第69回 操作ブランク、試薬ブランクを差し引いていますか?

更新日: 2026/1/5

 操作ブランクを定量した場合に定量下限値以下だった場合、どうすべきか。メソッドに試薬ブランク減算の設定ができるけど、使ったほうがいいのか、についてまとめました。

 前処理を伴う分析において、操作ブランク測定は重要視されますが、
「測定した操作ブランクをサンプル値から差し引くべきか?」
「定量下限未満のブランクはどう扱うのか?」
「そもそも操作ブランクって必要なの?」
といった点で判断に迷うことも少なくありません。

 本記事では、
 操作ブランクは“減算のため”だけではなく、分析プロセス全体の健全性確認として重要であることや、操作ブランクが定量下限値未満であった場合どうすべきか、試薬ブランクの基本的な考え方と管理方法を整理したいと思います。

 操作ブランクの測定は、前処理を伴う分析を行われる場合は実施する必要があるものとして位置づけられています。その理由は、サンプル前処理で混入する微量のコンタミネーション(汚染)を無視できないことが多いためです。
 操作ブランクは、前処理操作(分注、酸分解、希釈、抽出、ろ過、加熱など)をサンプルと“同じ手順”で行い、試薬・器具・環境由来の汚染量を定量的に把握するための試験となります。特に、酸分解を伴う場合は、酸が蒸発したり、追加添加、濃縮などが行われると、それだけ試薬由来の汚染も増えてきますので、同じ操作をブランク(サンプルを含まない容器)で実施する必要があります。ビーカー等をホットプレート上で分解する場合は、お互いの容器間で汚染が飛び込まないようにしながら、操作由来の汚染も操作ブランクで管理することになります。すべてのサンプルに同様に汚染が進行するわけではありませんので、あまりに高い操作ブランク値であった場合は、そもそもその値を差し引けばいい、というものでもなくなってしまいます。十分、操作ブランクが低いこと、ということを確認する目的と考えておくと良いと思います。

 ICP-OES の前処理分析で操作ブランクを測定する必要性を簡単にまとめますと、順不同ですが

  1. 試薬・器具に含まれる金属不純物のブランク減算
  2. 前処理操作による汚染を評価(サンプル値から減算すべきかは要検討)
  3. 低濃度分析で正しい値を得るため(十分ブランクが低いことを確認するため)
  4. LOD/MLOQ を適切に算出するため
  5. 分析手順の妥当性確認
  6. 多くの分析基準・公定法でも記載されている

 測定したあとに、サンプル値から減算するかどうか、という点については難しいところでして、操作ブランクの定量値が定量下限値以下であった場合、その値自体に意味がなくなりますので、サンプル定量値から減算する行為は行わないほうが良いと思います。つまり操作ブランクを実施しなくても結局同じ、ということにはなってしまいます。
 正しくは、定量下限値を求め、操作ブランクが有意に定量できる値であった場合、サンプル定量値からその値を減算する、というのが良いと考えられます。

 汚染がない場合、減算するしないという目的よりも、分析プロセス全体の健全性を確認する行為、として位置付けるとやる価値もあるかなと思います。

 一方、試薬ブランクは管理が比較的容易です。標準液もサンプルも同じ量の酸を使う、ということであれば、別途用意する必要もなく検量線ブランク減算で済ませることができます。マトリックスマッチングをさせた検量線は有効です。マトリックスマッチングをしていない場合は、サンプルを調製したときと同じ試薬量でのブランクを用意し、その汚染濃度を差し引くようにします。

 定量値に影響を与えてしまうほど汚染濃度が高い場合は慎重に考える必要があります。だいたい、定量値に対し 100分の1 程度のブランク値であるといいですね。

 ちなみに、パーキンエルマー ICP-OES のソフトでは測定メソッド内に試薬ブランクを指定することや、ブランクを複数設定し元素毎にどのブランクを減算させるかの指定を行うことができます。たとえば、塩酸ベースの検量線ブランク、硝酸ベースの検量線ブランクといった使い方が想定されますが、あまり出番はないかもしれません。試薬ブランクは検量線測定後のすべてのサンプル測定値に対し自動的に減算してくれますが、上記のとおり、試薬ブランクの値が定量値として利用できる値なのかどうかを把握するには、試薬ブランクもサンプルとして測定し、その後、減算に利用するかどうか評価すると良いでしょう。

正しい手順としてはこう考えるのがスムーズ

  1. まず定量下限(LOQ / MLOQ)を求める
  2. 操作ブランクを測り、有意に定量できるレベルか確認する
  3. 定量できているレベルなら減算を検討する
  4. MLOQ 未満なら減算しない

 なお、もし操作ブランクが高すぎる場合は、「引けばOK」という話ではなくなります。操作ブランクの汚染は 全サンプルに同じだけ乗るとは限らないためです。
 高い値が出る場合は、そもそも前処理や環境・器具の状態を見直すフェーズになります。

まとめ

  • 操作ブランクは、前処理分析では必須の確認項目
  • 目的は「引くため」だけでなく、プロセスの健全性確認
  • 操作ブランクが MLOQ 未満なら減算しない
  • 試薬ブランクは比較的管理が容易で、検量線ブランク減算で足りる場面が多い
  • ソフトの自動ブランク減算は便利だが、ブランク値の有効性評価が先