ハイコンテントスクリーニングシステムが実現する新しいがん免疫療法とオーダーメード医療 | Stories - PerkinElmer Japan

ハイコンテントスクリーニングシステムが実現する新しいがん免疫療法とオーダーメード医療

大規模研究のブレイクスルー

オーストリア科学アカデミー分子医学研究センター(CeMM)の研究グループは、血液細胞を「視る」顕微鏡技術を開発し、時間の短縮やコストの削減に加えて、がんの新しい免疫療法を開発しました。「ファーマコスコピー(Pharmacoscopy)」と名付けられた、この特許出願中の技術は、パーキンエルマー社のOpera® Phenix™ ハイコンテントスクリーニングシステムのシングルセルイメージングとその独自の解析アルゴリズムによって実現できました。この新しいファーマコスコピーの技術では、既存の免疫調節薬を正確に分類できただけでなく、複数の既存の承認薬の中に免疫システムの調節機能があることを見出しました。「この方法は、免疫療法のオーダーメード化の強力なプラットホームになりうる」と、オーストリアチームは結論付けています1

ファーマコスコピー(Pharmacoscopy) とは

ファーマスコピーとは、測定速度とコンテント(解析項目数)が特徴の技術です。Opera Phenixシステムは、オーストリアの研究チームにシングルセルのハイコンテントイメージを素晴らしい速度で提供しました。特許取得済みの技術及び特許申請中の技術Synchrony Optics™ は、異なる波長の励起スポットをサンプル上にを別々に照射することで、蛍光の不要な“クロストーク”の発生を抑えることができます。結果として、以前のシステムに比べて3倍以上の撮像面積で、かつ高解像度の細胞イメージを取得することができます。この、より多くの細胞のより詳細な解析が、Opera Phenixが提供する特許取得済みの解析アルゴリズムによって実行され、オーストリアチームは、免疫細胞の相互作用について新たな知見を得ることができました2

約束された発見

さらに、このファーマコスコピーを利用すると、膨大な量の薬物ライブラリの中から免疫療法の可能性を秘めた化合物のスクリーニングが自動で行えます。研究チームは、Opera Phenixシステムによって自動化された大規模なシングルセルイメージ解析を通して、1402 種類の承認薬のスクリーニングを実施し、それぞれの化合物の細胞間相互作用に影響と免疫療法への有効性を調べました。

「驚いたことに、テストした承認薬の10 %が、免疫システムになんらかの影響を与えていたのです。」 ファーマスコピーの論文1の筆頭著者の一人であるGregory I. Vladimer氏は述べています。3

この論文では、既知の免疫調節薬の正確な分類だけではなく、複数の承認薬が免疫システムへ影響する可能性を明らかにしました。事実、研究チームは、非小細胞肺がんの治療に使われているキナーゼ阻害剤クリゾチニブ(Crizotinib:製品名Keytruda®)が、免疫療法に使用できる可能性を見出しました。

「ファーマコスコピーによって、クリゾチニブがどのように細胞傷害性T細胞ががん細胞を攻撃するのかを追跡できたのです。」 ファーマコスコピー研究の共同著者であるBerend Snijder氏は言っています。「この化合物は、がん細胞表面上に主要組織適合タンパク質複合体を誘導します。この複合体を細胞傷害性T細胞が認識し、がん細胞を殺傷するのです。」4

「これは、高解像かつハイ・スループットで免疫システムの調整を追跡できる世界初の手法です。」 この研究の責任著者で、CeMMのディレクターでもあるGiulio Superti-Furga氏は述べています。 「ファーマコスコピーは創薬における新しく、強力なツールであるだけでなく、基礎研究分野での免疫システムにおけるシグナル伝達の効果を可視化するということにも応用できるでしょう。」

「将来的に、ファーマコスコピーを利用して、個々の患者のサンプルの、様々な薬への応答をテストするようになるでしょう。つまり、オーダーメード医療のマイルストーンとなるのです。」

 

References

  1. Gregory I Vladimer, Berend Snijder, Nikolaus Krall, Johannes W Bigenzahn, Kilian V M Huber, Charles-Hugues Lardeau, Kumar Sanjiv, Anna Ringler, Ulrika Warpman Berglund, Monika Sabler, Oscar Lopez de la Fuente, Paul Knöbl, Stefan Kubicek, Thomas Helleday, Ulrich Jäger& Giulio Superti-Furga, “Global Survey Of The Immunomodulatory Potential Of Common Drugs,” Nature Chemical Biology, April 24, 2017, accessed September 5, 2017.
  2. CeMM, “Next Generation Microscopy With Pharmacosopy,” CeMM website, April 24, 2017, accessed May 9, 2017
  3. Global survey of the immunomodulatory potential of common drugs, Vladimer, G et al. Nature Chemical Biology 13, 681–690 (2017).
  4. Ibid.