繰り返し測定の意味って | 熱分析屋さんのつぶやき - PerkinElmer Japan

繰り返し測定の意味って

今年もパーキンエルマージャパンの説明員として、分析展(JASIS 2016)に参加してきました。ちなみにJASISは“分析”に関係する様々な機器や測定手法の展示会です、念のため。この展示会、話を“しない”時間があまりに少なく、若くない世代の筆者にはとっても辛い展示会です。多くの情報から自分に役に立つ情報を探し出すのは大変ですけど、思ってもみなかったことや、分析というか、品管、製造、研究、開発それぞれの立場の人たちにとって、それまで知らなかったけれど、非常に有益な情報だったりすることも多いので、知り合いには勧めています。 来年2017年は9/6~9/8開催です、JASIS。
 
分析展で筆者の空き時間まで待ってくれた方々、時間の都合がつかなくなってしまった方々、ディスカッションの順番待ちさせてしまってごめんなさい。順番予約できるといいのですが、なかなかうまくいかないものです。
 
さて、今日はそんな分析展でも多くの質問を受けた熱分析の繰り返し測定のことです。 みなさん、DSCの測定ってどんな測定していますか?DSCの測定って繰り返し測定していることが多いと思います。DSCでPETを繰返し測定するとこんな結果になります。冷却速度を変えてしまうと、全然違った結果になります。

 


(図)期昇温PET(赤)と融解後、10˚C/min(青)と50˚C/min(緑)で冷却したあとの再昇温の結果です。 PETなのに結果が全然違いますね。熱分析は難しい、の原因がここに...


DSCでよく受ける質問は、
  • DSCの結果はどれが正しいか。
  • どの結果を使えばいいか。
なんです。これって答えのない質問なんですよね。聞かれてもっとも困る質問です。
そんなとき、
たとえば、初期昇温では “もの”が作られたときの情報がわかり,分子分光などで同じ“もの”であっても、工程が異なると硬さや違う性質を示すことが多いです。いつもと違えば良品不良品を判断できますね。しっかりとできているかの確認には一次昇温を使います。 二次昇温や三次昇温では工程の異なる“もの”であっても、融解させて冷却するとおなじ“もの”になることが多いです。この同じ状態を示すものは熱可塑性と難しい言葉が使われたりしますが、二次昇温、三次昇温とそれ以降が同じであれば、もともとの材料に問題ないことがわかります。材料の確認にちょうどいいですね。ちょっと同じものを作るところから考えた工業的な見方です。物性って意味ではいろいろ議論になるところですが...このあたりは、今のところ予定はないですが、機会があればつぶやきます。リクエストは受け付けますので、こちらからお願いします。
 
ちなみに筆者の場合、
素性の不明なサンプルのDSC測定では、TGAやTG-DTAで測定したあと、50˚C/minで融解まで測定して、50˚C/minで冷却を繰り返します。測定のプログラムパターンはこんな感じです。


(図)昇降温のパターン例。

 

等温→昇温→等温→降温→...の順番です。室温以下の場合は最初に降温を入れます。面倒臭いけれど、“一定”の条件を作ると、結果の重みが変わってきますので、ぜひ。
DSCですから、ガラス転移温度とシフト幅(比熱変化:ΔCp)、結晶化温度と熱量、融解温度とピークの形をじっくり眺めます、この確認のやり方は近々つぶやく予定です。
結局,熱分析の結果はどれも正しいです。ただ,いろいろな理由があって、その理由を自分の必要な情報として読み解くのが熱分析ですね。
最近、つぶやきが長くなってますね。次回は短めにします、きっと。
 
では、次回の”横軸が時間?”でお会いしましょう。

 

 

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