ガスクロマトグラフィーを用いた定性分析のコツ | クロマト分析 日々のQ&A - PerkinElmer Japan

ガスクロマトグラフィーを用いた定性分析のコツ

 GC の検出器は、FID や TCD など、さまざまな検出器があります(詳しくは第5回ラボブログ「ガスクロマトグラフの検出器には何があって、特徴は何?」の回を見て下さいね)。その中でも MS 検出器は定性能力に優れています。もちろん、定量分析も可能です。
 今回のブログでは、ガスクロマトグラフィーを用いた定性分析を行う際のコツについて触れてみようと思います。

GC を用いた定性分析(MS 検出器以外の検出器を使用する場合)

 まず、MS 以外の検出器を用いて GC を用いて定性分析を行う場合は、下記の手順で行います。

  1. 標準試料(ターゲットとする成分)を用意し、測定します
  2. 未知試料を標準試料と同条件で測定します
  3. 標準試料と未知試料の結果を比較して、保持時間の情報からピークを同定します


図1 標準試料(アセトン、メタノール)と未知試料のクロマトグラム比較

 

 標準試料と未知試料を同条件で測定し、ターゲット成分の保持時間が一致すれば当該成分の同定完了、となるわけです。
 とは言っても、あらかじめ標準試料を特定するのが難しい場合もあると思います。そのような時は未知試料に何が含まれている可能性があるか、様々な情報を入手しターゲット成分を推察する必要が出てきます。「どのようなサンプルか?」「どこでサンプリングされたサンプルか?」など、サンプルの情報を多く収集して、そこから推定される成分を検討してみましょう。

 

GC/MSを用いた定性分析

 MS 検出器を使用すると保持時間の情報のみではなく、ターゲット成分のマススペクトル(質量情報)が得られます。GC/MS の測定モードについて、おさらいしておきましょう。GC/MS の測定モードには、3 つの測定モード(Scan 測定、SIM 測定、Scan-SIM 同時測定)があります(第6回のラボブログ「質量分析計(MS)って何?その原理と測定方法は?」)を見て下さいね)。
 定性分析で使用するモードは、「Scan 測定」です。Scan 測定は、任意の質量範囲をスキャンしてその範囲の全イオンをモニターするモードです。得られたマススペクトルから、構造情報と質量情報が得られるため、NIST などのライブラリ検索が可能です。

 

NIST のライブラリ検索ってどうすればよいの?

 NIST のライブラリ検索は、下記の手順で簡単に実行できます(ここでは、TurboMass ソフトウェアの場合を説明します)。

  1. 検索したいデータのピーク上で右クリックします。
  2. マススペクトルが表示された状態で、「F1キー」をクリックします。
  3. NIST が立ち上がり、検索結果が表示されます。
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図2 NIST の検索手順(TurboMass ソフトウェアの場合)

 

PerkinElmer のソフトウェアでは、「F1」がショートカットキーが指定されているため、別途 NIST ライブラリのソフトウェアを立ち上げる必要はありません。

 このように、先に説明した MS 以外の検出器で行った定性分析のように、標準試料を調製・測定し、その保持時間を確認しなくても化合物の推定が可能になります。もちろん、標準試料を測定したデータと併用することで同定結果の信頼性を高めることもできますよ。

 ライブラリは、NIST のほかにも、香料や農薬など様々な分野に特化したライブラリもオプションとしてご用意がありますので、興味がありましたら、弊社営業までお気軽にお問合せ下さい。

 

 GC/MS を用いて測定すると、得られたマススペクトルから定性分析が可能になりますが、マススペクトルが「きれいな」マススペクトルである必要があります。その結果、精度が高いライブラリ検索結果が得られるようになります。

 「きれいな」マススペクトルって?NIST の検索ってどうやるの?この話の続きは次回のブログで説明しようと思いますので、次回のブログをお楽しみに!

 

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