JIS K 7123の比熱測定って何に気を付けるの?入力補償DSC編 | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

JIS K 7123の比熱測定って何に気を付けるの?入力補償DSC編

 前回は番外編だったので、本編の更新は...とは考えない様にしている熱分析屋さんのつぶやき筆者です。最近は自動車用高機能材料など工業に重要な物性情報として比熱容量に流行の兆しが。当たり前の様に使われている熱分析にも流行があるんですね、びっくりです。最近は、JIS K 7123 とか JIS R 1672 と調べると、なぜかこのつぶやきに行きついてしまうみたいです、さらにびっくり。
 最近の出来事は、というと...第52回熱測定討論会のミニシンポジウム。なんだか予想以上の参加で満席御礼でした。このシンポジウム、熱分析をどの様に利用しているかの話もあり、とても面白かったです。次回も予定しているみたいです、ミニシンポジウム。近々、日本熱測定学会にも熱測定の問合せ窓口できそうな雰囲気ですし、ちょっと期待してもいい様な気がしてます。

 

さてさて、今回は長いブランクのあとでやっと比熱容量の続きです。比熱容量って精度が気になりますよね。
比熱容量解析用の測定は

  1. 空パンでブランク測定
  2. 使用した空パンのサンプル側にサンプルを入れて測定
  3. 最後にサンプル側の容器を調整して、サファイアの熱流シフトをサンプルにあわせて測定

これが JIS に記載された比熱容量の測定の手順です。熱流束DSC でも入力補償DSC でもどちらでも測定できます。
この比熱容量、精度が出ないって話をよく耳にします。

ですが...今回は入力補償DSC。あまり知られていないけれど入力補償DSC って、ブランクとサンプル測定するだけで普通に比熱が求められます。精度の前に自分の比熱容量測定の結果の妥当性があるか確認したいのが心情。

ずいぶん前の回 “繰り返し測定の意味って” で書いた等温→昇(降)温→等温を測定したら、ぜひ使ってください比熱容量。DSC って縦軸がW(mWとか、μWとか)です。DSCの縦軸の単位(W)って J s-1 なので縦軸がしっかり決まれば、あまり考えずに比熱にできます...少しだけ考えますが...
やりかたは簡単。DSC の結果を昇温速度(dT/dt) と質量(mg) で割るだけです。
この方法、JIS の三線法より一本少ないので二線法とも呼ばれています。

ものは試し、二線法で高分子の比熱を計算すると...


図 高分子の測定結果とブランク、二線法で求めた比熱容量の重ね書き。
サンプルとブランクのDSC 測定結果(黒)、一次昇温の比熱容量(青)、二次昇温の比熱容量(赤)、降温の比熱容量(緑)

 

比熱容量は簡単に求められますが、ここからが問題。どうやって、数値確認するかです...いろいろ方法はありますが、まずは、昇温過程と冷却過程の比熱容量の比較しちゃいます。比熱容量だと冷却過程も昇温が逆転せず、同じ方向になるので判断しやすいです。
図をよく見ると、50˚C付近の赤○と270˚C付近の赤○の比熱容量が昇温降温に関係なくほとんどピッタリ、ということは、比熱容量の結果はあっていそうだとわかります。うまく測定できていないときはこの50˚C付近の赤○と270˚C付近の赤○の比熱容量が合いません。比熱容量の数値が異なるときはサンプルの状態が異なるか、測定にエラーがあるか、です。

筆者の場合、

  1. 入力補償DSC を用いて解析するときには、まず昇温、降温の比熱容量にします。
  2. まず、一次昇温の融解温度以上と冷却の結晶化までの比熱容量(図の260˚C~290˚Cくらい)を比較します。このとき比熱が1~2 %位の誤差ならブランクとかサンプル測定に問題ないことがわかります。これ熱抵抗の影響なんですけど、今回はこの話はパスしときます。
  3. 次に冷却のガラス転移温度以下と二次昇温のガラス転移前の比熱容量を比較します。

この2と3って転移がなくて比熱容量が一緒のはず!という部分で判断しています。
比熱容量曲線にすれば、データをよくみると冷却過程の 150˚C付近に結晶化がありそうだ、なんてことも判断出来ちゃいます。

こんな感じで比熱容量曲線を使っています。詳しく聞きたい方はパーキンエルマージャパンの担当営業かコールセンターに。

 

あれっ?今回のタイトルの趣旨違いますか?
実は比熱容量解析すると、比熱だけでなく、ベースラインが読めてしまうのがDSC のいいところです。今回は比熱、比熱と言いながらベースラインの話でした。DSC って比熱から判断する技法ということで。
熱流束DSC の比熱容量解析に二線法使わないでください、くれぐれも...熱流束DSC は三線法で。

 

次はよくある測定エラーと比熱容量の精度の話も。

では、次回の “JIS K 7123の比熱測定って何に気を付けるの?入力補償DSC編その2” でお会いしましょう。

 

 

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