容器を間違えたら大変の話 | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

容器を間違えたら大変の話

気がつけば2022年も9月。しばらく更新せずに放置していた熱分析屋さんの筆者です。最近なぜか、「熱分析屋さんのつぶやきの筆者です」って自己紹介する前に紹介されることが多くなりました。このつぶやき、漫画みたいな書き方とも言われましたけど...一応、頑張って書いているんで、これからも漫画路線変更なしで許してください。


Pict. 壊れたセンサー部分

 

ずいぶん前になりますけど、容器が融解して DSC のセンサーを壊してしまったことがありました。DSC も TG/DTA もセンサー部分は金属製。容器選択を間違えるとセンサーと容器が合金を作ってしまってセンサーとして役に立たなくなっちゃいます。合金作りの経験者としては、TG/DTA のセンサー交換なら簡単なのに!なぜ DSC で!って、とっても凹む気分が手に取るようにわかります。

そんなわけで今回は装置を壊さないための容器の話。

 

熱分析の容器ってものすごくたくさんの種類があって、DSC だとアルミニウム製の容器、TG/DTA だとアルミニウム製以外にセラミック容器や白金容器も使いますよね。

熱分析全般に熱伝導のいい容器、質量の小さい容器がいいんですけど(本にも書いてあるし...)、サンプルによって使い分けなければいけないのが、ちょっと大変。


Pict. よく使用する容器

 

じゃあ、アルミニウムでいいでしょ、って話になるんですけど、そうもいかない。
アルミニウム製容器で標準試料の亜鉛を測定するとこんな感じになります。


図 亜鉛の融解の繰り返し測定,亜鉛3mg, アルミニウム製容器,
青:初回昇温, 茶:二回目の昇温, 黒:三回目の昇温

 

繰り返し測定すると融解が低温になってきます。亜鉛とアルミニウムが合金を作って、亜鉛の融解じゃないピークを亜鉛の融解として測定していた、なんてことも。

白金製の容器も合金になってしまう可能性高いです。
筆者の経験でいうとセンサーを壊すときって金属の融解を測定しなければいけない場合で容器の底面が合金化する温度まで測定した場合がほとんど。


Pict. 融解測定後の亜鉛と容器底面


Pict. 融解測定後の亜鉛と容器底面裏側

 

亜鉛とアルミニウムが合金を作るだけならまだしも、そのまま容器がなくなってセンサーも一緒に反応するなんてことも多々あります。
金属の融解の測定の場合、セラミック製の容器を最初に使うのが一番です。錫とか金とか金属の融解があるときはいつも気を使ってます、たまに忘れますが。基本は融解が終わって「ベースラインが確認できた」ら、「できるだけ低温」で、「すぐに止める」、です。
ただ、どうしても熱容量の小さい容器を使いたいとき、や、融解温度超えた温度まで測定したいときも出てきます。
そんなとき筆者は容器の下にα-アルミナのパウダーを薄く敷いて、その上にサンプルを置いたりしています。

手順は、というと...

空のサンプルパンに...


アルミナパウダーを少し入れて...


タッピングして平らになる様ならして...


アルミナパウダーの上にサンプルを置いたらできあがり。

クリンプしてもそのまま開放でもOKですが、押しすぎると試料が容器に接触してしまって、“アルミナの意味なかった”と筆者が嘘つきになってしまうので、アルミナの上にサンプルがあることだけ確認してください。

 

TG/DTAの場合、容器の蓋がないことがほとんどなのでこの方法を結構使えます。センサーを壊す可能性が低くなるだけで気が楽になりますし...容器の中だけじゃなくて、センサーの上にアルミナパウダーを少し敷いておくのも一つの方法。

特に金属が含まれる試料の場合で、何かよくわからないデータの違いがあるときって、合金を作っていたかもって感じで結果を見直してみてください。容器を間違えて合金を作っていた結果を信じていたなんてことも多々ありますから。

今回は容器の話というより、合金になってセンサーを壊す話でした。

 

近々公開の新しいムービーの予告があるかも...
では、次回の更新でお会いしましょう。

 

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