(号外)結晶化のピークに再現性がないって話 | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

(号外)結晶化のピークに再現性がないって話

前回の更新、ムービー見てない人にとっては、宣伝みたいな内容(確信犯ですが)になってしまったので、少し反省して号外を出そう一念発起した熱分析屋さんのつぶやき筆者です。頑張ったので、少しくらい宣伝しても怒られないかなって思ってましたが、読者の皆さんは許してくれなかった...元々は気分で始めたつぶやきなのに、なぜか許されない...
なので、2カ月連続でつぶやきのために一念発起の更新....一念発起ってそんな簡単に使ってはいけないと思ってます...これも反省してます。そんな反省を日々。

そういえば最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)って流行ってますよね。来年から東工大テクニカルコンダクターコースの学生募集するみたいです。DXコースもできそうな雰囲気です。パーキンエルマーもやってます、DX・番外編にしちゃってますけど。
2021年12月22日(火)13:30~ テクニカルコンダクターコース(熱分析セミナー)があります。誰でも参加できるみたいなので、試しに参加しても面白いのではないかと。

 

さてさて、本題、反省の繰返し、久しぶりの連続更新とか連続ってつらいものです。
熱分析をしていると、人によって結果が違うことってないですか?再現性が出ない、今日はそんなときに実施する連続測定の話です。今回もつぶやきでお馴染みのPETボトルから。

以前、比熱容量に関係して2回目の昇温測定でサンプルの原料の特性が、って話をしたんですが、実際に測定するとけっこう不思議な結果になります。
図1は PETボトルの飲み口部分をDSC 測定してもらった結果です。50 ˚C/minで昇温と降温を実施してます。


【図1】PETボトルの飲み口の DSC 測定結果、0-300 ˚C、50 ˚C/min、昇温前後に等温 1 min

 

今回は再現性の出ないときの条件変更の手順の話。
高分子で再現性が出ない話、よく聞きます。同じ試料ならまだいいですが、最近はサイレントチェンジが問題になることもしばしば。そんなわけで、PETボトルの場所を変えて DSC 測定してみました。


【図2-1】PETボトルの切り出し場所を変えたときの一次昇温と二次昇温(PETボトル側面から切り出し)


【図2-2】
PETボトルの切り出し場所を変えたときの一次昇温と二次昇温


【図2-3】
PETボトルの飲み口、側面、底部の一次昇温と二次昇温の重ね書き

 

図2-3 は PETボトルの切り出す場所を変えた一次昇温と二次昇温の結果です。同じ原料から作られているので、図2-3 は同じになるはずが違う。一次昇温はPETボトルの成形過程の熱履歴の影響の違い、二次昇温は原料を反映して一緒のはずが、二次昇温が違う...
これ実は、測定条件、それも温度プログラムに問題がある一例です。

 


【図3】繰返し測定の昇温過程の比較

この測定を 6 回繰り返すと、繰り返すたびに昇温過程の結晶化(170 ˚C)が小さくなり高温にシフト、融解(240 ˚C)も小さくなり低温にシフトしてます。(図3)
今回は図をもう一つ。同じPETを300 ˚Cで 15 分保持すると、結晶化が最も小さく、融解も小さくなります。


【図4】等温保持時間を変えた結果と繰り返し測定の比較

 

融解温度以上でどれだけ保持したか次第で、昇温前の室温に戻った試料の状態が変わってしまうってことを示しています。酸化防止剤の影響とかいろいろありますが、図 3 の結果も繰返し測定していくと何度も繰り返し測定していくと、300 ˚Cで 15 min 保持した試料の結果に近くなることも多いです。
熱分析って「どれも正しい結果だし、違うのは測定目的だけ」。LOT 比較するときにもし、再現性が出ないトラブルになったら、試料を疑うのはもちろん、測定したときの温度プログラムも疑うといいと思います。冷却速度が遅いと昇温は繰り返し回数に関係なく同じ様な結果になってしまうんですが、冷却速度が遅いと融解温度以上に長く保持されているから同じになっている可能性も高いです。
成形温度を設定や変更したいときとか、原料としての重要な情報なので、サイレントチェンジとか LOT 違いとか減量比較のためにも冷却過程の速度を上げてあげるといいかも、です。

測定条件、それも熱分析の温度プログラムというと、昇温速度を最初に思い浮かべがちですが、
筆者の場合、未知試料や比較のための条件が出そろうまで昇温速度はあまり気にせず、昇温は冷却の挙動確認として使っています。昇温挙動より冷却とか保持時間とかの影響の方が重要、です。もちろん条件が出そろうまでですが。
なので、

  1. 昇温・降温の前後に等温を入れて(金属の場合、等温をいれないことがほとんど)50 ˚C/min くらいの速い昇温速度で、昇温降温を 3 回くらい繰り返す
  2. 融点以上の等温保持時間を 2-15 min くらいで振ってみる
  3. 融点以上で保持する温度を変更する(TGを使って分解の情報が必要ですが...)

の手順で実施することが多いです。最後に昇温速度を JIS などに合わせて、測定して、再現性が得られたら終了にしてます。

もし、再現性に困ったら、融解温度以上での温度保持、繰り返しの影響を疑ってみるといいかもしれません。

 

今回も長かったですね...スマホだと読みにくいらしいです...確かに読みにくい..文字、多っ。
これでもまだ一部しか書いてないし、今回はWebExpoムービーの続きの「号外」ということで許してください。

 

最後に、
WebExpoのつぶやきムービー、予想以上に見ていただけたみたいで、よかったです、中身の感想は置いておいて...見てくださったみなさん、ありがとうございました。
さて、今年のつぶやきは終了です。
北京冬季オリンピックの年、2022 年もコロナに負けずに頑張りますということで、みなさんよいお年を。

では、次回 2022 年の更新でお会いしましょう。

 

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