ん?弾性率があわない?DMA編 | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

ん?弾性率があわない?DMA編

さて、較正と校正、熱分析で昔は「較正」を使っていました。比「較」して「正」す、これ的確な言い方だと思っています。でも、今はJISの関係で「校正」を使わないといけないのだと、ふと思い出しました。というわけで、ネタはたくさんあるのに更新しない熱分析屋さんのつぶやき筆者です。
今年もJASISに出展しました。なんだか予想以上に「おいしさの見える化と機器分析」(はちみつと食味)の反響すごかったです。もし、少し詳しく知りたい方がいたら、

小林ら,“「おいしさ」の見える化と機器分析”,工業材料67(9),pp50-51(2019)

に掲載されているので、読んでみてください。最新すぎてGoogle Scholarにはまだ引っ掛かりません...念のため。

そういえば、筆者念願の「熱測定コンシェルジュ」が始まりました。これまで筆者のレスポンスの遅さにイライラしていた方、筆者の回答に疑問を持っていた方、ぜひ使ってみてください。

 

さて、なんだか難しい話の続いたつぶやき、今回から宣言通りの軌道修正。
DMAの測定がうまくいかないことって多くないですか?危うく筆者もDMAのデータに騙されるところでした。筆者は他人の熱分析のデータを簡単に信用しない人、ということを忘れていました。

DMAって試料の作り方が最も大きく結果に影響するので、切り出しがきれいにできたサンプルだと測定がうまくできているものとして考えてしまい、「うまくチャッキング(試料セット)できました」「ピークも見えているので大丈夫です」と言われるとなおさら。あまり気にせず tan δ とか読んでしまいたくなります。でもやはりDMAも熱分析です。すぐに信用してはいけなかった...


図1 高分子のDMAの結果(周波数0.1 Hz - 2 Hz)

図1は高分子のDMAのマルチ周波数の結果です。副分散も読めそうないい感じの結果です。でも、よくよくデータを確認すると、変位制御が始まった瞬間のE’ にズレが。そして低周波のピーク付近にノイズが。(図2)


図2 図1の結果と同じ結果の表示を変えたもの

一見よさそうな試料のセッティングもうまくできていないと、荷重がかかった瞬間にサンプルが滑るんです。試料が滑るとE’ が急に変動します。一度、変動してしまえば後は試料がズレた状態の位相で釣り合ってしまうので気づきにくいです。このチェック忘れるところでした。
tanδ の低周波数のピークトップが二つに分かれています。マルチ周波数で測定していなかったら、そのまま気づかなかったかもしれません。低周波数の場合、サンプルのセッティングが正常にできていないとツインピークになったりします。

筆者の場合、

  1. DMAの荷重制御した瞬間の弾性率をチェック
  2. 温度分解能に劣るけれどもいろいろ判断しやすいマルチ周波数を使う

でDMA測定開始して、条件の適・不適をチェックしています。マルチ周波数のデータを最初にとれば、温度分解能を上げた測定の良否も判断しやすいです。

疑心暗鬼になる必要はないけど、工業用途に使うときには特に再確認すべきですよね。

 

というわけで、筆者が危うく他人の熱分析のデータを簡単に信用するところを踏みとどまった話でした。

 

またしばらくの間、つぶやきは更新しません。裏側は更新しようかなと...
では、次回のつぶやき12月号でお会いしましょう。

 

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“熱分析ってエラーに気づきにくい”かも...