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ICP発光の細かい使い方講座3 ~キャリヤーガス流量の選択~

 ICPの感度を向上させたい、再現性を上げたい、検出下限値・定量下限値を改善させたい。ICPの感度っていつも一緒、どちらかといえば悪くなることはあるけど良くなることはない。そんな印象を持っていませんか?実はそれは違います。測定条件だけでかなり変わります。目的にあった測定条件を設定できているでしょうか。装置のデフォルト値しか使ったことがない方は是非まず試していただきたいのが “キャリヤーガス流量(ネブライザーガス)”の変更です。

キャリヤーガス流量はいくつかの要因で最適値があります。代表的なのは、

  • ネブライザーの種類
  • インジェクター内径
  • 溶媒の種類

です。ネブライザーの種類やインジェクター内径(一体型トーチであればトーチ種類)によって最適流量も変わってきますし、水溶液なのか、有機溶媒なのか、溶媒の種類によっても最適流量は異なります。

 また、これに付随してキャリヤーガスを変更することで、ラジアル測光(プラズマ側面からの観測)を採用している場合は、観測高さが変更されますので、観測高さの調整も必要(第10回:ラジアル観測高さの最適位置とは?~発光強度の違いから考察してみた~(2016/12/19))になります。アキシャル測光位置にはほぼ変化はありません。

 

 今回紹介するデータは、測定条件のうちキャリヤーガス流量だけ変化した場合、発光強度と検出下限値はどのように変化するか、というものです。今回のデータではキャリヤーガス流量が 0.5 L/min 付近で発光強度が最大値を示し、検出下限値は 0.5~0.6 L/min で最も低い値と示しています。もちろん元素・波長および発光線の種類(イオン線、中性原子線)によってもこの挙動は異なります。最適な流量設定が感度に対し重要であることがご確認いただけると思います。ぜひ試してみてください。


キャリヤーガス流量変化に伴う発光強度および検出下限値の変化

 

下記の記事も合わせて読んでいただけると、よりよい使い方ができると思います。

第3回:プラズマガス流量は少ない方がいい!(2016/5/25) 

第4回:ICP-OES検出下限の計算方法(2016/6/15)

第5回:有機溶媒の直接導入(2016/7/1)

 

 今回は「ICP発光の細かい使い方講座~分解能の選択~」を予定しておりましたが、ご要望の多かった感度についての最適化内容を先に紹介させていただきました。

 

 

 

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