検量線法では対応できないサンプルに、内標準補正法を適用しよう(カドミウムや鉛などのイオン線の内標準元素を選ぶ) | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

検量線法では対応できないサンプルに、内標準補正法を適用しよう(カドミウムや鉛などのイオン線の内標準元素を選ぶ)

サンプルに含まれる共存元素濃度を気にしたことはありますか?例えば、海水のような塩分が多いサンプルを検量線法で直接定量したことはありますか?検量線法では妥当な結果が得られないサンプルに対して、役立つのは内標準補正法です。今回は、内標準元素としてイットリウム(Y)を利用した場合に、補正が難しい元素(イオン線)を紹介します。

前回は、Ca10,000 mg/Lマトリックス時に、イットリウム 371.029 nm (II) で ±5~6% の範囲で補正できる代表的な元素を紹介しました。今回は、そのイットリウム 371.029 nm と異なる挙動の元素(イオン線)をいくつか紹介します。前回同様に、Ca 濃度を段階的に変えた標準液(多元素混合標準液 1 mg/L)を測定し、各元素の相対強度を調査した結果を次の図に示します。

Ca 10,000 mg/L マトリックスではイットリウム 371.029 nm (II) は 65.9% に減感していますが、今回示したカドミウム Cd 214.440 nm (II) や、鉛 Pb 220.353 nm (II) とは減感の挙動に乖離が見られています。期待値の ±5% 程度の補正誤差に抑えるには、Y は適していないと考えられます。(ただし、定量誤差が許容範囲である場合や、マトリックス濃度が低い場合であれば Y でも補正して構いません。)

たびたび管理対象となるカドミウム (Cd) や鉛 (Pb) について、Y で補正している場合は、再度、妥当な結果が得られているか、添加回収試験などをすることによって確認することをお勧めしています。今回の検証データでは、ロジウム (Rh) 233.477nm (II) や、インジウム (In) 230.606 nm (II)、タリウム Tl 190.801 nm (II) などがイオン化干渉による減感挙動が似ている傾向が見られました。これらで内標準補正すると、補正誤差を抑えられる場合がありそうです。

これらの元素は周期表ではどの位置にあるかというと、次に示す青色で塗りました元素です。

 

もし Rh や In、Tl を内標準元素として利用する場合、これらの元素は発光強度が小さい傾向があるため、Y よりも高い濃度で添加するようにしてください。Y 1 mg/L を使っている場合は、Rh, In, Tl なら 10~100 mg/L 程度添加すると、十分安定した発光強度を得ることができます。内標準元素の添加濃度については、十分安定した発光強度が得られる濃度であれば、問題ありません。また、Rh 標準液には鉄 (Fe) がわずかに混入している場合があるようですので(要確認)、微量 Fe を測定する場合は、Rh 内標準は適さない場合もあります。

参考になればと思います。
次回は、他のイオン線や、中性原子線の元素の挙動を紹介予定です。

 

参考記事はこちら:

 

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