“熱分析ってエラーに気づきにくい”かも... | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

“熱分析ってエラーに気づきにくい”かも...

今年も残すところあと僅か。12月23日が祝日でなくなったことに先週気づいたばかりの熱分析機屋さんのつぶやき筆者です。
令和元年も僅かなので、まずは令和元年の振り返りでもしようかと...

今年は11月に“分析屋さんが言いたがらない 分析のテクニックあれこれ”をベースにしたプロダクト横断・少数参加型のセミナー、有機技術者・研究者向けのセミナーを実施しました。
次回以降、部屋の移動しやすいように全体の時間配分を考えます。聞きたい内容が同時進行してしまいセッション間の移動できなかったみなさん、ごめんなさい。

 

というわけで、要らない情報に続いて今年最後の更新。

 

熱分析の結果って間違いがわかりにくくないですか?
一生懸命にJISを調べて参考にしても、参考書読んでも思った通りにならないし、深すぎてなかなか大変...
特に自分の測定結果でない場合、判断が難しいですよね。

試料量や雰囲気、ブランク、校正は当然ですけど、筆者が他人のデータを見るとき、それぞれの測定法のポイントにしているのは、

DSC : 融解温度以上のノイズ、冷却過程の結晶化付近のノイズ
TG-DTA : 大気中と窒素中測定、それぞれでDTAピークの形にショルダーがないか。
TG : 試料量とガス種・量
TMA : l0(測定開始が0から始まっているか)とガラス転移以上の温度で収縮していないか。(引張の場合、極端に伸びていないか)
DMA : 第25回の“つぶやき”に少し書きました。

あたりです。


図1 熱分析でおなじみのPETの比較結果

このブログでもおなじみのPETのDSC(図1、赤:5.8 mg、青:7.0 mg)です。一見うまく比較できているように思いますが...
実はこの結果で温度やエンタルピーの数値だけを扱うと大失敗することに...


図2 PETデータ拡大図

よく見ると135˚Cくらいに小さなピーク(ノイズ)があるし、145˚Cくらいのピークトップも不連続で変な形をしています。補外開始温度の結果なんて、どこの温度を示しているのやら。

筆者が人のデータで判断するときに実データを重要視する理由はここにあって、

  • 入力補償DSCだと試料由来のノイズは、図2の様に立ち上がりが急なピークになるか、吸熱と発熱が連続して観察されるかのどちらかになる。
  • 熱流束DSCやDTAはピークがゆるやかなピーク状になる。

に気づいて測定自体の問題に気づくためなんですよね。
この小さなピークに気が付くと、145˚Cくらいはノイズの可能性あり!、と気づけます。

ガラス転移以下 → ガラス転移以上 → 結晶化 → 融解
は硬さが変化して試料の作り方のエラーに気づけますので、急にピークが出るときは試料の作り方をまず疑って、その解析結果の数値を疑うところから。

ちなみに
融解温度以上(図3)をみるとさらに明確。それぞれの結果の融解温度以上の温度にノイズがありました。このノイズは容器の蓋の底面との接触が変化(=試料の高さが問題)とわかります。融解温度以上のスパイクノイズ(入力補償DSC)、ベースラインのゆらぎ、というか変動(熱流束DSC)は試料由来の可能性高いです。
試料作りの影響が大きいってことで、測定のやり直しを指示した一日でした。


図3 PETのデータの温度範囲を広げた図

 

社内だと簡単ですけど、社外の熱分析の結果を見るのは大変。
筆者の場合、測定結果の数値より、まずは試料の作り方を聞いて、実データを見てからいろいろと判断することが多いです。

 

凶から始まった2019年、突発性難聴になって聞こえなくなったときはびっくりしましたけど、筆者は何とか無事(?)に一年過ごせました。
今年もお世話になりました。チケットはすべて外れた TOKYO 2020 の年も元気に更新していきますね。

では、更新時期は未定ですけど、 次回の TOKYO 2020 の年にお会いしましょう。

 

 

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