試料導入のイロハ~その6・マイクロシリンジをうまく使いこなそう!~ | クロマト分析 日々のQ&A - PerkinElmer Japan

試料導入のイロハ~その6・マイクロシリンジをうまく使いこなそう!~

 試料導入のイロハとして、試料導入の際の注意点や様々な注入法、それらを選択する時の考え方やポイントについてご紹介してきましたが、今回でこのシリーズは最終回です。今回のブログでは、マイクロシリンジを使用する時の注意点や、コツをご紹介したいと思います。

 

マイクロシリンジの使い方とそのコツ

 GC分析をされている皆様には、マイクロシリンジはお馴染みのパーツですよね。最近は、オートサンプラー付きのGCが広く普及しているため、マニュアル(手動)でGCに注入することは少なくなってきているかもしれません。しかし、マニュアル注入が必要になる場合に備えて、その使い方とコツをマスターしましょう!

【一般的な使用方法とコツ】

  1. シリンジ内を試料の希釈溶媒と同じ溶媒でよく洗浄します。この時、プランジャーを最大量までゆっくり引き、押し出す操作を数回繰り返します。
  2. 次に、洗浄溶媒を新しいものに変え、先ほどと同じ操作を、ニードル部分が溶媒で満たされるまで約 5-10 回程度、溶媒の出し入れを繰り返します。
  3. 溶媒を出し切っている(目盛りがゼロ)の状態で、ニードルの先端を溶媒から出し、清浄なキムワイプなどでニードル表面に残った溶媒を拭います。
  4. 次に、サンプル溶液内にシリンジを入れ、サンプル溶液で数回共洗いします。この時、最初の数回は、コンタミを防ぐため、廃棄するようにしてください。
  5. サンプルの採取量は、目的注入量よりも少し多めに採取し、気泡が無いことを確認しながら、目盛りに合わせます。この時、シリンジの傾きに注意しながら、清浄なキムワイプなどでニードル表面の溶媒を拭います。
  6. GC 注入口にシリンジを差し込み、一呼吸おいてから一気にプランジャーを押し込んで試料を GC に導入します。この時、ニードルが曲がらないよう、慎重に注入口に差し込んで下さい。また、注入口の圧力により、プランジャーが飛び出してくる可能性がありますので、プランジャーを抑えながら注入するようにして下さい。


図1 PerkinElmer製の様々なマイクロシリンジ(上:マニュアル用、下:オートサンプラー用)

 

 手順6にも記載したように、マイクロシリンジの針は、非常に曲がりやすいため、気を付けて取り扱うようにしましょう。筆者自身も、何度か注入時に折り曲げてしまった経験があります(笑)。折り曲げ防止として、「ガイド」や「プランジャーサポート」と呼ばれるものも市販されていますので、必要に応じてこれらのパーツを併用すると便利です。

 

良好な注入再現性を得るためには?

 マニュアル注入での誤差の要因は、大きく 2 つあります。ひとつは、注入時にニードルの先端に残った試料が導入されるなどの注入量の誤差、もうひとつは、注入時間の変動により、分析開始時間やピーク形状が乱れること等があります。
 対策については、様々な方法が検討されていますが、代表的な「溶媒フラッシュ法」についてご紹介します。

【溶媒フラッシュ法の手順】

  1. 上記で記載した手順1~3を実施します。
  2. プランジャーを約 0.2~0.3 µL の目盛りまで引き、気相を入れます。(この時、シリンジ内の溶媒;約 1 uL の次に、気相がある状態になります)。
  3. シリンジをサンプル溶液に入れ、目的採取量を採取します。その後、そのままプランジャーを引き上げて気相を入れます。

 


図2 溶媒フラッシュ法による試料採取の模式図

 

 この溶媒フラッシュ法、どこかで見覚えはありませんか?・・・そうです、第26回のブログでご紹介したサンドイッチ法に似ていますよね(詳しくは、第26回のブログを参照して下さい)。
 また、第25回のブログでは、ディスクリミネーションについてお話ししましたが、その対策として、この溶媒ソルベント法が用いられています(併せて、第25回のブログを再確認して下さいね)。

 次回は、シリンジのメンテナンスと、オートサンプラーの使用上の注意点についてお話したいと思います。お楽しみに!

 

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