コリジョンガスに用いるヘリウムガスの代替えは無いの? | ICP-MSラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

コリジョンガスに用いるヘリウムガスの代替えは無いの?

数年前、ヘリウム(He)ガスが不足し、安定した確保が困難な時期が続いておりました。最近になって、ある程度、安定に入手することが可能になってきましたが、いつ、また不安定になるかわかりません。
ICP-MS におけるコリジョンガスも主にHeガスが用いられています。
パーキンエルマージャパンでは、新たなアプリケーションの開発を目標に He ガス以外のガスを用いたコリジョン法の検討を進めてきました。
産業技術総合研究所、関西学院大学と共同で検討した結果、ネオン(Ne)ガスがHeガスと同等の結果を得ることが出来ましたので、紹介します。
表1に、河川水標準試料を測定した結果を示します。

表1.河川水標準試料の測定結果 *Information
元素 NMIJ CRM 7202-c
Result
Certified value (k = 2)
He mode
Ne mode
µg/kg
µg/kg
µg/kg
B 44.0 ± 1.6
43.4 ± 0.8
45.5 ± 0.5
​Al
21.8 ± 0.4
22.4 ± 0.3
21.4 ± 0.3
Cr 5.16 ± 0.10
5.15 ± 0.04
5.10 ± 0.10
Mn 5.04 ± 0.13
5.05 ± 0.05
4.97 ± 0.10
Fe 27.1 ± 0.4
27.6 ± 0.2
27.4 ± 0.4
Ni 1.06 ± 0.02
1.06 ± 0.01
1.07 ± 0.01
Cu 10.1 ± 0.2
10.2 ± 0.05
9.86 ± 0.07
Zn 10.6 ± 0.2
10.9 ± 0.2
10.4 ± 0.3
As
1.17 ± 0.04
1.18 ± 0.01
1.20 ± 0.02
Se 1.03 ± 0.05
1.01 ± 0.06
1.03 ± 0.08
Cd 1.01 ± 0.02
1.04 ± 0.02
0.98 ± 0.03
Sb 0.0095 ± 0.0007
0.0088 ± 0.0005
0.0099 ± 0.0010
Pb 1.018 ± 0.019
1.025 ± 0.004
1.020 ± 0.016
U*
0.0078
0.0082 ± 0.0004
0.0078 ± 0.0004

 

表 1 に示すように He、Ne どちらのガスもコリジョンガスとして精度の高い測定が可能であることがわかります。

次にこの測定を行った際の検出下限値を表 2 に示します。

表2.各測定方法による検出下限値
元素 検出下限値(µg/kg)
He mode *
Ne mode **
11B 0.008 0.003
27Al 0.006 0.010
52Cr 0.006 0.004
55Mn 0.001 0.001
56Fe 0.03 0.03 ***
60Ni 0.003 0.004
63Cu 0.006 0.007
66Zn 0.009 0.004
75As 0.002 0.004
82Se 0.04 0.03
111Cd 0.003 0.003
121Sb 0.0002 0.0004
208Pb 0.0001 0.0001
238U 0.00004 0.00009

*:He 4mL/min
**:Ne 0.7mL/min
***:Ne 2mL/min

 

以上のように Ne ガスを用いた測定においても He ガスと同等の検出下限値を得ることが出来ることがわかります。
また、Ne ガスは He ガスよりも少量で効果があることもわかります。

この内容は 2019年9月に開催された日本分析化学会第68年会にて発表したものです。

 

参考文献

日本分析化学会第68年会要旨集
J. Anal. At. Spectrom., 2020, 35, 2142–2147

 

 

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