更新日: 2025/8/7
GCやGC/MSのデータ処理は、その解析方法によってその結果の信頼性が大きく左右されます。今回のブログでは、データ処置の実践的なコツ第2弾として、リテンションタイムの変動対策についてご紹介したいと思います。
リテンションタイムのばらつき対策
リテンションタイムのばらつきは、GC や GC/MS 分析でしばしばみられる現象で、正確な定性・定量の妨げになります。ばらつきは、主に装置の物理的・環境的要因や分析条件の不一致から生じます。
よくある原因とその対策について、代表的なものをいくつかご紹介いたします。
原因 |
対策 |
1. カラム温度が不安定 |
- オーブンの温度制御機能の精度を確認し、±0.5℃以内を目安に安定化
- 装置起動直後は、温度が不安定なため、30分以上のプレヒート時間を確保
- 急激な室温変化を避け、オーブン周辺の気流(エアコン吹き出し等)に注意
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2. キャリアガス流量の変動 |
- マスフローコントローラーの校正を定期的に実施
- ガスボンベ使用時に、2段階レギュレーターを使用
- ガス配管のリークやクランプ部の緩みの有無を確認
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3. 注入条件のばらつき |
- オートインジェクターの注入精度(注入量、注入速度)の校正を実施
- シリンジの状態(劣化・汚染)の影響を考慮し、定期的な交換を検討
- ライナー等のインレット部分の汚れ、残留物に注意
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4. カラムの状態変化 |
- 長期間使用されたカラムは、ドリフトが生じやすいため、保持時間確認用の標準混合液等で確認
- マトリクス由来の不揮発性分が原因で活性点が形成され、保持時間に影響する可能性に注意
- 必要に応じて、カラムの再コンディショニングを実施
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その他の対策 |
- RI(リテンションインデックス)標準物質(n-アルカンなど)を定期的に分析し、保持時間を補正
- 内部標準物質を添加することで、注入タイミングや保持時間の変動を補正
- 温度プログラムの安定化に加え、注入時間・注入量もメソッドで固定
- システム全体の稼働ログを定期的に見直し、リテンションタイム変動を可視化する
注意:変動が大きい場合は、装置のリークチェックやインジェクターのシール劣化も疑いましょう。
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パーキンエルマーの GC 2400 は、忘れがちなライナー交換やセプタム交換、さまざまなメンテナンス時期について、設定された回数や時間を経過すると、自動的に知らせてくれる機能があります(図1参照)。この機能を使用しつつ、装置がきれいな状態を保った分析を心掛けたいですね。
図1. GC 2400のメンテナンス管理画面(左)とそのメッセージ例(右)
JASIS 2025のお知らせ
今年も9月3日から5日の3日間、JASIS 2025が開催されます。パーキンエルマーのクロマトグラフィーのブースでは、ヘッドスペースサンプラーHS 2400 とGCMS 2400 に加え、「Innovation of the Year for a product or service」を受賞した新製品・QSight 500 も展示いたします。
また、出展社セミナー(旧新技術説明会)では 9月5日(金)13:15~13:45 に TKP会場No.2 にて、「次世代LC-MS/MS<QSight>で切り拓く!PFAS分析の最前線」をご紹介いたします。パーキンエルマーのスタッフ一同、皆様のご来場をお待ちしております。