更新日: 2025/11/19
ICP質量分析法(ICP-MS)は無機分析の中でも最も感度が高い方法の1つと言われています。
そのため、半導体や環境、材料、食品など様々な分野で使用されています。
そこで今回はICP-MSの感度に関するお話をしたいと思います。
では、この感度を更に高くする方法はあるのでしょうか?
今回と次回でいくつかの感度上昇の方法をご紹介したいと思いますが、今回はそのうちの3つをご紹介します。
- 前処理方法の検討(計算上の感度の上昇)
固体試料の場合、サンプルの前処理方法によって計算上の感度が変わります。
例えば、サンプル1gを硝酸などの酸によって分解後、50mLにメスアップする方法と、同じくサンプル1gを分解後、100mLにメスアップする方法では固体換算したときの計算上の感度は2倍の差があります。
もちろん、50mLにメスアップした方が、高くなります。
更にサンプルを酸で分解後、加熱処理によって乾固した後に10mLの希硝酸などで回収することで、更に5倍感度が高くなります。(溶液サンプルも同様です。)
例えば、シリコンウェハ表面の分析を行う場合、シリコンウェハのウェハサイズが大きく、回収液量が少ないほど、計算上、高い感度で測定することができます。第17回を参照ください。
ただし、測定対象元素の濃度が高くなるのと同時にマトリックスの濃度も高くなるので、高マトリックス成分を含むサンプルの場合にはその影響を考慮する必要があります。第5回を参照ください。
必要に応じて、目的対象元素のみを選択的に濃縮できるような前処理方法があれば、手間はかかりますが、とてもよい方法だと思います。
- 脱溶媒導入系システム
脱溶媒導入系システムを使用することで感度を高くすることが可能です。
これは標準の導入系の場合、ネブライザーから噴霧されたサンプルのうち、スプレーチャンバーを通過し、プラズマへ導入される量は数%程度と言われていますが、脱溶媒導入システムを用いることで、サンプルがガス化され、導入効率が高くなるため、感度も高くなります。
これも同じく、高マトリックス成分を含むサンプルの場合、影響を考慮する必要があります。
- DRC(ダイナミックリアクションセル)
元素によってはDRC(ダイナミックリアクションセル)にNH3などのガスを流すことによって感度が上がることがあります。
例えば、InやPbにはスペクトル干渉があることはほとんどないため、標準モード(セルガスを流さない)で測定することが多いですが、DRCモードを用いることで感度が高くなります。
まとめると以下のようになります。
次回はその他の項目についてご紹介します。
お楽しみに。