第29回 オートサンプラーって便利だけど、本当にまかせて大丈夫?(QCプログラムの活用法)

更新日: 2025/3/19

ICP質量分析法において複数のサンプルを測定する場合、もちろん手差しで1つ1つ測定する方法もあるけど、やっぱりオートサンプラーって便利ですよね!
自動で次から次へとサンプルを移動し、気づいたら終わっている!
でも、やり方を間違えるとあまりよくない結果が出てしまいます。
ここでは、オートサンプラーを上手に使用するコツをお話しします。


PerkinElmer社製オートサンプラーS23

 

例えば、検量線を作成してサンプル50検体をオートサンプラーで自動分析しました。
その結果が以下の表です。

(μg/L)
  サンプル1 サンプル2 サンプル3 ・・・ サンプル48 サンプル49 サンプル50
B 8.4 17 5.5   25.5 9.5 38.1
Cu 1.5 0.8 2.3   1.5 1.1 0.81
Zn 1.1 0.9 2.1   2.7 0.9 0.7
As 3.6 2.8 2.5   2.2 1.9 1.1
Pb 0.21 0.37 0.29   0.28 0.31 0.22

 

この50検体の終了後、1μg/Lの標準液とブランク溶液を測定した結果が、以下の通りです。

(μg/L)
  1μg/L標準液 ブランク溶液
B 1.0 0.3
Cu 0.72 < 0.1
Zn 0.73 < 0.1
As 0.71 < 0.1
Pb 0.77 < 0.1

 

1 μg/L の標準液を測定した結果、B 以外は 30 %ほど低い値となりました。
次にブランクを測定したところ、B 以外低い値となりました。
つまり、B はメモリー効果により高い値となっていたということになります。
全体を通して、50 検体を測定したのちに感度が約 30 %低下していることがわかりました。
このような場合、いつ感度が低下したのかわかりません。

そこで、このような時に備えて QC プログラムを使用することをお勧めします。
QC プログラムはオートサンプラーで測定中、正しく測定できているかを確認してくれるものです。
例えば、50 検体測定する場合、5 検体ごとに標準液やブランク溶液を測定します。
ここで感度変化やメモリー効果がないことを確認し、次の 5 検体に進む。といったように定期的に濃度のわかっているものを測定し、チェックをしながら測定することが出来ます。
同じように QC プログラムでは以下のようなことが出来ます。

オートサンプラーは多検体を測定するにはとても便利な製品です。
しかし、良くも悪くも勝手に進みますので、QC プログラムを有効に使って精確な測定が出来るようにしましょう!

今回は ICP-OES と同じテーマについて執筆してみました。
ぜひ、ICP-OES のブログも参考にしていただければ幸いです。