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ICPの再現性、測定のばらつき、相対標準偏差(RSD)を可能な限り向上させるテクニック(第1話/全3話)

 2021年もそろそろ終了です。このブログでは書籍やアプリケーションノートでは語られない内容を中心に紹介してきました。ICP は便利な装置だけれども、まだまだノウハウが共有されていないと感じます。どんどん公開していくことで、ICP の良さや活用先を知ってもらえればいいなと思っています。さて、今日は幾度となくちらほら話題になる測定ばらつきの話です。この話題で年またぎ連載で第28、29、30回目を執筆します。更新のタイミングはメルマガ配信告知よりも早くなりますので、気になる方は年末年始にこのブログを訪れてみていただければと思います。
 (なお、予定していた10,000ppmまで検量線が書けるか?というテーマは、この第3話の次(第31回)に紹介させていただきます。先取りで見たい方はご連絡ください。)

 

 ICP発光分析で観測している発光強度 (図1) は一定ではありません。ある程度の幅を持った強度のばらつきを持っています(図2)。このばらつきに起因して、得られる定量値の幅も変化しています。定量値の誤差要因は様々ありますので、観測する発光強度値くらいは極力ばらつかないようにしたいものです。これまでにも様々な視点からばらつきを抑える、再現性を高める方法について掲載してきましたが(第24回22回18回11回)、今回は読取時間と積分時間にフォーカスして、測定再現性を向上させる方法について全3話で紹介していきます。通常の測定 RSD は、1~0.2 % 程度ですので、その 10分の1 である RSD 0.02 % 台を目指します

 


図1 発光スペクトル一覧表示

(このスペクトルを見ていると分かりにくいですが、発光強度は上下動しています。
なお、スペクトルは定性することに利用していますが、定量には発光強度を利用しています。少し混同しがちですが、定量分析は結局のところ、ある波長における光の強度を使っているだけです。)

 


図2 連続シグナル表示(横軸時間 vs 縦軸発光強度)
(発光強度を連続シグナル表示すると、発光強度が上下動している様子が見て取れます。)

 図2の連続シグナルを見ていると、強度のばらつきが見ることができます。このばらつきの発生原因には、ペリスタルティックポンプ由来の脈動や、ネブライザー噴霧の不均一さ、発光源となるアルゴンプラズマ自体の揺らぎだけではなく、検出時に至るまでのショットノイズ、フリッカーノイズなどもあると考えられます。

 

 単純に再現性を上げるなら、強度の読取時間範囲を長くすれば良いです。1 秒間の強度平均を使うよりも、5 秒、10 秒、20 秒と増やしていけば、平均値(≒中央値)に値が収束していくはずです。実際に、読取を行う時間を変えたときの測定強度RSDの幅を調べてみました。

 


図3 読取時間を変えたときの測定強度RSDの幅の違い(ボックスプロットで表現)

試験内容:1測定(読取時間毎にn=3)におけるRSD算出を、10~15回実測
色の違い:元素、波長の違い
ボックス上部のバー:実測されたRSDの最大値
ボックス下部のバー:実測されたRSDの最小値
ボックス内の白点線:実測されたRSDの平均値
ボックス内の白実線:実測されたRSDの中央値

 


図4 読取時間と測定RSDの関係図

 ボックスプロット (図3) と XYプロット (図4) で測定 RSD の変化を表現しました。読取時間を長くするほど RSD は改善傾向が見られていますが、10 秒以上増やしても改善傾向は鈍化しており、平均値で RSD 0.2 % を下回るのは難しそうだと分かります。

 

 ここまでまとめますと、単一測定における RSD を抑え、ばらつきの幅を狭くするには、長い読取時間を設定する必要があります。しかしその限界はあります。この幅で測定しているものだということを認識して運用していきましょう。

というのが今回までのお話でした。次回は内標準補正を併用することで RSD はどこまで改善できるか?をテーマに紹介します。ついに RSD は平均値で 0.02 % 台に到達します。

 

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