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ICP質量分析法で有機溶媒って測定できるの?-2

前回、ICP質量分析法での有機溶媒の測定方法について以下のような問題点や注意点があるということで、①から③までについて紹介いたしました。

① 有機溶媒によってはプラズマが消灯してしまうことがある。
② 有機溶媒の導入によって煤(すす)が発生してコーンなどに付着してしまう。
③ 固体試料を有機溶媒で溶解したサンプルを測定する場合には特に注意が必要。
④ 有機溶媒中に元々含まれている不純物が問題となることがある。
⑤ 標準液には何を用いたらよいのか?
⑥ 有機溶媒(C:炭素)による新たなスペクトル干渉の除去が必要

 

今回は後半の④から⑥について紹介したいと思います。
一般的に水系で測定を行う場合、多くの方が比抵抗で管理された超純水製造装置を使用して、今、出てきた超純水を使用して調製を行っていると思います。(ほとんどの元素は ppt=ng/L 以下のレベルだと思います。)
一方、有機溶媒で測定を行う場合には、市販の試薬を購入し、容器に入った有機溶媒を小分けして、調製を行います。
いくつかの有機溶媒では高純度グレードのものが市販されていますが、それでも製品によっては、ppb=μg/L レベルの元素が含まれていることもあります。
その含有量が測定に影響を与えるのであれば、測定が難しいと思います。
このような場合、非沸騰型蒸留装置などで精製してから、用いるとよいと思います。
この装置を用いることで、ppt=ng/L レベルまで不純物量を低減させることも可能です。
または、最近では超高純度グレードの有機溶媒も市販されていますので、これを用いることで、超微量分析も可能になってきています。

 

次に標準液についてですが、水系の場合、硝酸や塩酸などで調製されている標準液を希釈して用いることが出来ます。
有機溶媒においても水と混合できる溶媒の場合には、水系の標準液を用いることが可能です。
この時、最終のサンプル中の水の含有量に注意してください。
標準液を超純水または希硝酸で希釈し(1 次希釈液)、それを有機溶媒に添加する場合、検量線用標準液は濃度が異なるため、1 次希釈液の添加量が異なります。
つまり、それぞれの溶液中の水の含有量が異なります。
1 次希釈液の採取量が、有機溶媒で定容する液量に対して割合が大きいほど、水の含有量が大きく異なります。
これにより、ICP-MS での感度が異なってしまうことがあるので、注意が必要です。
このような場合、1 次希釈液から、同じ有機溶媒を用いることにより、最小限に抑えることも可能です。
ただし、多くの方がピストン式ピペットを使用していると思いますが、水系と異なり、粘性などにより採取が難しい場合もありますので、注意が必要です。
(どうしても採取が難しい場合には重量で調製するというのも 1 つも方法だと思います。)
この時、可能であれば、少量の硝酸を添加することで、金属が安定になり、結果的に ICP-MS での強度の安定性が高くなります。
ただし、有機溶媒で何かを溶解したサンプルに、硝酸を添加した際に沈殿が起こるのであれば、添加を避けなければなりません。

 

有機溶媒によっては水がほとんど溶解しないものもあります。
そのような場合にはオイル系の標準液も市販されていますので、これを用いることで対応できます。

 

次に ICP-MS での測定における注意点です。
有機溶媒は当然のことながら、主成分は炭素(12C、13C)になります。
炭素の影響のある元素としては以下の表のようなものがあります。

測定対象元素 スペクトル干渉
24Mg 12C2
27Al 13C14N、12C14N1H
52Cr 40Ar12C

しかし、安心してください。
この図のようにこれらはすべて NexION であれば NH3 ガスを導入することで、除去することが可能です。


図.有機溶媒中の24Mgの信号強度およびBEC

 

以上、前回から 2 回に分けて、有機溶媒を ICP-MS で測定する際の注意点について紹介しました。
有機溶媒の測定は特に難しいというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。
最近は超高純度の有機溶媒が入手可能になったことや、有機溶媒でも消灯しにくい強いプラズマを生成できる装置が開発されるなど、皆さんにも使いやすくなっていると思います。
有機溶媒の選定や非沸騰型精製装置も含めて、もし、ご心配なことがあれば、いつでも PerkinElmer Japan まで、ご相談ください。

 

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