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ICPで添加回収率の確認実験手順を図で解説~その定量値が妥当かを判断するために~

2024年7月25日に各地の代理店の皆様との共催でウェビナーを開催することになりました。そこでICP-OES枠では、ブログ記事を深掘りした「さらに一歩深く理解するICP-OESのあれこれ」と題しまして発表します。ぜひご参加ください。詳細はこちら

 

装置で測定してソフトが出してきた定量値が独り歩きをしてしまいます。ICPで得られる“結果”は“数値”であるため、その“数値”が正しいものなのか、妥当な範囲なのか、チェックすることが重要です。そのチェックする方法の中で、一番手軽で私も行っているのが「添加回収率の確認」です。ICP-MSのブログでも紹介していますが(ICP-MSブログ第5回:添加回収実験を実施していますか?)、今回は図解してみたいと思います。


図 回収率100%だったときのデータ

 


図 回収率80%だったときのデータ

 

サンプルに標準液を添加する、っていう行為が、実際どうやるの?というご質問がたまにあります。たとえば分解サンプルであれば、サンプル分解液を2つ用意し、メスフラスコなどメスアップする際に、標準液を添加したものと、添加せずに調製したものを準備します。この場合の懸念は、分解サンプルが2つ並行で実施してもばらつきがないのか、というところでしょう。

個人的には、図のように、サンプル調製したあとの溶液を2分割(一部分取)して、それぞれに少量の溶液(ブランクまたは標準液)を追加することで、添加および無添加サンプルを調製して測定しています。

回収率自体も測定値同様にばらつきますので、100%だろうと99%だろうともそれほど気にしなくても良い、というのが前提にある場合に限ります(妥当に回収できているかの傾向を見る場合)。

 

では、この回収率がどれくらいまでを許容とするのか?という疑問が出てきます。
回収率90%であれば、定量値は10%程度低めということですから、本来10 mg/Lのサンプルが、9.0 mg/Lとして計算されてくる、ということになります。

10 mg/L → 9 mg/L その差 1 mg/L
1 μg/L → 0.9 μg/L その差 0.1 μg/L

不思議なもので、同じ回収率でも、測定濃度が高いと誤差が大きく見えるし、濃度が低いと誤差範囲のようにも見えてきます。従いまして、回収率がどれくらいの範囲であればOKか?という疑問は、ご自身の分析目的次第、ということになると思います。

添加回収試験は、イオン化干渉物理干渉があったかどうか調べて結果を出すことができます。定量値が妥当だと表現したり、これくらいの定量誤差があるかもと確認したりすることができます。簡単な操作でチェックができますので、ぜひ試してみてください。
しかし、分光干渉がある場合は、分光干渉分も上乗せされた定量値になるため、添加回収率で評価することはできませんのでご注意ください。

 

合わせて読みたい記事:

ICP-MSブログ第5回:添加回収実験を実施していますか?
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