タンデムマス・スクリーニング - PerkinElmer Japan

タンデムマス・スクリーニング

これまでの新生児スクリーニングの手法は、1項目1疾患の検査でした。この方法による検査は簡便である反面、6項目全ての検査を行なうためには時間、人手、そして検査試薬が項目ごとに必要になることから、経費がその都度発生します。
タンデムマス・スクリーニングでは、1回の検査において複数のアミノ酸、数多くの有機酸・脂肪酸代謝物質を測定することができます。多項目同時測定であることから、一つの検査機器と試薬の組み合わせによって迅速・簡便に検査でき、より多くの先天性疾患を持つ子供に対し効果的な治療が期待されます。また、経費負担の軽減も期待されます。


 

タンデムマス・スクリーニングの特長

従来のアミノ酸代謝異常症の検査を例に取ると、1項目につき1検査が必要でした。このため、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン血症を検査するためには3種類の検査を行なう必要がありました。
タンデムマス・スクリーニングでは、一回の検査でこれら3つの疾患を同時に診断することができます。またこれらの疾患に加えて、現在では30程度の疾患についても同時に検査することができる、画期的な検査方法だといえます。このため、検査に関わる時間も手間も大幅に省くことができます。

 

タンデムマス・スクリーニングで見つかる疾患

タンデムマス・スクリーニングでは、生命活動の維持に欠かせないエネルギー産生、老廃物の排泄などに障害を来たしている疾病を見つけることができます。多くの場合、これらを司る酵素(タンパク質)をコードする遺伝子に異常が起こり、酵素が正常に働かなくなることが原因となります。このような病気は「先天性代謝異常症」と呼ばれています。
一つ一つの疾患は極めて稀ですが、タンデムマス1回の検査で診断できる疾患の発症頻度は9千人に1人になります。これは日本の年間出生数(約100万人)から算出すると、年間110人の新生児が何らかの疾患を持つかもしれないことになります。

有機酸代謝異常症

アミノ酸が分解して行く過程でカルボン酸の形態を取る中間代謝体を有機酸といいます。中間代謝過程の障害のために有機酸が溜まって障害を起こします。
メチルマロン酸血症(MAA)、プロピオン酸血症(PA)などは、イソロイシンというアミノ酸が代謝されてゆく途中の異常で起こります。体調が悪くなると、呼吸が荒くなり、急に元気が無くなり、急性脳症などを起こします。

脂肪酸代謝異常症

代表的な病気のMCAD欠損症という病気は、普段正常に見えながら空腹時や感染症に罹患した時などに、急性脳症、乳幼児突然死のような症状で発症します。
炭水化物からのエネルギーが足りなくなると、中性脂肪から脂肪酸が産生され、それが代替エネルギー源になります。しかし、代謝に障害があると、空腹のときなどにエネルギー産生不全に陥ります。

アミノ酸代謝異常症

食物から摂取したタンパク質は分解されてアミノ酸になります。代謝に障害があるために蓄積したアミノ酸が身体に障害を起こします。
現在の検査対象疾患であるフェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、分岐鎖アミノ酸代謝異常症以外にも、複数の疾患が知られています。

 

現在の運用状況

2004年に厚労省研究班によるタンデムマス・パイロット・スクリーニングが開始し、昨年(2009年)は出生数107万人のうち、約5分の1にあたる23万人がこの検査を受けています。
実施状況は自治体ごとに異なり、全域で実施している自治体(オレンジ)と一部で実施している自治体(緑)があります。

 


NPO法人タンデムマス・スクリーニング普及協会
島根大学医学部小児科 山口清次教授ご提供

また、神奈川県は23年度下半期から、県内全域でタンデムマス・スクリーニングを導入することを決定しました。
タンデムマス・スクリーニングの対象疾患患者の家族会では、タンデムマス・スクリーングの全国での早期実施に向けた活動が行われています。(ひだまりたんぽぽ(PAとMMAのホームページ))

 

これまでの新生児スクリーニングからタンデムマス・スクリーニングへ

アミノ酸代謝異常

フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、分岐鎖アミノ酸代謝異常症があります。ガスリー法、酵素法、HPLC法による測定が主でした。現在、フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症が各自治体の新生児スクリーニングの対象疾患とされています。このうち、フェニルケトン尿症の患児は年間24人(平成20年度実績)見つかっています(日本マス・スクリーニング学会誌 2009 Vol. 19, No. 3)。
現在は、3種類の疾患を別々に検査する必要がありますが、タンデムマス・スクリーニングでは一回の測定で3種類全ての疾患を検査できます。また、測定精度、測定時間もタンデムマス・スクリーニングではより改善されます。そのため、アミノ酸代謝異常症をタンデムマスにより検査する検査機関が増えています。これらの代謝疾患はNeoBaseアミノ酸・アシルカルニチン非誘導体化MSMS測定キットの検査項目に含まれています。

副腎過形成症

迅速な治療によって発症を防ぎ、発育障害を回避できる病気です。免疫測定法により17水酸化プロゲステロン(17OHP) という物質の量を測定することで診断します。発症した場合、新生児の時期に、皮膚の黒ずみ、哺乳が弱く体重が増えないなどの副腎不全症状、塩類喪失症状、そして男性ホルモンの増加による外性器の異常などを示します。国内では抗体を用いた測定方法が採用されており、タンデムマス・スクリーニングの対象疾患ではありません。多くの国ではAutoDELFIAが用いられています。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンは成長に欠かせない全身機能に関わっています。また脳発育にも関係することから、甲状腺機能低下によりホルモン分泌が低下すると、発育に影響が出たり、知能発達に影響が現れたりします。甲状腺機能低下症は免疫測定法により甲状腺刺激ホルモンという物質の量を測定することで診断します。日本人では比較的高い頻度で見つかる疾患(4000人に1人)ですが、多くの場合症状が出る前に治療されて、健康に発育することができます。国内では抗体を用いた測定方法が採用されており、タンデムマス・スクリーニングの対象疾患ではありません。多くの国ではAutoDELFIAが用いられています。

糖代謝異常

ガラクトース血症はガラクトースからブドウ糖を合成する酵素の欠損・機能不全によって引き起こされます。ガラクトースや乳糖を摂取しないようにすることで、発症を防ぐことができます。酵素を用いた測定法が採用されており、タンデムマス・スクリーニング導入後も同様の方法でのアッセイが継続されます。