ICP質量分析装置で使用するコリジョン法とリアクション法はどう使い分けするの? | ICP-MSラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

ICP質量分析装置で使用するコリジョン法とリアクション法はどう使い分けするの?

ICP質量分析法におけるスペクトル干渉の除去法として現在、最も効果がある方法はリアクション法およびコリジョン法です。
では、このリアクション法とコリジョン法はどのように使い分けすればよいのでしょうか?

 

まず、リアクション法ですが、これは反応性の差を利用した方法です。
例えば、Ca+ に対して、Ar+ が干渉します。
そこでNH3 ガスを導入することで、Ar+ を除去することが可能です。
以下の反応式において(1)は反応しませんが、(2)は反応します。

Ca++NH3→Ca+NH3+・・・(1)
Ar++NH3→Ar+NH3+・・・(2)

これは、発熱、吸熱反応の違いによるものですが、イオン化ポテンシャルでも説明をすることが出来ます。
イオン化ポテンシャルは Ar > NH3 > Ca の順になっており、Ar が最もイオン化しにくく、Ca が最もイオン化しやすいことを示しています。
つまり、Ca はイオンの状態(Ca+)が安定であり、Ar は中性物質(Ar)の方が安定になることがわかります。
元素によりますが、反応性の差がはっきり分かれれば、感度をほとんど落とさずに、スペクトル干渉を除去することが出来ます。
また、生成した NH3+ が他のイオンと反応して、副生成物として測定対象元素に干渉してしまうことがあります。
そこで、ガスを流すセルの部分に質量選択性のある四重極マスフィルターを用いることで、反応副生成物の元のイオンを除去することが出来ます。
このようなリアクションセルのことを特にダイナミックリアクションセル(DRC)と言います。

 

一方、コリジョン法は衝突確率の差を利用した方法です。
例えば、Fe+ に対して、ArO+ が干渉します。これに、He を導入することによって衝突が起こります。
この時、Fe+ よりも ArO+ の方が大きいため衝突しやすいことがわかります。
衝突によって運動エネルギーを失った ArO+ はその次にある電気的な登り坂を超えることが出来ません。一方で、衝突していない Fe+ はこの登り坂を超えて検出器へ導かれます。
He を流すことで、スペクトル干渉が除去され、最も SB 比の高い条件を選択すればよいので、操作方法としては比較的わかりやすいかもしれません。
しかしながら、Fe+ と ArO+ の大きさにはそれほど大きな差がないため、必ず Fe+ にも衝突してしまいます。つまり、感度が必ず低下します。
また、同重体(Ca+ に対する Ar+ の干渉など)には効果がありません。

 

以上のようにリアクション法とコリジョン法をまとめると以下の通りです。

  リアクション法 コリジョン法
メリット 完璧な干渉除去の可能性が高い。
(超微量分析が可能)
現象が単純(わかりやすい)
デメリット
反応副生成物に注意が必要。
(DRCでは除去が可能)
同重体には効果なし
必ず感度が低下する。(低質量数ほど感度が低下する。)
一般的な
検出下限値
ppq(pg/L)レベル
ppt(ng/L)レベル

 

以上のように超微量分析を行うのであればリアクション法の方が有効な可能性が高いことがわかります。

ただし、リアクション法においても 100% のリアクションガスを使用することが超微量分析を行う上で必要な条件となります。
現在、100% のリアクションガスを導入することが出来るのは反応副生成物の生成を完全に抑えることが可能である DRC のみです。

 

来月11月8日から10日まで幕張メッセにて開催されるJASIS2021にパーキンエルマーのICP質量分析装置NexION 2000 およびマルチ四重極型ICP質量分析装置 NexION 5000 を展示いたします。
皆さんのお越しを心からお待ちしております。

 

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