更新日: 2018/6/26
前回は、多元素の標準液を調製する際、単一の標準液を混合した際に生じる問題点についてお話ししました。 では、今回は混合の標準液を用いた場合の問題点をお話ししたいと思います。
混合標準液にはすべての元素が一定のもの(例えば10 ppm)や環境基準に合わせて、濃度の異なるものなどが市販されています。 各元素の濃度やその他の元素濃度が保証されたとても便利なものです。 しかし、これは濃度を保証するもので、ICP-MS での測定に問題ないことを保証するものではありません。
ICP-MSの 問題点の 1つとしてスペクトル干渉があります。 例えば、Ni の最も存在比の高い質量数は 58 です。 しかし、58にはFeもあるのです。 これを同重体と呼びます。 同様に 156Gd+ には 140Ce16O+ という Ce の酸化物が発生します。 また、69Ga+ には 138Ba++ というBaの2 価イオンが発生します。 これらはすべてスペクトル干渉と呼ばれるものです。 つまり、Ga と Ba の混合液を用いてしまうと、Ga+ に対して Ba++ がどれだけ影響を与えているかが、わからなくなってしまいます。 このような場合、Ba を含まない Ga 溶液と比較することで、確認することが出来ます。 単一標準液の方が良い、混合標準液の方が良いということではなく、状況に応じて、使い分けをし、必要に応じて、単一、混合の比較をすることが重要だと思います。