第34回 GC, GC/MSにおけるデータ処理を上手に行うためのコツ➁

更新日: 2025/8/7

 GCやGC/MSのデータ処理は、その解析方法によってその結果の信頼性が大きく左右されます。今回のブログでは、データ処置の実践的なコツ第2弾として、リテンションタイムの変動対策についてご紹介したいと思います。

リテンションタイムのばらつき対策

 リテンションタイムのばらつきは、GC や GC/MS 分析でしばしばみられる現象で、正確な定性・定量の妨げになります。ばらつきは、主に装置の物理的・環境的要因や分析条件の不一致から生じます。
 よくある原因とその対策について、代表的なものをいくつかご紹介いたします。

原因 対策
1. カラム温度が不安定
  • オーブンの温度制御機能の精度を確認し、±0.5℃以内を目安に安定化
  • 装置起動直後は、温度が不安定なため、30分以上のプレヒート時間を確保
  • 急激な室温変化を避け、オーブン周辺の気流(エアコン吹き出し等)に注意
2. キャリアガス流量の変動
  • マスフローコントローラーの校正を定期的に実施
  • ガスボンベ使用時に、2段階レギュレーターを使用
  • ガス配管のリークやクランプ部の緩みの有無を確認
3. 注入条件のばらつき
  • オートインジェクターの注入精度(注入量、注入速度)の校正を実施
  • シリンジの状態(劣化・汚染)の影響を考慮し、定期的な交換を検討
  • ライナー等のインレット部分の汚れ、残留物に注意
4. カラムの状態変化
  • 長期間使用されたカラムは、ドリフトが生じやすいため、保持時間確認用の標準混合液等で確認
  • マトリクス由来の不揮発性分が原因で活性点が形成され、保持時間に影響する可能性に注意
  • 必要に応じて、カラムの再コンディショニングを実施
その他の対策
  • RI(リテンションインデックス)標準物質(n-アルカンなど)を定期的に分析し、保持時間を補正
  • 内部標準物質を添加することで、注入タイミングや保持時間の変動を補正
  • 温度プログラムの安定化に加え、注入時間・注入量もメソッドで固定
  • システム全体の稼働ログを定期的に見直し、リテンションタイム変動を可視化する
注意:変動が大きい場合は、装置のリークチェックやインジェクターのシール劣化も疑いましょう。

 

パーキンエルマーの GC 2400 は、忘れがちなライナー交換やセプタム交換、さまざまなメンテナンス時期について、設定された回数や時間を経過すると、自動的に知らせてくれる機能があります(図1参照)。この機能を使用しつつ、装置がきれいな状態を保った分析を心掛けたいですね。

図1. GC 2400のメンテナンス管理画面(左)とそのメッセージ例(右)

JASIS 2025のお知らせ

 今年も9月3日から5日の3日間、JASIS 2025が開催されます。パーキンエルマーのクロマトグラフィーのブースでは、ヘッドスペースサンプラーHS 2400 とGCMS 2400 に加え、「Innovation of the Year for a product or service」を受賞した新製品・QSight 500 も展示いたします。

 また、出展社セミナー(旧新技術説明会)では 9月5日(金)13:15~13:45 に TKP会場No.2 にて、「次世代LC-MS/MS<QSight>で切り拓く!PFAS分析の最前線」をご紹介いたします。パーキンエルマーのスタッフ一同、皆様のご来場をお待ちしております。