続・水素化物発生ICP法 ~前処理について~ | ICP-OESラボのあれこれ | 無機分析ラボの日々のあれこれ - PerkinElmer Japan

続・水素化物発生ICP法 ~前処理について~

前回、水素化物発生法のメリット・デメリットについて記載したところ、読者の方より質問がありました。“固体サンプルを硝酸分解して分析溶液を得た場合、この硝酸が還元反応を阻害します。そのため、さらに前処理によって硝酸を除去するような作業が必要”という点について、具体的な硝酸除去方法を教えてほしい、とのことでした。

 固体サンプルの分解液に含まれる硝酸を除去するにはいくつか方法があります。ざっと書いてみます。

  1. 乾固;
    ビーカーなどに溶液を入れホットプレート上で加熱・乾固する方法。この場合、乾固することによって揮発ロスしてしまうような元素には適用しづらいものです。また、乾固後は塩酸によって元素を再溶解し溶液を得ます。

  2. 白煙処理;
    こちらが一般的かと思います。ビーカーなどに溶液を入れ、沸点の高い酸(硫酸または過塩素酸)を1~3 mL程度加え、200 ℃くらいまで加熱します。すると沸点の関係で、硝酸は揮発していきますが、沸点の高い酸は残ります。ここで硝酸がなくなったかどうかを判断するために、白煙がでる温度まで加熱する、ということです。この白煙は硫酸または過塩素酸由来のものです。見た目は濃厚な白色煙です。JIS K0102にも掲載がありますので参考にされてみてください。濃厚な白煙が見やすいようにビーカーに時計皿などでフタをしておくと良いと思います。※過塩素酸白煙処理の場合、サンプルに有機物が残っている場合は危険ですので避けてください。完全に硝酸等で有機物が分解された溶液に対して実施してください。不明な場合は硝酸を追加添加して白煙処理をしましょう。その後、冷却後、塩酸で再溶解し予備還元のためのサンプルとします。ちなみに、硫酸も大量にあると水素化物発生を阻害しますので、少な目に。

 

またご質問などあればお寄せください。

 

 

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