上で区分されています。
発芽粒が及ぼす品質への影響により、世界中で国内外の取引で農家やトレーダーに支払う価格設定の基準として FN 値は利用され、品質規格に基づいた取引を実現しています。一般的には被害を受けた小麦は 10~30 %程度低い価格で取引されるため、農家やトレーダーには経済的に顕著な損失となります。
製粉と製パン
製パン工程において一定量のアルファアミラーゼは必要です。アルファアミラーゼがデンプンを分解することでできた糖が発酵のプロセスを促進します。酵素の含量は製パンの品質に直結しているとも言えます。アルファアミラーゼの活性が適切な場合、製パン時に容積は大きくなり、柔らかい食感が生まれます(写真では FN=250 )。活性が強すぎるとパンは粘りが出て容積が小さくなります(写真では FN=62 )。活性が低すぎでも、乾燥し、容積の少ないパンになってしまいます(写真では FN=400 )。FN 値はアルファアミラーゼの活性と逆相関の関係にあります。高いアルファアミラーゼ活性を持つほど FN 値は反対に低くなります。
製粉工程では FN 値狙った FN 値の製品を製造するために使用します。異なる FN 値の粉をブレンドして規格に合ったアルファアミラーゼ活性を持つ製品を製造しています。モルトの場合も同じように調整を行います。
具体的な最適の FN 値はどんなタイプの製品を製造するための原料になるかによって異なります。製パン用とクラッカー用では FN 値は異なります。製パンメーカーは、FN を使用して、特定の最終製品に必要な製品のタイプをサプライヤーに指示することができます。製パンメーカーは製粉工程と同じ要領で調整することもできます。しかし、仕入れの段階で要望すれば製パンメーカーは一定した製品を受け取ることができ、製パンの段階での調整を行わずに済みます。品質管理の担当者は FN 値を仕入れと出荷の両方で使える品質管理ツールとして活用できるのです。時間やコストの削減のための重要なツールとして役立ちます。
パスタほか麺類
麺類を製造は小麦粉の FN 値が低いと難しくなります。ドウの取り扱い、裁断の際、機械にかけた時の粘りなどに影響します。 茹でた時のべたつきや色などにも影響するため、適切な FN 値の原料を使うことで最終製品の品質のみならず、プロセスの改善も行えます。
モルトの製造
モルト用の大麦には高い発芽率が求められるため健全で高い生命力が求められます。いくつかの研究で農場での発芽はモルトの工程での発芽率を低下させるという報告があり、麦芽中のベータグルカンの含量の増加を招くとされています。 たとえ穂発芽の率が低くても影響されます。保管によって発芽率は下がっていきます。また、収穫直後に適切な発芽率であった大麦でもわずか 1 か月で収穫時の 95 % 以下の低下を示すこともあります(チャート参照)。目視ではわずかな発芽は判定できません。しかしアルファアミラーゼの活性で判定することができます。
穂発芽した大麦を仕入れることを避けるためフォーリングナンバー法での分析は大麦の受け入れで行われます。測定法は迅速で 5 分で穂発芽を判定できます。
FN > 250 は健全な大麦です。バッチは受け入れ可能と判定できます。
FN < 250 の場合は穂発芽が疑われます。発芽率の低下のリスクがあるため詳細な確認試験が必要とされます。