DMA取っておけばよかった | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

DMA取っておけばよかった

祝31回目の更新!
気が付けば9月。コロナ禍の収束はまだまだ見えない中での TOKYO 2020 オリンピック、パラリンピック、2年ぶりの高校野球も終わってしまいました。TOKYO 2020 はメダルラッシュでしたが、筆者はこの数年、初もうでのおみくじが“凶”しか引けないです。毎回毎回引いていた “凶”はこのコロナの環境を暗示していたのか、と思えるところがおみくじたる所以、と思ってしまった熱分析屋さんのつぶやき筆者です。

9月13日と11月16日に熱分析研究懇談会の第3回熱分析webチュートリアル第4回熱分析Webチュートリアルがあります。熱分析の公定法について知りたかったら参加するといいかもしれません、無料ですし。

さて、最近はこのつぶやき、次回の予告をしていなかったのですが、前回間違えてストック記事に書いてあった次回予告の変更を忘れてそのまま使ってしまいました。なので、今回は DSC だけの情報だといろいろと間違えるという熱分析の手順の話です。

最近は比熱容量測定って多いです、ホントに...簡単に動的な解析できて入力補償DSCの一番いいところなので、当たり前といえば当たり前ですが、とにかく多いです。 材料が高機能化し応用範囲が広くなって難しくなっているからだと思ってます。

さて、そんな最先端のデータは使えるわけもなく、今回も筆者の趣味でゴムの比熱容量測定したときの話。試料がゴムの状態になっている -50 ˚C から 100 ˚C を越える温度まで比熱容量が知りたくなって測定しました。


図 ゴムの一次昇温(赤線)、二次昇温(青線)、降温(黄土色線)の比熱容量解析結果

 

さて、測定が終わって比熱容量解析して...ん?一次昇温(赤)と二次昇温(青)も降温(黄土色)もすべて合わない...事前測定では転移が -80 ℃ 位でベースラインが取れているはずなのに...同じ比熱容量の曲線を辿るんですよね...入力補償 DSC で転移のない温度範囲で 10 %近くの違いはあり得ない... さらに何回か測定すると、比熱の数値がばらついて安定しない。

さて困った。
というわけで、もう一度初めの情報から見直し、と思ったところで、もしかして転移に気づいていなかっただけでは?とふっとよぎりました。実際に DMA 測定して -50℃ 位のところをよく見ると...


図 DMAの測定結果(黒)とDSCの比熱容量のプロットの重ね書き

 

DMA の tanδ の -50 ℃位に小さなピークがありました。 確かに DMA 測定結果の -90 ℃くらいにはもっと大きいピークがあるんですけど、大きいピークに目がいって小さいピークは見落としがち。
DSC で予備測定しても小さい転移に気づかなかったんです。もう少しみると、DSC の比熱曲線にあるヒートショック(緑〇)の形(角の高さ)が異なっていて、サンプル測定の等温のベースラインが正常にとれていないことがわかります。
「比熱容量測定の等温保持は転移のないベースラインを示す範囲で」。これって基本中の基本です。基本通りでなかったってことがバレバレです。
結局、比熱容量測定は全部やり直し。この結果を表に出すことがなくって本当によかったですけど、やり直しはつらい。サンプルが少なかったらと思うと、ゾッとします。

ゴムなど転移温度範囲が広いものは特に注意が必要で

  1. 一次昇温と二次昇温、冷却測定して比熱の数値を比較する
  2. ガラス転移を越えた温度で等温保持するときは小さい転移がないか確認する
  3. DSC がすべてと考えずに機械特性(DMA や TMA)などで確認する

などして、本当にその温度で転移がないか、確認してから実施してください。筆者の様にやり直しにならないように。
比熱容量は数値がすべて。変な数値が出まわったら大変なことになっちゃいますし。

熱分析ってついつい大丈夫って思い込みがちです。間違った情報を基に話を進めると、ややこしくなります。比熱容量測定に限らず、DSC の昇温開始前後の等温保持はとっても大事なので、ぜひトライしてください。

今回は応用するときほど基本は大事と思っていながら、きっと大丈夫という思い込みで“楽”をしようとして熱分析の基本を忘れた筆者の話でした。

さて、残暑、新型コロナの感染拡大などなど、大変な状況続きますが、体調には気を付けて熱分析してください。
今回は忘れずに次回予告を修正(消しただけですけど)しました。
では次回の10月号でお会いしましょう。

 

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