JIS K 7123の比熱測定って何に気を付けるの? | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

JIS K 7123の比熱測定って何に気を付けるの?

さぼり癖を卒業した誕生月10月の熱分析屋さんのつぶやき筆者です。熱分析って白金(Pt)だったり、ロジウム(Rh)だったり、サファイアだったり、貴金属の類を頻繁に扱いますよね。少しもったいない様な気もしますが科学に“もったいない”は禁句です(と思ってます)。ちなみに10月はトルマリンとオパールが誕生石、11月はトパーズとシトリンらしいです。宝石って熱分析というか科学してしまうと、とても悲しくなるので、鉱物とは別物で。

今回はその宝石ではない鉱物のサファイアを使う比熱測定の話です。

比熱容量測定は JIS K 7123やJIS R 1672などに記載があるのですが、実際に測定してもどのあたりに気を付けるかわからない、といった問合せを受けます。
比熱容量測定は熱流束DSCと入力補償DSCで気をつける部分が違うので、比熱測定方法を誰かに聞くときは“熱流束DSC(入力補償DSC)を使う場合の比熱容量測定”って聞いてみてください。

 

さて、まず熱流束DSCと入力補償DSC共通の事項から
1. 温度校正
2. 天びんの校正(結構忘れがちですね,天びん...)
3. 容器の洗浄(汚れがあったら大変...)
です。
実際の測定では
1. リファレンスは空パン
2. 空パン測定(容器を変える場合、容器と蓋の質量秤量)
3. サファイア測定(容器を変える場合、容器と蓋の質量秤量)
4. サンプル測定(容器を変える場合、容器と蓋の質量秤量)
容器は2の空パンから4のサンプル測定まで同じ容器を使うのが一番です。

 

では今回はまず、熱流束DSCで。

① 最初に
測定で容器を変える場合、容器と蓋の質量の合計が±0.1 %以内になる様にします。なぜ0.1 %か... 熱流束DSCは熱容量で温度勾配が変わる装置なので、容器の熱容量が温度勾配に影響しないという、あくまで個人的主観と経験的からこれくらいにしています。容器と蓋の質量合計が26 mgなら±26 µg (0.026 mg)なので簡単に調整できますし。

ただ、最低でも空パン、サファイア、試料用の3個必要なので、最低2回の調製が必要です...


写真)容器秤量風景
 
写真)容器秤量風景

 

② 続いて
サンプルとリファレンスの空パンを準備して熱が逃げない様にクリンプします。リファレンス容器の質量はあまり気にしなくて大丈夫です。このとき、もっとも質量の小さい容器をブランクにするといいです。空パンよりサファイア測定も試料測定も熱容量が大きなものを測定しますから補正しやすいです。

 

③ 次に
等温→昇温→等温のプログラムを組みます。
たとえば、25˚C、3min保持(ⅰ)→10˚C/min昇温→90˚C、3min保持(ⅱ)
など、昇温範囲が最大でも100˚Cくらいまでの範囲までにしておきます。そして、忘れずにブランク測定開始...
25˚Cスタートのこの条件だと、50˚Cくらいからしか比熱容量が正確にでませんので、要注意です。
大体10˚C/minの昇温でスタート温度から+15~20˚C高い温度(図1のⅲ)から、50˚C/minだと、スタート温度+30~35˚Cくらいから比熱解析できると考えていいと思います。
等温はプログラム(ⅱ)の等温でDSC曲線が安定する時間を指定します。ただし、ブランクで安定しても、サンプルで安定しないなんてことも多々あるので、注意です。


図1)正常に測定できたDSCの結果。ブランク(青)、サファイア(緑)、温度(赤)

図2のvでブランクの場合は安定しないものの、ほぼベースラインに戻りますが、サファイアは戻る途中です。こんな場合は等温を長くします。


図2)等温の安定が不十分なDSCの結果。ブランク(青)、サファイア(緑)、温度(赤)

 

ここから先が問題... サンプルとリファレンスの調整です。

④ まずは比熱容量測定の容器とは別の容器でサンプルを測定してしまいましょう。
比熱容量測定の場合,試料量は少し多めで。
目安は等温ベースラインから昇温ベースラインシフトが大体5~10mWになる様な試料量にします。(図3のⅵ)


図3)20 mgの高分子の結果

といってもなかなか難しいので、筆者の場合、
10~15mg(有機物,高分子)、15~20mg(セラミック)、20~30mg(金属)からスタートして調整しています。比熱容量測定用の容器を使ってしまうと秤量の時間が無駄になるので、秤量していない容器に試料を入れて測定してみちゃいます。
Time is money. ですから...
テスト測定も③のブランクと同じプログラムです。

 

長いと読むのが大変、といった感想もいただきました。そんな言い訳をしつつ、今回はここまでで。次回はリファレンスの量と解析について@解決編です。

では次回の “JIS K 7123の比熱測定って何に気を付けるの?熱流束編その2” でお会いしましょう。

 

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