ジカウィルス感染症壊滅への道 | Stories - PerkinElmer

ジカウィルス感染症壊滅への道

増大する脅威

ジカウィルスが身体に及ぼす影響が元々考えられていたことよりリスクが高いことが明らかになってきています。ブラジルの神経科学者たちは、妊娠期間中にジカウィルスに感染した場合、最大20 %の新生児に深刻な神経障害が発生すると言っています。1

The New England Journal of Medicineには, 「妊婦のジカウィルス感染は胎児の死亡、胎児の成長阻害、胚盤機能不全、中枢神経系の損傷などの深刻な障害を引き起こします。」と報告されています。2

また、ジカウィルスはブラジルで増えている異常なほど小さい頭と奇形の脳を有する小頭症の新生児の増加との関連性を疑われています。筋肉低下や時には全身麻痺を引き起こす、ギランバレー症候群もこのウィルスとの関連性が考えられています。3

世界的な脅威

64か国以上の国々がジカウィルスの脅威にさらされており、保健当局は世界的にジカウィルスが拡大蔓延するのではないかと懸念しています。蚊や感染者の体液を媒介にしたジカウィルスの感染は既に100万人以上になり、世界中で最大22億人の感染が予想されます。4 現在のところ、治療法およびワクチンは存在せず、最大30 %の新生児は感染の可能性のある地域に住むことから、先日、WHO事務総長が、ジカウィルスは国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言しました。5

なぜ短期間のうちにこのようなことが起こったのでしょうか? 実は、短期間に起こったわけではないのです。最初にこのウィルスが医者によってウガンダで発見されたのは1947年のことでした。この時、ジカウィルスは軽度な症状しか起こさないと考えられていました。多くの人が1週間前後で症状が消えたからです。症状はそれだけで収まるものだと誰もが思っていました。ジカ熱は何十年もの間、デング熱や似たような症状のウィルスと誤診され特に報告されませんでした。これらの理由で2015年にブラジルでジカウィルスが発見された時には、科学的な文献はわずかしかなく、医者たちは当初“謎の病気”と呼んでいました。6

ジカウィルスの正体を暴く

いくつもの点でジカウィルスは未だ謎に包まれています。製薬会社が大慌てでワクチン開発を行おうとする中、ドール研究所所長でリオデジャネイロ連邦大学バイオメディカルサイエンス部の教授であるDr. Stevens Rehenが率いるチームは、異なる目的を持っています。彼らは人工多能性幹細胞 (iPS)を使用して神経幹細胞(NSC), 球状の細胞塊(ニューロスフェア)、脳のオルガノイドを3D細胞培養し、ジカウィルスが神経細胞の成長に及ぼす影響について研究しています。別の言い方をすると「ミニ・ブレイン」と呼ぶものを作って胎児の発達段階のシミュレーションを行うことにしたのです。ジカウィルスに感染したミニ・ブレインから、驚くべき結果が得られました。

免疫染色、アポトーシスの測定、細胞死率の定量のためのエチヂウムホモニ量体のラべリングなどのアッセイ系を実行するために、Dr. Rehenの研究チームは、パーキンエルマー社製のハイコンテンツスクリーニングシステムOperetta®、自動分注装置 JANUS®を組み込んだcell::explorer®を使用しました。JANUS ワークステーションでは、分注や染色などのサンプル調整を自動化させ、準備時間を大幅に短縮させ、Operettaシステムでは、20倍で撮影されたデジタル位相差細胞イメージを自動で次々と撮像したものを、Operettaに付属するHarmonyソフトウェアにより、バイアスのない定量データを得ることができたのです。細胞の形態を定量することにより、ヒト脳形成の初期段階で、ジカウィルスに感染した際に起こる細胞表現型のより正確な変異を捉えることを可能にしました。

"ジカウィルスが細胞を殺すだけでなく、細胞成長にも影響を及ぼすことがわかりました" Dr. Rehen はBBCで語りました。またブラジルで採取されたジカウィルスの株は特に危険なものであったと述べています。7

Dr. Rehenの同僚でScienceの筆頭著者であるDr. Patricia Garcezは、「ジカウィルスが大脳皮質に与える損傷の大きさと速さをOperettaイメージングシステムで見た時、とてもショックを受けました。」と話しています。「ジカウィルスの影響はとても衝撃的でした」とBBCのインタビューに彼女は答えています。「ものすごく速いのです。私達は、3日目で細胞死を確認しました。極めて大量の細胞死でした。そして6日のうちに、ニューロスフェアも完全に消滅してしまいました。」8

「ジカウィルスの何かが脳形成中の神経細胞を細胞死に導くことがわかりましたので、これからはウィルスの何が脳に影響していくのかを、胎児の各発達段階において研究する必要があります。」と Dr. Rehenは語っています。

 

*こちらの装置は研究目的のみの使用となっております。臨床検査にお使いにはならないでください。製品のお問い合わせはweb窓口またはディスカバリー・アナリティカル・ソリューションズ事業部 ライフサイエンス営業本部までお問い合わせください。Tel:03-3866-2647

 

参考文献
  1. Wayne Davies, "Zika Virus: Risk Factor Higher Than First Thought, Says Doctors", BBC, May 2, 2016.
  2. Patrícia Brasil, et. al., "Zika Virus Infection in Pregnant Women in Rio de Janeiro — Preliminary Report", New England Journal of Medicine, March 4, 2016.
  3. Catherine Saint Louis, "Study of Zika Outbreak Estimates 1 in 100 Risk of Micocephaly", The New York Times, March 16, 2016.
  4. Davies, op. cit
  5. World Heath Organization, "WHO Director-General Summarizes The Outcome Of The Emergency Committee Regarding Clusters Of Microcephaly And Guillain-Barré Syndrome", Press Release, February 1, 2016.
  6. Donald G. McNeil, Jr., Simon Romero, and Sabrina Tavernise, "How a Medical Mystery In Brazil Led Doctors to Zika", The New York Times, February 6, 2016.
  7. Davies, op. cit
  8. Ibid.
  9. Patricia P. Garcez, et. al., "Zika Virus Impairs Growth In Human Neurospheres And Brain Organoids", Science, April 10, 2016.