がん免疫サイクル - PerkinElmer Japan

がん免疫サイクル

がんへの免疫応答は 7 つのステップからなることが知られています1)。まず、細胞死したがん細胞よりがん抗原が放出されます(①)。これを樹状細胞が取り込み、リンパ節へと遊走します(②)。リンパ節で樹状細胞はがん抗原をT細胞に提示し、T 細胞はプライミング・活性化されます (③)。活性化されたT細胞は血管を通って遊走し(④)、がん組織へ浸潤します(⑤)。T 細胞上の受容体 (TCR) は、がん細胞表面に提示された抗原と特異的に結合し(⑥)、がん細胞を傷害します(⑦)。傷害したがん細胞は、がん抗原を放出、ステップ①へと戻ります。この回路がまわり続けることで、免疫応答によるがん細胞の傷害が効果的に行われます。

1. Chen DS, et al . Oncology Meets Immunology:TheCancer-Immunity Cycle. Immunity. 2013 ;39:1-10


cGAS-STINGパスウェイ TLRパスウェイ 免疫チェックポイント TCRパスウェイ CAR-T

パーキンエルマーのがん免疫研究アッセイツール

パーキンエルマーは、自然免疫(Toll様受容体、STING、インフラマソーム)、ナチュラルキラー、適応免疫(T細胞およびCAR-T療法、B細胞)、免疫チェックポイント、免疫抑制、およびその他の免疫経路を含むアッセイポートフォリオを提供しています。弊社のホモジニアスアッセイ技術、Alphaテクノロジーにより、迅速で、且つ、正確な結果が得られます。

がん免疫関連パスウェイ

cGAS-STING

STING は、小胞体に局在するホモ二量体膜タンパク質であり、細胞質中の DNA に対する自然免疫応答において重要な役割を担っています。STING はリガンドであるサイクリックジヌクレオチド(cyclic GMP-AMP: cGAMP)に結合すると構造変化を起こし、TBK1 を活性化します。次いで、TBK1 は STING と転写因子 IRF3 をリン酸化、リン酸化された IRF3 は二量体化し、核へと移動してI型インターフェロンの発現を誘導します。

がん由来の DNA 断片は、STING 経路を介して抗がん免疫応答を駆動することが示されており、この経路の活性化は、前臨床モデルにおいて有望な抗腫瘍効果を示します。STING アゴニストを同定し、この単独または他の免疫療法剤との併用により、自然免疫応答を増強してがんを治療することが治療戦略の一つとなっています。

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TBK1

関連製品

cGAS-STING pathway
TBK p62 STING
サイトカイン
IFNα IFNβ IFNγ

 

Toll like Receptor (TLR)

Toll 様受容体 (Toll-like receptor: TLR) は、通常マクロファージの表面に発現し、外因性および内因性の危険を察知して免疫システムを活性化します。TLR のリガンド PAMP (pathogen-associated microbial patterns: eg. LPS, Peptidoglycan, RNA, DNA) や DAMPs (danger-associated molecular patterns: e.g. ROS, HMGB1) による刺激に応答して、シグナル伝達経路を介しⅠ型 IFN や炎症性サイトカインが分泌されます。
Toll 様受容体シグナル伝達経路の活性化は、マクロファージおよび樹状細胞を活性化し、がん免疫サイクルを機能させるため、免疫腫瘍学の創薬においてこの経路の活性化は魅力的なターゲットとなっています。

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IRAK4 p38 c-Jun JNK NFκB NFκB IKKβ TBK1

関連製品

Pathway / Target
TLR pathway
IRAK4    
MAPK pathway
MEK1 ERK ELK1
JNK c-Jun phospho-c-Jun
ATF-2 MKK3/6 p38 MAPK
Raf-1 Ras  
JAK-STAT pathway
JAK2 STAT assay
NFκB pathway
IKKα/IKKβ NFκBp65 (RELA) IκBα
TBK    
サイトカイン
TNFα IFNα IFNβ
IL-1β IL-6  

 

免疫チェックポイント

T 細胞の活性制御には T 細胞上に発現する副刺激受容体が関与しています。副刺激受容体には活性型と抑制性型が存在し、抑制性受容体は「免疫チェックポイント」と呼ばれています。免疫チェックポイントにそのリガンドが結合すると、T細胞の活性は抑制されます。元来、自己細胞への攻撃回避や、過剰な免疫応答を制御するためのシステムですが、一部のがん細胞ではこのシステムを利用し、細胞膜上にそのリガンドを発現してT細胞の攻撃から逃れています。

代表的な免疫チェックポイント分子として、CTLA-4 や PD-1 などが挙げられます。近年、これら免疫チェックポイントおよびそのリガンドを標的とした阻害剤が開発され、その効果が示されています。2020年8月現在、国内では抗 CTLA-4 抗体、抗 PD-1 抗体および抗 PD-L1 抗体の 3 種類が承認を得ています。

関連製品

受容体-リガンド バインディングキット
CD28/CD86
CTLA4/CD80
CTLA4/CD86
LAG3/MHCII
PD-1/PD-L1
PD1/PD-L2
受容体or リガンド 検出キット
CD28
CD40
CD70
CD80 CD86 CD137L(4-1BBL)
CD252(OX40L)
CD272(BTLA4)
CTLA-4
GAL9
GITR
HLA-C
HLA-E
PD-1
PD-L1
PD-L2 TIM-3 VISTA

 

TCR

T 細胞は、T 細胞上の TCR を介して、他の細胞上の MHC に提示された抗原を認識します。T 細胞が抗原と MHC の両方を認識すると活性化プロセスが進み、認識しない場合は不活性の状態を維持します。

T 細胞がエフェクター細胞に分化するには、TCR からの抗原特異的なシグナルとそのシグナルの増幅が必要です。シグナル増減の役割を持つ副刺激受容体は、CD28 などの活性型と、CTLA-4 や PD1 などの抑制型に分類されています。

TCR が MHC に提示されたペプチドに結合すると、TCR 複合体は立体構造が変化し、Lck によってリン酸化されます。リン酸化された TCR 複合体は ZAP-70 をリクルートし、CD28、LAT、SLP-76 などの多くのパートナーが活性化およびリン酸化されます。SLP-76 はリン酸化 LAT により膜にリクルートされ、PLC-γ1 の活性化を促進、活性化 PLC-γ1 は PIP2 を分解して DAG と IP3 が生成されます。
IP3 は急速に拡散し、小胞体のカルシウムチャネル受容体を活性化、細胞質へ Ca2+ の放出を誘導します。このカルシウムはカルモジュリンに結合し、転写因子 NFAT を活性化するカルシニューリンの活性化を導きます。一方、DAG は、MAP キナーゼ(Ras-Raf-MEK1 / 2)を介して ERK1 / 2 の活性化を促進し、転写因子 Fos の活性化をもたらします。

抗原/ TCR 誘発のシグナル伝達と同時に、T 細胞の活性化は、抗原を提示する樹状細胞の CD80 / 86 による CD28 の刺激によって達成されます。これにより、PI3K が活性化され、PIP2 がリン酸化、PIP3 が生成、最終的に PDK1 が活性化され、その結果として AKT、mTOR、JNK、および NF-κB が活性化されます。

TCR パスウェイのシグナル伝達の結果、転写因子(NFAT、NF-κB、FOS、JNK)は、活性化 T 細胞の長期増殖を促進する IL-2 や IL2R などの遺伝子セットの転写を活性化します。

TCR パスウェイの全体的なシグナル伝達力は、共抑制受容体 CTLA-4 と PD1 によって調節されます。CTLA-4 と PD1 は、ホスファターゼである SHP1 と SHP2 をリクルートして活性化、T 細胞刺激における LcK と CD28 の初期段階の役割を阻害します。
SHP1 と SHP2 の阻害により T 細胞の機能が回復する可能性があるため、潜在的な薬物標的とされています。

PerkinElmer では、TCR シグナル伝達に関連する分子を簡便に且つハイスループットに検出する製品ツールを取り扱っています。TCR シグナル伝達を標的とした治療薬の開発研究などにご利用頂けます。

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ZAP-70 SLP-76 SHP1 SHP2 JNK NFκB AKT mTOR NFκB c-Jun CREB ERK1/2

 

関連製品

T-cell 活性 pathway
AKT c-Jun CREB
ERK assay JNK assay mTOR assay
NFκBp65 (RELA)
SHP assay
SLP-76 assay
ZAP-70


サイトカイン
IFNγ IL-1β IL-2
IL-6 TNFα  

 

関連資料

Claire Galand et al.
AGEN2373 is a conditionally-active agonist antibody targeting the co-stimulatory receptor CD137 for the treatment of human malignancies.
Journal of Clinical Oncology 37, no. 15_suppl
https://pdfs.semanticscholar.org/ff71/de1e495c2c004a8787e05b7d9e2bd3f0cc79.pdf

 

CAR-T

CAR-T 細胞は、がん抗原特異抗体の抗原認識部位 (scFv) とT 細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン (CD3ζ)、共刺激分子である CD28 や 4-1BB などを融合したキメラ抗原受容体 (CAR: chimeric antigen receptor) を発現した細胞です。がん抗原を発現したがん細胞を特異的に認識して活性化し、がん細胞を障害する機能を持ちます。実際の CAR-T 細胞療法では、患者の血液からT細胞を採取して遺伝子導入を行い、遺伝子改変した T 細胞を増幅培養した後、患者の体内に戻されます。

CAR-T 細胞療法の最初の開発は、急性リンパ芽球性白血病 (ALL) に焦点を当てて行われました。ALL は最も一般的な小児癌の一つです。2017年に CD19 標的 CAR-T 療法であるキムリア (チサゲンレクルユーセル) とイエスカルタ (アキシカブタジン シロルーセル) が米国食品医薬品局(FDA)により承認されました。

CAR-T 細胞療法は有望な免疫療法ですが、適切な標的抗原が未だ少ないこと、CAR-T 細胞の体内での持続性、費用など、改善が必要な課題も多く残されています。

PerkinElmer では、scFv の結合力評価やエフェクター細胞の機能性評価、CAR トランスダクションの効率評価、T細胞増殖および細胞障害性試験などに利用頂ける製品を提供しています。

 

関連製品および資料

CART研究 アッセイツール

 

その他関連製品

細胞増殖/細胞障害性試験
  品番
DELFIA Cell Proliferation Kit AD0200
DELFIA Cytotoxicity Kit AD0116

 

レポーターアッセイ試薬
  品番
britelite™ plus 6066766
neolite™ 6016716
steadylite™ plus 6066756

 

関連資料