短時間で良いスペクトルを得るための測定条件(1) 積算回数 | FTIR Blog - PerkinElmer Japan

短時間で良いスペクトルを得るための測定条件(1) 積算回数

測定条件の決め方は、FTIRを使う上で多くの方が悩む所です。メーカーの推奨設定を“とりあえず”使ったり、前任の装置担当者が使っていた設定を“そのまま”使ったりなどの経験はありませんか? 測定条件の設定根拠を知ることは分析を効率よく進めるための第一歩と言えます。

 

今回は積算回数を取り上げます。

適切な積算回数は、SN 比に基づいて決めることができます。SN 比とはスペクトル上のピーク高さ(=Signal) とノイズ幅(=Noise) の比率で、SN 比が高いほどデータの信頼性も高くなります。積算回数を増やすとSN 比が高くなる反面、測定時間が長くなります。適切なSN 比で測定するために、適切な積算回数を設定する事が重要です。

SN 比は測定したスペクトルのピーク高さとノイズ幅から見積もることができます。実例を見てみましょう。まずは仮条件の4 回積算でスキャンしてスペクトルを取得し、着目しているピークの中で一番小さなピークを拡大してみてください。

 

グラフのスペクトルの例では、ピーク高さとノイズ幅から算出したSN 比は 8 となります。このSN 比は仮条件で測定したスペクトルのSN 比ですので、仮SN 比と名前をつけておきましょう。なお、ここではSN 比の概念をイメージするため代表的な方法のみを示しましたが、スペクトルのどこからどこまでをピーク高さやノイズ幅とするかは、考え方や解釈によってさまざまな定義があります。例えば、ノイズ幅はベースラインのばらつきの標準偏差を使用する、といった方法も一般的です。

 

次に、適切なSN 比はどう決めればよいのでしょうか。一般的な異物の定性分析などでは、SN 比は3~5 程度で十分です。また、定量分析時の定量下限はSN 比が 10 と言われます。より厳密な方法として、分析結果から予測される誤差が許容できる範囲内に収まるようにSN 比を設定する、というやり方もありますが、統計学の難しい話が入ってきて長くなりますので、またの機会に。

 

最後に、仮SN 比が適切なSN 比となるように積算回数を設定しましょう。ノイズ幅は積算回数の平方根に反比例します。つまりノイズ幅を1/2 倍 (=SN 比を2 倍) にするには積算回数を4 倍に、ノイズ幅を1/4 倍にするには積算回数を16 倍にすれば良い、ということです。

 

 

積算回数を1 回、4 回、16 回、64 回と増やした時、ベースラインのノイズ幅の変化を確かめました。ノイズ幅が積算回数の平方根に反比例していることが分かります。
つまり、仮条件の4 回積算で得たスペクトルの仮SN 比が 5 で、適切なSN 比が 10 の場合を考えます。仮SN 比を適切なSN 比にするためにはノイズ幅を1/2 倍にする必要があるので、適切な積算回数は16 回、と見積もることができます。

 

まとめると、ピークの高さ、ベースラインのノイズ幅、適切なSN 比が分かれば、積算回数を決められます。積算回数は少なすぎると正しく分析できず、多すぎると分析時間が無駄になります。分析の目的とサンプルのピーク強度に合わせた適切な積算回数を設定することが重要です。

 

次回は波数分解能について書く予定です。お楽しみに!

 

 

<< ブログをリニューアルしました! FTIR Blog 短時間で良いスペクトルを得るための測定条件(2) 分解能 >>