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より高感度に測定するためのノウハウ1~超音波ネブライザー編~

ICPを使ってより低濃度まで高感度に測定したい。それにはいくつか方法があります。

前処理による濃縮には固相抽出法が最近再注目されていますが、今回は超音波ネブライザーについて記載します(固相抽出法や水素化物発生法は次回以降に書きたいと思います)。

  超音波ネブライザーは、同軸ネブライザーとは異なり、溶液を振動子に連続的に接触させ、霧を発生させることを利用します。その後、微細な霧となったサンプルをキャリヤーガスで移動させながら加熱(120~140 ℃前後)と冷却(3~5 ℃前後)を行い、脱溶媒を行う高感度導入システムです。一般的に3 倍から10 倍の感度向上が見込めます。下記に発光スペクトルの強度比較を載せます。超音波ネブライザーと同様な機構でありながら、同軸ネブライザーを利用できるAPEX(えーぺっくす)という高感度化の試料導入装置もあります。これもとても有効なツールだと思います。

  しかしそれではなぜいつも使わないのでしょうか。それは使いにくいデメリットの側面を持っているためです。大きな問題は、汚れに弱い(メモリーが落ちにくい、洗いにくい)ことと、マトリックスも濃縮導入される(=イオン化干渉増大)という2つです。汚れてメモリーが残ってしまうのは、洗えば済む話です(共同研究先の学生さんは手慣れたもので私も教わりました)。マトリックスが高濃度に導入されてしまうことの問題は、せっかく低濃度の元素を測定したいのに、高塩のせいで大きく減感したり精度が劣ったりしてしまう、という目的と相反する事象が起こってきます。これを払拭できれば、とても良いツールです。たとえば、固相抽出でマトリックス分離かつ目的対象元素を濃縮して、さらに超音波ネブライザーで測定すると、ICPの性能を超えたような感度で測定できるに違いありません。すべての装置に言えることですが、装置性能だけに頼らず、その性能を生かすように使うのが、私達分析化学者のお仕事かなと思います。

 

 

 

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