前回のブログでは、GC/MS の前処理装置(サンプラー)であるヘッドスペースサンプラー、トラップサンプラー、サーマルデソープションシステムについてお話しました。
今回は、ヘッドスペースサンプラー (HS) について、トラブルシューティングを交えてお話ししようと思います。
前サンプルのピークが残ってる…キャリーオーバー!
HSを用いた分析中でキャリーオーバーしたことはありませんか?前に測定した成分のピークが次の測定にも残ってしまうことをキャリーオーバーといいます。キャリーオーバーしてしまうと、分析のやり直し・・・大変ですよね。
キャリーオーバーしやすい化合物として、トリメチルアミン(以下 TMA)が知られていますが、弊社 HS を用いて TMA 10000 ppm を測定、その直後にブランク測定を行った結果を図 1 に示します。
▲図1 TMA 10000 ppmと測定直後のブランク測定
TMA 10000 ppm 測定直後のブランク測定でもキャリーオーバーをしていませんね。では、キャリーオーバーしやすい高濃度の TMA を測定したのに、キャリーオーバーしなかったのか・・・?
そのひみつは、発生したガスのサンプリング方式にあります。
サンプリング方式について
サンプリング方式は、下記の 3 つがあります(図2)。
▲図2 ヘッドスペースのサンプリング方式
キャリーオーバーは、ループ法で使用されているバルブの部分で起こる可能性が高いといわれています。圧力バランス法は、そのバルブを使用せずに加圧されたHSガスをGCに正確に導入できます。そのため、キャリーオーバーの心配がない、というわけです。
また、もう一つのサンプリング方式であるシリンジ法はどうでしょうか・・・?ガスタイトシリンジを用いて分析する時、高沸点化合物をサンプリングしようとしてガスタイトシリンジ内で液化してしまう・・・という現象はありませんか?
ガスタイトシリンジは、接着剤が使用されているため、使用可能な温度範囲が設けられています。そのため、シリンジはある程度までしか加温できません。そこに、ガス化した高沸点化合物をサンプリングしようとすると、その温度差で液化してしまい、注入量のばらつきやキャリーオーバーの原因となってしまう・・・というわけです。
ガスタイトシリンジや、ループ法で起きてしまうさまざまなトラブルや問題点を、圧力バランス法を用いたサンプリングであれば、それらを解決できる優れモノなのです!
次回のブログでは、HS を用いた定量分析のコツについてお話をしたいと思います。お楽しみに!
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