ICPの再現性、測定のばらつき、相対標準偏差(RSD)を可能な限り向上させるテクニック(第2話/全3話) | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

ICPの再現性、測定のばらつき、相対標準偏差(RSD)を可能な限り向上させるテクニック(第2話/全3話)

 前回は、読取の時間を長くすれば測定のばらつきは抑えられる、という簡単な方法での改善方法を紹介しました。しかしその RSD は平均 0.2% 台が限界のようでした。今回は、さらなる改善を目指し内標準補正することでの実験データを紹介します。
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 どういう作戦かというと図1に示すように、元素Aと元素Bがあったときに、同一測定瞬間のデータ同士で割ってあげると、相対値は一定になる、ということです。


図1 シグナルノイズを補正するための内標準補正の考え方

 実際に、図1に示している Co238.892 nm、Co228.616 nm、Co230.786 nm の強度を Y371.029 nm の強度で補正してみました。測定の読取時間は 1 秒設定で実施しました。

 


図2 Y371で強度補正したCo238,Co228,Co239の測定RSD

 

 結果として、測定強度が類似している Y371 と Co238 は、RSD が大幅に改善され読取時間 1 秒であってもRSD 0.1 % 前後になりました。一方、Y371 よりも強度が低い Co228, Co230 は測定 RSD の改善は見られませんでした。これは、読取時間を 1 秒と設定しても、その読取時間内の露光の “区切り(積分時間)” が発光強度によって異なっているためです。そのイメージを図3に示します。


図3 測定強度によって積分時間が自動設定される機能による影響

 

 これが CCD 検出器を使った ICP の積分時間の自動割り振り機能です。これによって検出器が飽和せずに広いダイナミックレンジを確保しつつ、長い読取時間で測定再現性を向上させる、といったメリットを生んでいます。おそらくこれはどのメーカーの検出器も同じ機構でしょう。ただ、結果として、積分時間を自動で割り振ってしまうため、シグナルノイズ自体を補正しようとしても、発光強度が異なると、測定タイミング・幅が異なっていて補正できない、ということです。

 では、どうすればこの課題を克服できるかというと、測定したい元素と、内標準元素の発光強度を同じくらいに調製すれば良い、ということです。同じ強度であれば、同じタイミングで測光しますので、短い読取時間でもノイズをキャンセルし、RSD を改善することができます。いや、でもそれって現実的ではないですよね。決まった濃度範囲での測定しかしないなら可能ですが。同じ元素でも波長によって強度が違うから、波長を選択すれば対応できる範囲も増えそうですが設定が面倒そうですね。

 今回は自動積分機能がもたらすメリットとデメリットを紹介しました。では、多元素を同時に、発光強度が異なる元素も補正し RSD を改善させるにはどうすればよいでしょうか。もう薄々気づいている方もいるかもしれませんが、次回に続きます…。

 

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