(番外編)熱分析って難しすぎ... | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

(番外編)熱分析って難しすぎ...

夏ですね。これだけ暑くなると、“熱”って“温度”とどう違うんだろう、なんて考えしなくなるくらい暑いです。人間って気温が体温に近いと途端に活動停止になる様な気がしている、熱分析屋さんのつぶやき筆者です。このつぶやきコーナー、とても多くの問合せをいただいています。最近は問合せがさばききれずにいます。コーナーに問合せいただいた方々、レスが遅れぎみで、ごめんなさい。

で、夏は暑いので、京都がお奨め。
毎年恒例の熱測定講習会(8/23、24)が開催されます。
涼しくなったら、神奈川がお奨め。
(まだHPにはありませんが.)熱測定討論会の特別シンポジウム「産業を支える熱測定」があって、企業での自動車関連、化粧品関連など企業の熱分析の扱い方の講演があります。

さて、勝手に気を取り直して、今日はつぶやき番外編です。

熱分析って難しくないですか?筆者が熱分析を始めた頃の悩みは、データの何を見ていいのかわからない、って悩みでした。 いろいろ調べてもひとに聞いても、結局自分でいろいろとよく考えないといけない分析が熱分析です。実は熱分析ってもっとも簡単な技法の一つで、最もわかりにくい技法の一つかもしれません。どうしてか。熱分析って “もの” が同じでも違う結果を示してしまうから、なんですよね。ということで、今日はJASIS2018の新技術説明会の資料一部使ってしまいます。


図1 各種分析手法で得られた結果と特性判断可能な相関曲線
横軸次元、縦軸(無量数)、a) DSC、b) UV-VIS、c) 全ての機器、d) ICP-MS、e) GC/MS、f)差の求めやすさ、g)詳細解析の実施しやすさ

 

図1 を見ても何だこれ?だと思いますけど、同じ試料をDSC、UV-VIS、ICP-MS、GC/MSとすべての結果とその関係、それらの結果の判断の難しさを総合判断できる Spotfire で解析して図示したものです。

同じものの特性を分析すると、すぐに判断できるDSC、詳細に解析できるGC/MSってわかります。熱分析を難しく感じるのは詳細解析に入った段階じゃないかと思います。


図2 はちみつの花と様々な分析機器の測定結果から得た分類

 

詳細な解析の前はあまり難しく考えないでいいと思います。たとえば、はちみつの詳細な分類結果はこんな感じ(図2)で、'オレンジ' と 'みかん' は別物。'そば' と 'とち' はとっても近い。
もちろん、産地の影響もあるけれど、色とか味とか主観的判断より近いので影響は少ない。
えっ?って思いますけど、図からこんな風に読めちゃいます。こんな感じの読み方をするのが熱分析じゃないかと。
分析結果を考えながら、熱分析ではこんな風に分けるのが一苦労。

実際、熱分析だけでもDSCだけ、TG-DTAだけ、DMAだけとか、一つの手法だと結果で違いが得られても、その先の様々な熱分析手法の組み合わせと構造とかの関係の総合解釈が難しくなってしまうので、熱分析は難しいって感じてしまうのかも、と思っています。温度や時間を基準にして様々な情報を判断する熱分析ってSpotfireというかものすごく向いている様に感じています。
実際、筆者も昔は
“熱分析は特性の違いを見るための測定方法”って思っていましたし、
その後、いろいろな情報を得て、
“熱分析は差の理由を推測する測定方法”になりました。
現在は始めたばかりより、少しだけ多角的な考え方ができる様になってきたと強く思い込んでいるので、この多くの情報をまとめる重要性に気づいた様な気になっています。熱分析を使って特性判断するのにとっても便利ですね、多変量解析用のソフトって。

これから熱分析にどっぷり浸かろうとしている人、筆者の様に抜け出せなくなってしまった人は特性の関連を見つけるために、サイレントチェンジ(同じ構造だからと変えても同じと別のものに変えてしまう、とかを指します)のロッド差とか比較サンプルが増えてしまった影響を知ろうとしている人にはどの程度違うのか見つけるのが簡単な手法なので Spotfire はとってもお奨めです。
なんとなくのデータから様々なデータを見つける、まさに IoT の分析技術版じゃないかと。IoT って言葉の響きがいいので使ってみました。実際、研究にも開発にも品管にも熱分析の結果と他の結果を組合せ、分析結果を生かすことができます。
ものづくりに熱分析って重要、でも、熱分析って難しくってわかってもらえない、といった悩みを持っている人にはこういった解析方法は特におすすめです、たぶん、きっと。

新技術説明会、実際に参加する・しないは別としても、事前登録するといいことあるかもしれません。
ブログコーナーの問合せ優先権とか、データの判断方法優先権とかも考えてみようかと。
事前参加申し込みのときにブログコーナー優先希望とか書いてみてください。

では、次回は脱線しないことを願って。
今回は何だか少しSpotfireの宣伝みたいになっちゃいました。なので、“番外編”ということで。
次回の更新で、その前にもしよかったら、今年の9/5-9/7のJASIS2018でお会いしましょう。

 

 

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