前回までは、単一標準液と混合標準液の使い分け、問題の有無の確認方法などについてお話してきました。
今回は実際のサンプルを測定することを考えてみましょう。
ICP-MSはダイナミックレンジ(検量線の直線範囲)が広いことが知られています。
つまり、ppq(pg/L) から ppm(mg/L) までを同時に測定することが出来るのです。
また、濃度差のある元素を同時に測定することも出来ます。
例えば、食品試料の場合には ppt~ppb レベルの As や Cd とppmレベルの Na や Ca を同時に測定することが出来ます。
では、この場合、検量線用標準液はどのように調製したら良いのでしょうか?
例えば Cd は0.05~10 ppbまで、Na は100~20000 ppbまでの場合、標準液1は Cd 0.05 ppb + Na 100 ppb、標準2は Cd 0.1 ppb + Na 200 ppb・・・というように調製しても良いのでしょうか?
出来れば、微量成分と高濃度成分は混合せず、別々に調製することをお勧めします。(標準液1~5は微量成分、標準液6~10は高濃度成分というように)
これには、各標準液に含まれる不純物の問題があります。
同じ濃度レベルであれば問題ないですが、濃度差がある場合、更に元素数が多い場合にはそれぞれの不純物が混合され、実際の濃度に影響を与える可能性があるからです。
また、高濃度成分のみで検量線を作成することで、微量成分に対する影響を確認することも出来ます。
例えば、ppm の Ca と ppb の Fe を混合してしまうとわかりませんが、Fe を含まない Ca の標準液であれば、56Fe に対する 40Ca16O の影響を確認することが出来ます。
(勿論、影響があった場合には問題のない質量数の選択やコリジョン、リアクションセルなどによる除去を検討する必要があります。)
以上、計3 回標準液についてお話してきましたが、標準液での失敗はその後、どんなに頑張っても、どんなに良い装置を使用しても測定は出来ません。
最も重要な作業の1つなのです。
そのため、時間をかけてお話しさせていただきました。
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