ラジアル測光の観測高さ位置が定量値に与える影響(イオン化干渉)について~どこから採光するかで定量値が変わる!?第2/2話~ | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer

ラジアル測光の観測高さ位置が定量値に与える影響(イオン化干渉)について~どこから採光するかで定量値が変わる!?第2/2話~

ラジアル測光(プラズマの側面からの採光)の最適な測光位置はどこにあるか調べてみました。発光強度が高い位置を最適位置とした場合、測定における定量精度への影響はあるのでしょうか?イオン化干渉を検証することで、最適位置とは何かを考えてみます。

ラジアル測光高さで発光強度が大きく変化していることを第43回で紹介しました。今回は発光強度が高いところを測りたいためだけで観測位置を調整しているわけではない、という意味を込めて、イオン化干渉の発生度合いの違いを紹介します。

前回はラジアルの最適な測光高さは15 ㎜ 位置あたりでその幅は3 ㎜ くらい許容範囲があることを紹介しました。

 

ではイオン化干渉の出方はどうなっているか調査した結果を示します。

ここに示したのは、ラジアル測光高さ 7 ㎜、14~17 ㎜(最大強度が得られる ±3 ㎜ 範囲)におけるイオン化干渉の出方をプロットしています。
1 ppm マンガン標準液に、塩化ナトリウム (NaCl) を 0、1、2、3、4、5 wt% になるように添加調製した溶液を測定したときの強度の変化を示しています。1 wt% NaCl マトリックスでは発光強度は 80% 程度に落ちており、NaCl 濃度が高くなるほど発光強度は減感していくことが分かります。測光高さ 14~17 ㎜ は 51% 程度まで減感していますが、7 ㎜ 位置では 34% 強度まで下がっています。この差は 17% もあります。もちろん元素・波長・発光線の種類によって減感割合は異なりますが、観測位置によってイオン化干渉の受ける度合いが変わってくることが確認できます。プラズマの測光位置を調整することは、感度の面においても、正しい定量値を得るためにおいても大事なポイントだという根拠を持って最適位置を設定できます。もちろん、いずれにしてもイオン化干渉対策は少なからず必要ではあります。

イオン化干渉の受けやすさは、プラズマ条件やサンプル導入量などにも依存しています。今回はデフォルト条件で測定しましたが、よりイオン化干渉を受けない測定条件を設定すると、50%も減感していた NaCl 濃度であっても、85%以上の感度を保つ条件で測定することもできます。1~2 wt% 程度の NaCl マトリックスであれば 95% 程度保てます。そのような耐マトリックス性のある設定についてはまた改めて紹介する機会を作りたいと思います。

今回は少し短い記事ですが、とても大事な情報でした。

 

参考記事はこちら:

 

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