マイクロプレートリーダー用マイクロプレート
ポリスチレン素材未処理
マイクロプレートリーダーで使用するマイクロプレートのほとんどがポリスチレン素材を使用しています。表面処理を施していないポリスチレンは、疎水性のため、核酸やタンパク質などと相互作用し、その吸着能は、パーキンエルマーのポリスチレン素材において、IgG の場合220 ng/cm3 です。このような吸着が問題になる場合は、非イオン性界面活性剤やブロッキング剤などをアッセイバッファーに使用します。
Low Binding Surface(LBS)処理
ポリスチレン素材は疎水性が高い素材ですが、LBS 処理を施すことによって、表面を親水性に変化させ、核酸やタンパク質などのウェル内面への吸着を低減させます。パーキンエルマーでは、非イオン性のポリエチレンオキンド様の化学合成ポリマーをLBS 処理に使用し、プレート表面と分子との相互作用を最小にします。
High Binding(HB)処理
ポリスチレン素材の疎水性をさらに高め、核酸やタンパク質の結合能を上げた表面処理です。パーキンエルマーのHB 処理プレートでは、IgG の場合、600 ng/cm3 の結合能をもちます。
イメージング用マイクロプレート
シクロオレフィン・コポリマー(COC)素材
シクロオレフィンは、光学特性がガラスに近いとされるプラスチック素材で、パーキンエルマーが最も早くイメージング用のマイクロプレートに採用しました。ポリスチレン素材と比較して透明性が高く、クリアな画像を得ることができます。さらに、薬剤耐性も高いという優れた特性を持っています。
ガラス素材
ホウケイ酸ガラスは、比較的安価で良好な加工性のため、マイクロプレートの底材としても採用されています。細胞イメージング用途において、プラスチック素材と比較して優れた光学特性(高い透明性や低い自家蛍光)を持ちますが、細胞の接着性が弱くなります。
Tissue Culture(TC)処理
プラズマ放電処理を行うと、ポリスチレンなど疎水性プラスチック表面に酸素を含む官能基が発現し、親水性に変化します。これをTC 処理と呼びます。通常、細胞表面は電荷を帯びた親水性の細胞接着分子を発現しているため、TC 処理を施したマイクロプレートは、未処理のものよりも細胞の接着性が向上します。
Poly D Lysine(PDL)コート
PDL コートでは、アミノ酸であるLysine の親水性を利用した細胞接着性の向上を図ることができます。Poly D-Lysine が使用されるのは、細胞によっては分泌する酵素がPoly L-Lysineを分解してしまうためとの報告もあります。
Collagen(COL)コート
Collagen は、細胞接着マトリックスとして古くから使用されてきました。パーキンエルマーでは、最も汎用性の高いI 型Collagen をコーティングに使用しています。
Ultra Low Attachment(ULA)処理
ポリスチレンは疎水性のため、細胞の接着力は限定的ですが、一方でその疎水的相互作用によって不均一な細胞増殖となります。そこで、親水性でありながら、細胞が低接着となるULA処理が施されることによって、Spheroid 形成などの三次元培養がマイクロプレートで可能となりました。
品質を安定させるために、多くの場合、ULA 処理は化学合成されたポリマーが使用されますが、パーキンエルマーでは、細胞膜構成成分であるリン脂質(ホスファチジルコリン)の極性基と同一の構造を持つ、合成ポリマーMPC を使用しています。