第33回 GC, GC/MSにおけるデータ処理を上手に行うためのコツ①

更新日: 2025/6/6

 GC や GC/MS 分析は、化学分析において非常に有効な手段です。しかし、取得したデータをどう扱うかによって、最終的な分析結果の信頼性が大きく左右されます。今回のブログでは、分析の質を高めるためのデータ処置の実践的なコツ第1弾をご紹介します。

クロマトグラムデータの取り込みとサンプリング設定

 GCやGC/MSのデータ精度に直結するのがデータのサンプリング条件です。正しいデータ取り込みのためのポイントをマスターしましょう。

① サンプリング間隔(Sampling Rate)

 検出器が信号を読み取る時間間隔のことです。通常は秒単位(例:0.1 秒/ポイント)で設定されます。この値は、ピーク形状に合わせて設定することが重要です。
 シャープなピークは採取周期を短くし、幅広なピークは長い周期でデータを採取することが重要です(図1)。


図1. サンプリング間隔とデータポイントの例

 

 また、正確なピーク面積を求めるためには、1ピークにつき、20~30点のデータポイントが必要とされています。データ点数が少なすぎると、ピーク形状がいびつになり、保持時間が正確に検出できなくなる場合がありますので、注意しましょう。

 

② 時定数(Time Constant)

 検出器の信号出力のスムージング処理時間のことです。信号の立ち上がりを滑らかにすることでノイズを減らします。
図2 に時定数 0.05秒と 2秒の場合のクロマトグラムを示します。時定数 0.05秒の場合は、シャープなピークが得られていますが、時定数 2秒の場合は、ピークの切れが悪くなっていることが分かります。この状態では、正確な面積値を算出することは難しくなります。


図2. 時定数の違いによるピーク形状比較の例

 

 また、この時定数は、値が小さすぎるとノイズが多く、S/N が低下しますし、逆に大きすぎると分離能が低下してしまいますので、分析対象成分のピーク幅を確認し、それに応じた設定を行うことが必要です。

ピーク積分の基本とコツ

 ピークの自動積分機能は便利ですが、マトリックスが複雑な場合やノイズが多いと誤認識しやすくなります。特に、ショルダーピークや未分離ピークが存在する場合は、手動での修正が必要になる場合が多くみられます。

表1.自動積分と手動積分の比較
項目 自動積分 手動積分
処理速度 速い 速い
精度 複雑なマトリックスでは不安定 高い
再現性 条件に依存 オペレーターに依存

 パーキンエルマーのソフトウェアでは、自動積分機能でも、どのようにベースラインを引くか、ピークを分割するか、など詳細に設定することが可能です。


図3. パーキンエルマーのソフトウェアにおける自動積分の設定画面

 

 最初の数サンプルで積分設定を見直し、「解析処理メソッド」として保存しておくことで、以降のデータ処理をスムーズに行うことが可能です。

 次回のブログは、リテンションタイムの変動対策についてご紹介したいと思います。お楽しみに!