アストロサイト/オリゴデンドロサイト | 中枢神経系(CNS) - PerkinElmer Japan

アストロサイト/オリゴデンドロサイト

アストロサイト: 役割と機能

アストロサイトは、哺乳類の脳の中で最も数が多いグリア細胞です(~30%)。灰白質全体に分布しており、脳の機能と可塑性を調節する、CNS 構造の不可欠な構成要素です。アストロサイトは、血液脳関門(Blood-Brain-Barrier: BBB)の構造的完全性、神経細胞への代謝サポート、シナプス形成・維持・除去、およびイオンと神経伝達物質(NT)のリサイクルなどの重要な機能を提供します。アストロサイトは、その同定にも使用できる、GFAP(Glial fibrillary acidic protein)、ビメンチン、ネスチン、および S100β などの中間フィラメントタンパク質を恒常的に発現します。神経細胞のように、アストロサイトは非常に多様で不均一であり、脳の領域と発達段階に応じて異なる特性を持っています [1]
シナプス前膜とシナプス後膜、および 1 つのアストロサイトの接触により、「三者シナプス」が構成され、アストロサイトのシグナル伝達経路がシナプス応答を調節します。アストロサイトは電気的には非興奮性ですが、代謝調節型(i.e. mGluR)およびイオンチャネル型受容体を介して NT に応答することで活性に関与し、シナプス間隙でグルタミン酸、ATP、または GABA の放出につながる Ca2+ の上昇を誘導しています。 さらに、アストロサイトはギャップ結合で相互に接続しており、栄養素、イオン、および NT の拡散による別レベルでの調節を可能にしています [2]
アストロサイトは、血管からグルコースを取り込み、その後神経細胞への乳酸放出を調節する、神経細胞にとって不可欠な代謝サポートをしています。
またアストロサイトは、BBB での水チャネル Aquaporin-4(AQP4)および inwardly rectifying potassium channel 4.1(Kir 4.1)を介した水のホメオスタシスおよびイオン緩衝にも役立っています [3]
アストロサイトはグルタミン酸トランスポーター(GLAST、GLT1)と GABA トランスポーター(GAT3)を発現し、NT の取り込みと、その後の細胞質グルタミン合成酵素(GS)によるグルタミンへの変換を可能にしています。その後、グルタミンは分泌され、さらに NTs 合成のために神経細胞に取り込まれます [4]。この厳しい制御は、興奮毒性、過度な神経細胞の活性化、および細胞死につながる可能性があるグルタミン酸の蓄積を防ぎます。
神経細胞とアストロサイトは、トロンボスポンジン、ヘビン、ニューレキシン、ニューロリギン、neural cell adhesion molecule(NCAM)などのいくつかのシナプス形成分子を分泌し、シナプスの形成をサポートしています。これは、神経細胞の可塑性を確保するためにシナプスを排除する動的なプロセスです。アストロサイトは、食作用性 c-mer proto-oncogene tyrosine kinase(MERTK)および multiple EGF like domains 10(MEGF10) 受容体を介して [4]、または、C3a を分泌して直接または神経細胞内の complement component 1q(C1q)をアップレギュレートする TGF-β 分泌して間接的に、補体受容体(CR)を介してミクログリアを動員し、シナプス貪食を仲介します [5]
アストロサイトは、BBB の完全性と透過性にも関与しています。この界面は、内皮細胞、周皮細胞、およびアストロサイトエンドフィートで構成され、内皮の血液流動と神経細胞との間のリンクを確立します。BBB の形成と維持の調節により、毒性物質や免疫細胞の浸潤が回避されます。
これらすべてのアストロサイトの中枢機能は有益ですが、病理学的状態で反応が不適切または不均衡な場合、不都合な状態になる可能性があります。
アストロサイトは環境に非常に敏感であり、損傷に反応して過剰反応すると有害になり、神経細胞死、炎症を促進し、修復機構を妨げる可能性のある多数の変化を起こします [6]

 

[1] Allen et al., 2017. Cell Biology of Astrocyte-Synapse Interactions. Neuron
[2] Farhy-Tselnicker et al., 2018. Astrocytes, neurons, synapses:a tripartite view on cortical circuit development. Neural Development
[3] Seifert et al., 2006. Astrocyte dysfunction in neurological disorders: a molecular perspective. Nature Reviews | Neuroscience
[4] Dossi et al., 2017. Human astrocytes in the diseased brain. Brain Research Bulletin.
[5] Lee et al., 2019. Glial Control of Synapse Number in Healthy and Diseased Brain. Frontiers in Cellular Neuroscience
[6] Liddelow et al., 2017. Reactive Astrocytes: Production, Function, and Therapeutic Potential. Immunity

 

 

アストロサイトの活性化

アストロサイトは環境に非常に敏感であり、CNS 損傷に迅速に反応します。疾患の重症度に応じて、アストロサイトは反応性アストロサイトとなり、分子および細胞内修飾を受けます。活性化されたシグナル伝達経路は、A1 と呼ばれる炎症性または A2 と呼ばれる抗炎症性の表現型につながり、それぞれミクログリアの M1 および M2 型に対応しています [1]。しかし現在では、アストロサイトの反応性が状況によって異なり、損傷の性質と重症度によって変化するため、より多くの状態が存在する可能性があると認識されています [2]
M1 活性化ミクログリアから放出された IL-1β または TNF-α のような炎症性サイトカインは、アストロサイトサイトカイン受容体に結合し、転写活性化因子 NF-κB および CCAAT-enhancer-binding protein β(C /EBPβ)につながる下流の非重複経路を活性化します。C /EBPβ は MEK-ERK1 / 2 経路の下流で活性化されるのに対し、NF-κB は IKKβ を介した古典的な経路によって活性化されます [3]
アミロイドオリゴマー、Tau、α-シヌクレイン凝集体などの毒性タンパク質は、HMGB1 など他の DAMP と同様に、TLR(Toll-Like Receptors)等のパターン認識受容体を活性化することが知られています。これらはさらに Myeloid differentiation primary response gene 88(Myd88)依存性の下流経路を活性化し、NF-κB の活性化につながります [4]
いくつかのサイトカインと成長因子に応答して、アストロサイトは Jak / STAT3 経路を活性化します。これは、神経細胞の生存とシナプス修復を促進する多くの神経栄養因子および神経保護因子のアップレギュレーションと分泌に関与すると考えられています [1]
プリン(ATP)はプリン作動性 P2Y 代謝型 Gq 共役 GPCR も活性化し、カルシニューリン (CN)-NFAT 経路を活性化して、NFAT 標的遺伝子の活性化を導きます [5,6]
アストロサイトを反応性へ誘導するトリガーの多様性と、疾患および状況特異的なシグナル伝達カスケード間の複雑な相互作用/クロストークの存在により、 神経保護の A2 から神経毒性の A1 アストロサイトまで、一連の機能表現型が生じます [1,2]
これらのシグナル伝達イベントが統合されると、A1 アストロサイトは、シナプスに有害で破壊作用を示す TNF-α、IL-1β、IL-6、C3 などの炎症誘発性および補体カスケード遺伝子を主にアップレギュレートします。逆に、A2 アストロサイトは、免疫抑制サイトカイン、ニューロトロフィン、トロンボスポンジン、MMP、および TGF-β、IL-10、MMP9、BDNF などの成長因子遺伝子をアップレギュレートし、組織の修復を刺激しながら炎症を軽減します [1,7]

 

[1] Liddelow et al., 2017. Reactive Astrocytes: Production, Function, and Therapeutic Potential. Immunity
[2] Sofronew, 2015. Astrogliosis. Cold Spring Harbor Perspectives in Biology
[3] Saha et al., 2006. Up-regulation of BDNF in Astrocytes by TNF-a: A Case for the Neuroprotective Role of a Cytokine. J Neuroimmune Pharmacol.
[4] Okun et al, 2011. Toll-like receptor signaling in neural plasticity and disease
[5] Perez-Nievas 2018. Deciphering the Astrocyte Reaction in Alzheimer’s Disease. Frontiers in Aging Neuroscience
[6] Ben Haim et al., 2015. Elusive roles for reactive astrocytes in neurodegenerative diseases. Frontiers in Cellular Neuroscience
[7] Song et al., 2015. Focal MMP-2 and MMP-9 Activity at the Blood-Brain Barrier Promotes Chemokine-Induced Leukocyte Migration. Cell Reports

 

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オリゴデンドロサイトの役割と機能

オリゴデンドロサイトは、オリゴデンドロサイト前駆細胞から生成されます。その丸い細胞を囲む長い分枝突起は、軸索を包み、ミエリン鞘を作ることによって軸索を保護します。 Egdar et Sibille によれば、オリゴデンドロサイトは同時に複数の、最大 60 の軸索をミエリン化します。 ミエリンは、70% の脂質と 30% のタンパク質で構成される膜であり、その主成分は、myelin basic protein(MBP)、proteolipid protein(PLP)、および 2’,3’-cyclic nucleotide-3’-phosphodiesterase(CNP)です [1]
これらは神経伝達、ホメオスタシスおよび免疫調節において重要な役割を持っています。例えば、オリゴデンドロサイトは、アストロサイトと共に、ミエリン鞘の調節を通じて神経細胞から神経細胞へ、およびグリア細胞間の情報の伝達速度を制御しています。さらに、炎症性サイトカインの調節不全に敏感に反応します。TNF-α と IL-1β がグルタミン酸濃度を増加、グルタミン酸の毒性を誘発し、オリゴデンドロサイトの喪失そして脱髄を促進します [2]
オリゴデンドロサイトの機能不全が神経変性疾患において重要であることを示す報告が相次いでいます。ROS 産生による気分障害とオリゴデンドロサイトの喪失による統合失調症への関与が示唆されています [2]
多発性硬化症(MS)の場合、オリゴデンドロサイトは軸索のミエリンを再形成することができません。結果、局所的な脱髄と軸索の喪失が起こります。アストロサイトの破壊は、AD とも関連しています。 AD 患者の白質では、MBP、PLP、および CNP(ミエリンを構成するタンパク質)が有意に減少しており、おそらくオリゴデンドロサイトの死に続くことが示されています。さらに、Aβ 自体がオリゴデンドロサイトに対して毒性があることが示唆されています [3,4]
神経変性の最大の危険因子は老化です。年齢とともに、ミエリンは未だ定義されていないプロセスで侵食され、神経炎症を悪化させ、神経細胞死を引き起こし、その後、神経変性を引き起こします [4]

 

[1] Edgar N, Sibille E. A putative functional role for oligodendrocytes in mood regulation. Translational psychiatry 2012;2:e109.
[2] Haroon E, Miller AH, Sanacora G. Inflammation, Glutamate, and Glia: A Trio of Trouble in Mood Disorders. Neuropsychopharmacology official publication of the American College of Neuropsychopharmacology
2017;42(1):193–215.
[3] Tognatta R, Miller RH. Contribution of the oligodendrocyte lineage to CNS repair and neurodegenerative pathologies. Neuropharmacology 2016;110(Pt B):539–47.
[4] Alibhai JD, Diack AB, Manson JC. Unravelling the glial response in the pathogenesis of Alzheimer's disease. FASEB journal official publication of the Federation of American Societies for Experimental
Biology 2018;32(11):5766–77.

 

 

 

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