ガスクロマトグラフィーを用いた定性分析のコツ-その2- | クロマト分析 日々のQ&A - PerkinElmer Japan

ガスクロマトグラフィーを用いた定性分析のコツ-その2-

 前回のラボブログでは、定性分析のコツについてお話ししました。GC/MSを用いた測定では、NISTなどのライブラリを使用した検索が使用可能ですが、「きれいな」マススペクトルである必要があります。
 今回のブログでは、「きれいな」マススペクトルを取得するための方法と、得られた検索結果からどのような情報が得られるかご紹介します。

 

「きれいな」マススペクトルって何?

 GC/MSを用いた分析では、NISTなどのライブラリを使用して未知成分を定性できるのが大きな利点の一つです。しかし、得られたデータが常に「きれいな」データであるとは限りません。ここでいう「きれいな」スペクトルというのは、「単一成分の」マススペクトル、という意味です。
 ある試料をGC/MSで測定したクロマトグラムの例を図1左下に示します。ここで、5.29分のピークに注目してみましょう。このピークは、右上に示すようなマススペクトルが得られました。


図1 GC/MSを用いて分析したクロマトグラム(左下)と5.29分のマススペクトル(右上)

 

 5.29分のマススペクトルでNIST検索した結果を図2に示します。


図2 5.29分のピークのNIST検索結果

 

 NISTの検索結果では、「アセトン」がヒットしています。この成分は、本当にアセトンなのでしょうか?得られた検索結果をよく観察してみてください。
 よく見ると、未知試料にはm/z=72の成分が検出されていますね。それに比べて、ライブラリに登録されているアセトンは検出されていません。ということは、m/z=72を含む成分が隠れているのでは?と考えることができます。
 そこで、未知試料のマススペクトルから、検索で得られたアセトンのマススペクトルを差し引きます。NISTでは、「Subtraction」という機能がありますので、こちらを使用して再度検索をします。図3は、Subtraction機能を使用して再建策を行ったNISTの検索結果です。すると、「ブタナール」がヒットしました。


図3 Subtraction機能を使用して再検索を行ったNIST検索結果

 

 確認のため、m/z=72(ブタナール由来)とm/z=58(アセトン由来)のマスクロマトグラムを見てみましょう。ほぼ同じ保持時間に溶出していることが分かりますね(図4)。


図4 m/z=72(上段)およびm/z=58(下段)のマスクロマトグラム

 

 このように、同じ保持時間で複数の化合物が重なって検出される現象はよくあります。そのため、得られたピークの成分を定性する際は、「本当にこの化合物で良いのか?」とよく確認した上で、定性作業を行って下さいね。

 

 次回は、定性分析のコツ-その3-として、NISTライブラリを有効に活用するためのワンポイントアドバイスをご紹介したいと思います。お楽しみに!!

 

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