検量線の直線性の指標である相関係数って大事ですか? | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

検量線の直線性の指標である相関係数って大事ですか?

 ICP は既知濃度の標準液と未知濃度のサンプルの強度の比較によって定量を行います。そのため、基準となる標準液の強度が正しく測定できていることが、第一に大事になります。複数の濃度で標準液を準備し、その濃度範囲の中で、濃度と強度の直線関係が得られると、その検量線の範囲内でサンプルを適切に定量していくことができます。この直線関係が良好であることが適切に定量できる前提の1つであることは言うまでもありません。
 しかし、この直線性とは何を示しているものでしょうか?おそらく、多くの場合では、標準液を調製した技術者の技量を示しているのではないでしょうか。そして、おそらく、その誤差も含めて分析化学というものなのだろうと思います。

 1点検量線で測定しています、という行為は、その1点に自信があるのであれば、それでも構わないのかもしれません。測定点数が2点の検量線という場合は、異なる作業(濃度)で2回調製していますので、それぞれの調製ミスがないかを相互に確認できます。複数標準液であれば、それぞれの調製ミスがないか、分析操作上の誤差が徐々に収束された検量線を示してくることでしょう。私は作業を含む分析誤差の議論について専門ではありませんので深く語ることはできませんが、実作業をしている者として考えると、検量線の直線性って、作業ミスがないことを示しているに過ぎず、たとえミスがあったとしても、複数点を調製すれば帳消しにできる(はず)、と思っています。

 事例として、下記の検量線を2つ示します。相関係数が悪い右側のパターンであっても、測定点が多ければ、直線性の良いパターン(左図)と傾きはほぼ同等になります。検量線は Y=aX+b という直線近似ですから、結果として、傾きが同じならサンプル定量値もほぼ同等になります。

 

 ICPの測定再現性は優れています。RSD 0.1 %を下回ることもできます。しかし、溶液の調製はどうでしょうか。自信はありますよね。でもミスは起こります。パーキンエルマーが提供する優秀な自動希釈装置であっても動作は完璧であっても、偶発的ミスは起こり得ると思います。

 検量線の相関係数は管理のうえで大事です。これは言うまでもないことです。しかし、経験上、相関係数は測定点が狭い濃度範囲で多くあれば、それほど気にする必要はない、と個人的には思っています。ただ、その測定点である標準液の調製方法、手順が正しい必要があります。希釈作業の誤差を正しく評価できる調製手順とはどういうものでしょうか。標準液原液1個からワーキングソリューションを1個用意して、そこから多段階希釈するのが良いのか、ワーキングソリューションを複数用意して、そこから複数で多段階希釈すべきなのか。品質管理用の QC サンプルを準備し測定すれば良いのか。

 たまに検量線溶液調製手順や濃度範囲はどうすればいいですか?というご質問をいただくことがありますが、大変悩ましいところです。ICP 発光の直線範囲はとても広いですが、それに応えられるだけの溶液調製技術は私達にあるでしょうか?重量で調製すればいいのでしょうか。分析化学的に正しい調製方法、管理方法とは?

 検量線の直線性が良い/悪いから定量値は問題ない/ある、というのも色々誤解を含みます。もちろん、一つの指標として、直線性が良いほうがいいのは確かで揺るぎないですし、測定していても気持ちがいいですが、たとえばサンプルマトリックスが高い場合、なんらかの補正法を利用しなければ定量値は真値に近づきません。この場合、直線性は何の意味もないくらい定量値の正しさに対し無意味になってきます。

 ちなみに、装置の性能評価として、直線性が良い悪い、広い狭い、というのを項目に入れることもあるようですが、この評価も実は難しいです。導入量や測定条件にも依存しているからです。これはまた別の機会に。

 

 と、今回は問題提起をする感じでブログを更新してみました。相関係数ってとても大事ですが、今、見ている相関係数の数値って何の意味で管理していますか?

 

 

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