温度が違う その2 | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

温度が違う その2

久しぶりの更新です。
まずは...記事を書きながらもしばらく更新をさぼっていたので...と言い訳しておきます。春に実施された熱測定講習会、今回は8月の京都ですね。ということは4か月ぶりの更新...さぼってごめんなさい。
第79回熱測定講習会、ぜひ、参加してみてください。

ということで...梅雨ですね、もうすぐ夏です。熱分析に夏場はあまりよろしくない季節です。湿度が上がってしまうこの季節、低温から測定したり、温度を安定させたりするために冷却ユニットを使用することが多い熱分析では結露に苦しみます。たまに水の融解やら蒸発やらが結果に観察されることがありますが、その温度がバラバラなことといったら...サンプル自体に結露したら、0 ℃付近で分かりやすいのですが、そうはうまくいきません。こんなこともあるので、夏場は特にブランクを測定してサンプルの挙動と間違えない様に気を付けています。一度200℃くらいまで昇温すると消えることが多いですが、何回か昇温しないと消えないなんて強者の水も。

今は...パーキンエルマーのラボでは業務用除湿機を使っています。これお勧めです。湿度55 %RHにしています、快適なラボ生活ってわけではなくって、分析の仕事を進める上で重要ですよね、きっと。

ラボの除湿機
写真1 ラボの除湿機

 

さてさて、やっと本題。今日は“温度が違う”の第2弾です。
しっかり温度校正(キャリブレーション)をしているのに温度が違うって気づいたことありませんか?温度の問題で受ける問合せで、純水の融解を温度校正に使っている、ので問題ないですって方がいらっしゃいます。率直に言ってしまうと...これだけはやめてください。水の融解測定は難しいです。
どんなに難しいかというと...

水の融解測定、密閉容器
図1 水の融解測定、密閉容器

 

ピークが1つではなく、再現性のないショルダーを持つピークや形のいびつなピークになることが多いです。(図1)
さらに自動解析を使うと、2.4 ℃で融解開始になってしまいます。自分で解析すると、0.3 ℃...これを誤って校正に使うと大変です。
水は熱容量が大きく、表面張力も高い、さらに固体になると液体より密度が小さいので、これを何とかしないとゴーストピークをピークと勘違いしてしまいます。
試料量を増やして水が容器の中で動かない様にするのも一つの手ですけど、金属、高分子などと比べて比熱容量が圧倒的に大きい水には少し問題が...
開始温度の解析は面倒でもマニュアルで確認するとうまく解析できると思いますのでソフト任せにせず、自分でぜひ。

ちなみに容器に水を入れると、表面張力でこんな感じに丸くなります(Pict. 1)。

Pict. 1
Pict. 1

こんなときは

Pict. 2
Pict. 2

底面の径と同じサイズに切り出した落し蓋でサンドイッチにします(Pict. 2)。
こうすると、試料量が少なくてもピークがきれいになります。 これって液体試料全般に使えます。

 

筆者の場合、低温での温度校正はシクロヘキサンを使います。もちろん水の測定の校正でもシクロヘキサンです。
清水由隆、 et al. "示差走査熱量計校正用標準物質としてのシクロヘキサンの妥当性に関するラウンドロビンテスト." Netsu Sokutei 35.2 (2008): 68-75.
に記載がありますから、検索してみてください、ぜひ。

ついでなので、次回も同じテーマで。
では次回の“水って難しい”でお会いしましょう。

 

 

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