Heガス不足対策!ICP質量分析法による水道水、河川水の測定にHeガスがなくても大丈夫! | ICP-MSラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

Heガス不足対策!
ICP質量分析法による水道水、河川水の測定にHeガスがなくても大丈夫!

ICP 質量分析法のおける最大の問題点はスペクトル干渉といわれています。
特に水道水や河川水中の金属成分を測定する際に発生するスペクトル干渉には He ガスを用いたコリジョン法がよく用いられます。
しかし、この数年、世界中でHeガスを入手することが困難となっており、早急な対応が必要となっています。
そこで、2019 年に PerkinElmer Japan は産業技術総合研究所、関西学院大学と共同でNeガスを用いたコリジョン方法について発表し、このブログでもご紹介しました。
第12回「コリジョンガスに用いるヘリウムガスの代替えは無いの?

 

今回はその他の代替ガスについてご紹介します。
ただし、なんのガス種でも、また、どんな装置でも利用することが出来るわけではありません。
例えば、反応性のあるガスの場合、スペクトル干渉と反応し、イオン化したセルガスが他の元素のイオンと反応して、測定対象元素に対して新たなスペクトル干渉となることがあります。
これを反応副生成物と呼びます。
そこで PerkinElmer 社製 ICP 質量分析装置 NexION シリーズではセル内部に質量分解能のある四重極マスフィルターを搭載することで、反応副生成物が生じる元の成分を除去することが可能です。
したがって、セル内部に質量分解能のある四重極マスフィルターを搭載することで、様々なガスを導入することが可能となります。
そこで、今回は河川水を様々なセルガスを用いて測定を行いました。
図1は河川水標準試料である NMIJ CRM7202-c の測定結果を認証値に対する回収率で示した結果です。
この図から Fe および Se 以外は標準モード(STD)でもある程度測定できることがわかります。


図1.河川水標準試料(NMIJ CRM 7202-c)の測定結果に対する回収率

 

そこで各条件における検出下限値を比較しました。
今回は He ガスの代替ガスがテーマですので、Heガスを用いた時の検出下限値を1とした時の各条件の値を図2に示します。


図2.He-KEDモードを1とした時の各条件の検出下限値の比較

 

以上の結果、He ガスを用いた方法と比較し、CH4 ガスや、Ne ガス、N2 ガス、Ar ガスなどを用いた方法は同等以上の定量性および検出下限値を得ることが出来ました。
したがって、今まで水道水や河川水を測定する際に用いていた He ガスの代替ガスとして、 CH4 ガス、Ne ガス、N2 ガス、Ar ガスなどを用いて測定することが可能となります。
今後、He ガスの入手がどのようになるかは予測が難しく、不透明な中、その他の様々なガスを導入し、同等以上の効果が得られることは有効と思われます。
これらの効果はセルに四重極マスフィルターが搭載された NexION シリーズを用いることで可能になります。

 

そんな NexION シリーズですが、9月6日から8日まで千葉県の幕張メッセにて開催される JASIS 2023 に出展いたします。
環境試料だけではなく、半導体や食品、医薬品、金属材料など様々なアプリケーションもご紹介できると思いますので、ぜひ、実物を見に遊びに来てください。

 

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