第32回 GC分析のメソッド開発のまとめ

更新日: 2025/4/14

GC 分析の精度や効率は、適切なカラムの選択とメソッド開発に大きく左右されます。今までのブログカラム選択の方法や、メソッド作成についてのコツなどをご紹介してきましたが、今回のブログでは、メソッド開発についてのまとめをご紹介したいと思います。

GCカラムの選択はどうするの?
(詳細は、第2回第3回のブログも参照しましょう)

 GC カラムには、たくさんの種類がありますが、以下 4つのポイントを押さえて選択しましょう。

① 固定相の選択

GCカラムの固定相は、分析対象化合物の分離に影響を与えます。固定相の極性が化合物の極性と近いほど保持時間が長くなります。

表1. GCカラムの種類と適用例および特徴
固定相 適用例 特徴
無極性
(100%ジメチルポリシロキサン)
炭化水素類、香料 保持力が低く、分離が速い
中極性
(フェニル/シアノ/オキシ/メチル置換)
医薬品、香料、農薬 幅広い化合物を適切に分離
高極性
(ポリエチレングリコール系)
アルコール、脂肪酸、エステル 極性化合物を強く保持

 

② カラム長の選択

カラムの長さは分離能に影響しますが、長いほど分析時間は長くなります。

  • 短いカラム(15 m 以下):高スループットが求められる場合に使用(例:スクリーニング分析など)
  • 標準的な長さ(30 m):多くの分析アプリケーションに対応
  • 長いカラム(50 m 以上):高分解能が必要な分析に使用(例:複数成分の分離など)

 

③ カラム内径の選択

カラムの内径は、分析感度や分離能に影響します。

  • 狭い内径(0.18 mm 〜 0.25 mm): 高感度が必要な微量成分の分析
  • 標準的な内径(0.32 mm): 多くの分析で使用されるバランス型
  • 広い内径(0.53 mm): 高スループット分析や、少量の試料導入が必要な場合

 

④ 膜厚の選択

カラムの固定相膜厚は保持時間に影響します。

  • 薄い膜厚(0.1µm以下): 揮発性化合物に適し、シャープなピークを得やすい
  • 標準的な膜厚(0.25〜0.50µm): 一般的なGC分析に使用
  • 厚い膜厚(1.0µm以上): 高沸点化合物や熱不安定性化合物に使用

メソッド開発のポイントは?
第23回のブログも参照しましょう)

 メソッドを作成する時には、以下3つのポイントを押さえるようにしましょう。

①カラム(オーブン)温度プログラムの最適化

温度プログラムは分析時間と分離能に影響します。

  • 等温分析: 低分子量化合物の迅速分析
  • 昇温プログラム: 多成分混合物の分離に適し、一般的に使用

 

②キャリアガスの選択と流量

キャリアガス(ヘリウム、窒素、水素)は分離能と分析速度に影響します。

  • ヘリウム(He): 一般的に使用、分離能が安定
  • 水素(H2): 分離が速いが、安全性に注意が必要
  • 窒素(N2): 安価だが、分離能が低下することがある

適切な流量設定も重要で、一般的には 1.0 – 1.5 mL/min が推奨されます。

 

③注入モードとサンプル導入(詳細は、第27回のブログも参照しましょう)

試料の性質に応じて、最適な注入モードを選択しましょう。

表2. 注入モードと適用例および特徴
注入モード 適用例 特徴
スプリット注入 高濃度試料 再現性が高く、汚染を防ぐことが可能
スプリットレス注入 低濃度試料 感度が高いが、熱分解・吸着に注意

 

具体的なメソッド開発の流れ

 では、具体的なメソッド開発の流れを復習しましょう。

  1. 試料の化学的特性を確認
    揮発性の有無、極性、分解の可能性などを考慮
  2. 適切なカラムを選択
    固定相、カラム長、内径、膜厚を決定
  3. キャリアガスと流量を最適化
    分析時間と分離能のバランスを調整
  4. 温度プログラムを設定
    低温スタートまたは高温保持のバランスを検討
  5. 試料導入法を選定
    スプリット/スプリットレスを適用
  6. ピーク確認とメソッド調整
    実際のクロマトグラムを確認し、条件を微調整

 

 GC カラムの選択とメソッド開発には、分析対象化合物の特性を理解し、適切なカラムパラメータを設定することが重要です。特に、固定相の選定・温度プログラムの最適化・キャリアガスの調整が分離能や分析速度を大きく左右します。
適切なカラムとメソッドを選択することで、高精度かつ再現性の高い分析が可能になります。
メソッド開発の最適化を通じて、分析業務の効率化とデータ品質の向上を実現しましょう。

 

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