ヘッドスペースサンプラー(HS)を用いた定量分析とコツ | クロマト分析 日々のQ&A - PerkinElmer Japan

ヘッドスペースサンプラー(HS)を用いた定量分析とコツ

前回のブログでは、ヘッドスペースサンプラー(HS)について、トラブルシューティングを交えてお話しました。
今回は、HSを用いた定量分析の方法とコツについてお話ししようと思います。

HSを用いた定量分析

HSを用いて定量分析する際、3つの定量方法があります。

➀絶対検量線法(外部標準法):ポピュラーな方法ですので、ご存じの方も多いと思いますが、おさらいです。絶対検量線法とは、既知濃度の標準試料を用いて検量線を作成し、未知試料中の目的成分を定量する方法です。

 

②標準添加法:既知濃度の目的成分をあらかじめ未知試料に添加したもので検量線を作成して定量する方法です。この方法は、マトリックスの影響を受けてしまうサンプルに適用します。
 サンプルがマトリックスの影響を受けているのかを判断するには、マトリックスに既知濃度の目的成分を添加した検量線 (図1;添加あり) と、絶対検量線(図1;添加なし) の2種類の傾きを確認します。両者の検量線の傾きが異なる場合は、「マトリックスの影響あり」と判断し、標準添加法で定量することをお勧めします。


▲図1 標準添加法の定量

 

③マルチプルヘッドスペース抽出(MHE)法:標準試料の作製が難しい固体サンプル中の揮発成分を定量する方法です。具体的には、固体サンプルをバイアルに封入し、ヘッドスペース分析を同じバイアル瓶 (サンプル) から3回以上繰り返し行うことで得られる目的成分のピーク面積の減衰曲線から、サンプル中の目的成分含有量を推定します(図2)。


▲図2 マルチプルヘッドスペース抽出法

 

 なにやら難しそうな感じがしますが、標準品と試料から得られた面積値などを入力するだけで、これらの計算は専用ソフトが自動的に行ってくれます。ご安心を! 

 

定量分析を行うためのコツ

 HSを用いて定量分析を行う場合には、必要条件があります。それは【サンプルが平衡状態であること】です。以前の前処理装置の紹介ブログでも、「HSで安定した定量結果を得るには、気液平衡、気固平衡が必須です」とお話ししました(覚えていますか?)。
 「サンプルが平衡状態にあるって、どうやってわかるの??」という声が聞こえてきましたので、ご説明いたします。図3をご覧ください。


▲図3 加熱時間の違いによる分析結果比較

 

 サンプルの加熱時間を長くすれば、その分サンプルに含まれる成分が多く抽出されるのは、ご想像の通りです。ただし、時間が長ければ良いというわけではありません。サンプルの劣化や分解につながる可能性もあります。もちろん、分析時間もかかってしまいます。 
 分析結果を見ると、加熱 45 分までは時間に比例して検出している成分の強度 (クロマトグラムの右上に表示されている数値です) が高くなっていることが分かります。ただし、45 分と 60 分は同じ強度ですね。…ということは、このサンプルは 30 分から 45 分の間に平衡状態になっている、と判断します。
 このサンプルの場合は、加熱時間 45 分がよさそう、と判断しますが 30 分から 45 分のどこで平衡状態になっているか…?と、さらに突き詰めて分析をするのも良いですね。
 パーキンエルマーのHSでは、自動的に加熱時間を振って分析を行ってくれる機能(プログレス機能)もあります。こちらの機能は、終夜運転などを利用して分析条件を検討できる便利な機能なのです!

 

また、サンプルからきちんと成分が抽出されているのか、ということも大切です。
図4はコーヒーをヘッドスペースで分析した例です。


▲図4 コーヒーの前処理(豆、粗砕、粉)の違いによる分析結果比較

 

 サンプルの前処理方法 (ここでは、豆のまま、粗砕、粉) によって、得られるデータが異なることが分かります。フィルム状のサンプルも、くしゃっと丸めるのと、短冊状に切るのでは得られる結果が異なります。表面積が大きいほうが、たくさんの成分がでてきますが、細かい粉などのサンプルは、サンプル瓶の下から成分がでにくい、といったこともありますので、注意が必要です。
 パーキンエルマーのHSでは、シェイカー機能があり、その名の通り、サンプル瓶を上下にシェイクしてくれます。そのため、成分が下に留まることなく分析ができる、便利な機能です。

 サンプルを入れすぎると、平衡化に時間がかかってしまい、逆にサンプルが少なすぎると平衡化時間は短くてもピーク強度は小さくなります。
 どのようなサンプルの状態で得られたデータが必要なのか、目的に合った方法で前処理を検討してみて下さいね。

 

 

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