ラジアル観測高さの最適位置とは?~発光強度の違いから考察してみた~ | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

ラジアル観測高さの最適位置とは?~発光強度の違いから考察してみた~

 ICP-OESではプラズマからの発光現象を、軸方向(アキシャル測光)側面方向(ラジアル測光)から集光することができます。これはメソッドに指定するだけでどちらも簡単に取得することができます。アキシャル測光は高感度分析に強くイオン化干渉が受けやすい、ラジアル測光は高濃度分析にも利用できイオン化干渉を受けにくい、と言われています。イオン化干渉を受けるサンプルはラジアル測光がいいですよ、とご説明することが多いです。ラジアル測光は、もっとも分析に適した観測位置からの光のみを見ているからこそ得られる効果です。しかし、ここで問題となるのは本当に最適なラジアル観測位置を利用していますか?というところです。

 下図は、ネブライザーガス流量を0.55 L/minから0.85 L/minまで変化させたときの、ラジアル観測高さの強度の違いを示しています。ネブライザーガス流量が異なると、最大発光強度が得られる観測高さが変わっていることが見て取れます。実に1 cmも変化していることが分かります。これは、プラズマへのサンプル霧がどれくらいの線速度で入ってくるかで、最適な観測高さが変わっていることを示しています(正確には、最大強度を得るところが最適高さではありませんが、それについては別途)。

 つまり、今日利用するプラズマ条件(ガス流量だけではなく、ネブライザーの種類、チャンバーも含め)で観測位置を最適化することが重要である、と考えられるのです。もし最適化しないと、本来の強みであるラジアル測光のロバストさが十分に発揮できていない可能性があるのです。特に有機溶媒直接測定などの場合はより顕著になると思います。最適化しなければ、たとえば、同じ検量線法で分析をしていても日間でイオン化干渉の受け方に違いが出る(今日はイオン化干渉を5%減感しか受けていなかったけど、明日は10%減感してしまう)、そんなこともあるやもしれません。ネブライザーの詰まりでも変化は考えられます。

 パーキンエルマーのICP-OESには自動で観測位置を最適化する機能が備わっていますので、2分ほど調整に時間がかかってしまいますが、ぜひ実施していただくことをお勧めします(最適化しなくても分析はできます)。もし、観測位置を最適化できないシステムをご利用中の方は、本来のロバストな観測位置を利用していない可能性もあることを知ったうえで、分析を行いましょう。対策はあります。

 このあたりは、発光強度だけの議論ではなく、励起温度などを調べることによってもプラズマには温度分布があることを理解できます。それはまた次回。今回は、本来のロバストな分析手法としてのラジアル測光とは何か?、ということを考えてみました。

 

 

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