ICP発光で1%(10,000ppm)まで検量線を書けるのか? | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

ICP発光で1%(10,000ppm)まで検量線を書けるのか?

 ICP発光は ppb ~ ppm まで幅広い濃度範囲で測定できる無機分析装置です。単元素標準液は 10,000 ppm(1%)も販売されていますが、数百ppm の検量線がひければ活用できます。今回は、アルミニウム 10,000 ppm を使って、10,000 ppm まで直線検量線が書けるかを検証してみました。標準液は、0, 1000, 2000, 4000, 6000, 8000, 10000 ppm(原液)に調製しました。微量域の限界に挑戦した第26回とは真逆の検証です。
 ぱっと思いつくのはラジアル測光で、感度の悪い波長であれば可能かもしれない、と予想されますが、実際はどうでしょうか。図1にソフトのスクリーンショットを示します。


図1 10,000 ppm (1%) のスペクトル一覧と検量線一覧

 

 10,000 ppm だとアキシャルの場合 237 nm 以外は飽和してしまいました。ラジアルであってもいずれの波長でも検量線は直線ではなく、曲がってしまっていますね。図2 にはラジアル測光 Al 308 nm の検量線詳細情報を記載します。


図2 ラジアル測光 Al 308 での 10,000 ppm までの曲線検量線

 

 曲線にはなっていますが、一番低濃度の 1000 ppm でも誤差 3.8 % 程度に収まっています。相関係数は 0.99999 以上です。これでいいのか?というとそうでもない気がします。曲がっているということは、すでになんらかの干渉が発生しており、サンプルに Al 以外の共存元素を含んでいた場合、定量性が確保できない懸念があります。内標準補正をすればいいかもしれませんが、できれば直線になっていてほしいと考えられます。発光強度を単に落とし検出器飽和を避けたとしても曲線であれば干渉が考えられます。

 では次にロバストな測定条件で測定してみました(図3)。なお、今回はオンライン希釈や、ガス希釈などは用いません。


図3 10,000 ppm(1%) のスペクトル一覧と検量線一覧(ロバスト条件)

 

 今回のロバスト設定条件では、最も高感度なアキシャル Al 395 nm はさすがに飽和してしまいましたが、他の波長は飽和せずに測定できています。アキシャル測光 394 nm でも良好な直線が得られ、検量線と測定点の誤差は 3 % 未満に収まりました(図4)。


図4 アキシャル測光 Al 394 での 10,000 ppm までの直線検量線

 


図5 ラジアル測光 Al 396 nm での 10,000 ppm までの直線検量線

 

 図5に示すようにラジアルであれば最も発光強度が高い 396 nm であっても直線検量線が得られました。この条件であれば、数千 ppm のサンプルでも定量できそうです。このときの Al 396 nm ラジアルの検出下限値は 0.2 ppm でした。したがって、この条件では 1~10,000 ppm まで 5 桁の範囲で定量可能だと考えられます。今回はプラズマ条件だけで設定しましたが、そういえば、イオン化抑制剤を使うのもありかもしれないですね。

今回のロバストな測定条件:

項目 設定
装置名 Avio 550
標準液 Al 10,000 ppm から希釈調製
トーチ 石英製標準トーチ
インジェクター アルミナ製 0.8 mm i.d.
ネブライザー SeaSprayネブライザー
チャンバー ガラス製サイクロン
分解能 標準分解能モード
プラズマガス [L/min] 10
補助ガス [L/min] 0.2
キャリヤーガス [L/min] 0.25
RF出力 [W] 1500
サンプル流量 0.8
測光方向 アキシャルおよびラジアル
トーチ深さ -3
繰り返し 3
内標準 なし
加湿器 あり
オートサンプラー S23

 

 常に全力の高感度な状態で測定する必要はありません。ICP発光では Al は 1 ppb 前後でも測定ができますが、分析目的に応じて必要な感度設定し利用することで、運用の幅が広がり、希釈作業などの簡略化もできます。今回は金属や電池、貴金属マトリックスなどの主成分分析をターゲットに想定して紹介させていただきました。

参考:パーキンエルマーの10000 ppm 標準液リスト

Single-Element Pure Standards - 10,000 µg/mL

Element Symbol Matrix Pure Plus Grade
125 mL
Part No.
Pure Grade
500 mL
Part No.
Aluminium Al 5% HNO3 N9304111 N9304110
Antimony Sb  20% HCl
N9304292
Antimony Sb H2O/Tartaric
Acid/Tr HNO3
N9304293 N9304294
Arsenic As 5% HNO3 N9304295 N9304296
Barium Ba 5% HNO3 N9304297 N9304298
Beryllium Be 5% HNO3 N9304299 N9304300
Boron B H2O N9304301 N9304302
Cadmium Cd 5% HNO3 N9304303 N9304304
Calcium Ca 5% HNO3 N0691581 N9303764
Cerium Ce 5% HNO3 N9304305 N9304306
Cesium Cs 5% HNO3 N9304307 N9304308
Chromium Cr 5% HNO3 N9304309 N9304311
Chromium Cr 5% HCl   N9304310
Chromium Cr H2O   N9304312
Cobalt Co 5% HNO3 N9304313 N9304314
Copper Cu 5% HNO3 N9304112 N9300283
Erbium Er 5% HNO3   N9304315
Gadolinium Gd 5% HNO3 N9304316 N9304317
Iron Fe 5% HNO3 N9304113 N9307117
Lanthanum La 5% HNO3 N9304318 N9304319
Lead Pb 5% HNO3 N9304321 N9304320
Lithium Li 5% HCL   N9304322
Lithium Li 5% HNO3 N9304323 N9304324
Magnesium Mg 5% HNO3 N0691745 N9304114
Manganese Mn 5% HNO3 N9304115  
Mercury Hg 10% HNO3 N9304325 N9304326
Molybdenum Mo H2O/0.4% HF N9304327 N9304328
Nickel Ni 5% HNO3 N9304117 N9304116
Niobium Nb H2O/0.4% HF N9304330 N9304329
Phosphorus P H2O N9304119 N9304118
Potassium K 5% HNO3 N9304121 N9304120
Rubidium Rb 2% HNO3 N9304331 N9304332
Scandium Sc 5% HNO3 N9304333 N9304334
Selenium Se 5% HNO3 N9304335 N9304336

Pure Plus Grade Standards for ICP-MS

  • Analyzed by ICP-OES
  • Analyzed by Classical Web Assay
  • 67 trace impurities analyzed by ICP-MS of the final solution and reported on the cetificate
  • Impurities reported at ppb level
  • All Standards are prepared and certified under ISO Guide 34 and ISO 17025
Element Symbol Matrix Pure Plus Grade
125 mL
Part No.
Pure Grade
500 mL
Part No.
Silicon Si H2O/4% F- N9304122  
Silver Ag 5% HNO3 N9304337 N9304338
Sodium Na 5% HNO3 N9304124 N9304123
Strontium Sr 5% HCl   N9304339
Strontium Sr 5% HNO3 N9304340 N9304341
Sulfur S H2O N9304126 N9304125
Tantalum Ta H2O   N39304342
Tantalum Ta H2O/0.8% HF N9304343  
Tin Sn 2%/HNO3/2% HF   N9304344
Tin Sn 20% HCl N9304345 N9304346
Titanium Ti 40% HCl   N9304347
Titanium Ti H2O/2.4% F- N9304348 N9304349
Tungsten W 2% HNO3/5% HF   N9304350
Tungsten W H2O N9304351 N9304352
Uranium U 5% HNO3 N9304353 N9304354
Vanadium V 15% HCl   N9304355
Vanadium V 15% HNO3 N9304356 N9304357
Yttrium Y 5% HNO3 N9304128 N9304127
Zinc Zn 5% HNO3 N9304129  
Zirconium Zr 10% HCl   N9304358
Zirconium Zr 5% HNO3 N9304359 N9304360

 

 

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第27回:検量線の直線性の指標である相関係数って大事ですか?
第15回:検量線の範囲や測定点数に決まりはあるのか?

 

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