TSA 免疫組織化学染色・in situ Hybridization増感システム

目次


■TSA増感システムとは?

TSA (Tyramide Signal Amplification) システムは、パーキンエルマーライフサイエンス社が特許を有する CARD (Catalyzed Reporter Deposition) 法の原理に基づいたシグナル増幅法です。このシステムを使用することにより、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry, IHC)や in situ Hybridization(ISH) におけるプローブのシグナルを、簡便かつ短時間の反応で特異的に増幅し、染色・蛍光での検出感度を向上させることが可能になります。

免疫組織化学染色において
TSAシステムを使用することにより、従来と同等の検出感度を維持しながら、一次抗体の使用量を最高で 1,000分の1 以下に減らすことができます。

in situ Hybridization において
検出したい DNA や mRNA がごく微量しか存在しない場合、例えば組織に感染したウィルスDNA などを in situ PCR で増幅した後に検出するかわりに、TSA増感システムを使用すれば PCR での増幅を行ったのと同等以上の感度が容易に、かつ迅速に得られます。

TSAシステムは、現在ではビオチンフリーの系で発色によるシグナル検出を行うことができる TSA Plus DNPシステムや、Fluorescein、Cyanine 3、Cyanine 5 といった蛍光色素を用いた蛍光染色用の TSA System・TSA Plus System など、ラインナップが広がっています。

肺組織における p53 mRNA の検出
どちらも肺組織のパラフィン包埋切片に対し、DIG標識 p53 RNA プローブを用いてハイブリダイゼーションを行ったものです。 (A)はアルカリフォスファターゼ(AP)と BCIP/NBT を用いた標準的な DIG による検出を行ったもの(発色:1時間)、(B)はプローブをハイブリダイズ後、TSA Plus DNP (AP) System によるシグナルの増幅を行い、AP と BCIP/NBT によりシグナルを検出したもの(発色:15分間)。TSA Plus Systemを使用したシグナル増幅処理により、常法にくらべてシグナル検出感度が明らかに上昇しています。

* TSA is protected by US patents: 5,731,158, 5,583,001, and 5,196,306 and foreign equivalents.

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■シグナル増幅の基本原理

チラミド(Tyramide) 化合物は、過酸化水素の存在下において、西洋わさびパーオキシダーゼ(HRP) の触媒作用によりラジカル化され、その近傍にある芳香属化合物と非特異的に共有結合で結びつきます。

TSAシステムではこの性質を利用し、HRP標識の抗体やプローブを用いて IHC や ISH を行った後に、ハプテン標識のチラミドを作用させます。チラミドは HRP によりラジカル化されますが、このラジカルの寿命は非常に短いため、HRPの近傍にあるサンプル組織やブロッキング剤に含まれるアミノ酸(チロシンやトリプトファン)などの芳香属化合物とのみ共有結合し、HRPの周辺にのみハプテン標識のチラミドが集積します。つまり、一つのハプテン分子を基点とし、それを拡散することなくハプテンの増幅を行うことができるのです。最後に増幅したハプテン分子を用いて、発色あるいは蛍光でシグナルを検出します。

 

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■TSA増感システムを適用できる検出系

TSAシステム・TSA Plusシステムでの蛍光によるシグナルの検出

  • TSAシステム・TSA Plusシステムでは、5種類の異なる蛍光 ~ Fluorescein・ Tetramethyl-rhodamine (TMR)・ Coumarin・ Cyanine 3・ Cyanine 5 ~ を使用したシグナル検出系をご用意しています。
  • シグナル増幅の操作を行った後に、直ちに蛍光を検出することができます。
  • TSA Fluorescein system・ TSA Plus Fluorescein systemを使用する場合には、発色によるシグナルの検出も可能です。Fluorescein標識チラミドを作用させた後に、AP あるいは HRP標識の抗Fluorescein抗体を作用させます。最後に BCIP/NBT・ DAB を基質として発色を行います。
  • 蛍光多重染色が容易に行えます。
TSAシステム使用の有無による CMV感染細胞の直接蛍光染色像の比較。 TSAシステムを使用することにより、S/N比が大幅に向上することがわかります。

標準的な方法で蛍光染色を行った場合

TSA システムによりシグナルの増幅を行った後に、蛍光染色を行った場合

TSAシステム・ TSA Plusシステムによる発色によるシグナルの検出

  • TSAシステム・ TSA Plusシステムでは、2つのハプテン標識 ~ Biotin・ DNP ~ を使用したシグナル検出系をご用意しています。
  • Biotin あるいは DNP標識の検出は、標準的に用いられる HRP あるいは AP といった酵素と、DAB・ BCIP/NBT といった発色基質を使用して行います。
  • TSA Biotin System をご使用の場合は、Streptavidin標識の Fluorescein・ Texas Red・ Coumarin を使用することにより、蛍光としてシグナルを検出することができます。
  • 非常に低レベルの標的シグナルを、最大限に増幅することができます。
パラフィン包埋したヒト扁桃腺の連続切片に対する CD3たんぱく質の免疫組織化学染色像。TSAシステムの増感作用により、標準的な染色に比べて強いシグナルが得られることが分かります。(F. van den Berg and A. de Koning, Dept. Pathology, AMC, Amsterdam, The Netherlands)

一次抗体に 400倍希釈したウサギ抗CD3抗体を、二次抗体に Biotin標識抗ウサギ IgG 抗体を使用し、Avidin-Biotin Complex(ABC) 試薬と DAB を用いた染色像

400倍希釈のウサギ抗CD3抗体を一次抗体に、Biotin標識抗ウサギIgG抗体を二次抗体に使用し、TSA Biotinシステムで増感した後にABC試薬と DAB を用いた染色像

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■TSA増感システムの利点

標的分子の発現レベルが非常に低く、感度を上昇させる必要がある場合
標的分子の発現レベルが低い場合、それらの細胞内極在を明らかにするためには、その感度を最大限にすることが非常に重要です。非常に重要なことです。標準的な手法では検出不可能だったような発現レベルの低いの分子も、TSAシステムを使用することにより検出可能になるかもしれません。これが多くの TSAユーザーから支持を受けている最も大きな理由です。

使用する抗体やプローブが非常に貴重で、使用量を少なくする必要がある場合
TSAシステムが支持を受ける理由は高い感度を理由としてばかりではありません。TSAシステムを使用することにより、抗体や DNAプローブの使用量を大幅に減らしつつ、従来と同様な感度を得ることが可能になります。

ホジキン病によるリンパ腫中の EBウィルス抗原に対する免疫組織化学染色像。TSAシステムの使用することで、一次抗体の使用量(濃度)を 1,000分の1 に減らしても、従来と同様の染色像が得られることが分かります。(R. Von Wasielewski and S. Gignac, Pathologisches Institut de Medizinischen Hochscule, Hannover, Germany)

抗EBウィルス抗体を 25倍希釈して行われた標準的な免疫組織化学染色像

抗EBウィルス抗体を 25,000倍希釈し、TSAシステムによる増感操作を行った場合の免疫組織化学染色像

同一の検体から複数の標的分子を検出する場合
TSAシステムは、様々な発色・蛍光検出系に対応するようにフレキシブルにデザインされています。そのため、同一の検体から複数の標的分子を発色・蛍光の方法によらず、多重染色・検出することができます。


ラットの脳に対する TSAシステムを使用した Arg-Vasopressin と Oxytocin との二重染色像(TSA Cyanine 3 System と TSA Cyanine 5 System を使用)

 

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■TSAとin situハイブリダイゼーション(ISH)

In situ Hybridization
in situ Hybridization (ISH) は DNA や RNA の極在を細胞レベルで検出・可視化するためのテクニックです。ISH が開発された当初は、染色体・細胞・組織における特定配列を持った DNA・ RNA検出には 35S や 33P で標識化したプローブが使用されてきました。近年では発色や蛍光検出の技法を用いた Non-RI での ISH が標準的に行われるようになっています。

TSAシステムは RI を使用した ISH と同等以上の解像度・感度を、より短い時間で手に入れることを可能にする非常に優れた技法です。TSAシステムによるシグナル増幅のステップを発色・蛍光の ISHプロとコールに組み込むことにより、RI を使用した ISH と同等の感度・それ以上の解像度を実現します。

in situ PCRに代わる技法としてのTSA増感システム
in situ PCR法は標的の核酸を ISH で検出するために、PCR法を利用して標的分子を増幅する技法です。標的の分子数が非常に少ない場合には極めて有用なテクニックですが、特別な装置を必要とし、False Positive が生じやすく、シグナル検出時の解像度があまり良くないなどの問題点を持ち合わせています。

この in situ PCR法と比較すると、 TSA増感システムを使用した手法は、 従来のプロトコールに TSA による増感のステップを組み込むだけで使用することができ、特別な装置も必要とせず、False Positive の問題を気にすることなく、迅速に解像度の良い結果が得られるなど、非常に優れた技法であるといえます。

TSAシステムを使用することで、 簡単かつ迅速に、 in situ PCR使用時と同等の結果が得られることが分かります。
A. In situ PCR 20 cycles B. TSA Enhanced ISH
HIV-1 の DNA をホルムアルデヒド固定したリンパ節組織から検出したものです。
Courtesy Dr. J. Luka and C. Afflerbach, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, VA

 

RI を使用した ISH と同等の感度・解像度の結果を、 より短い時間で得られることが分かります。
ラット脳の凍結切片を検体に、 終夜で Hybridization を行って Enkephalin mRNA の検出を行った結果です。 (A) は 33P標識のプローブを使用し、X線フィルムで 2週間かけて検出したもの、(B) は DIG標識プローブを使用し、 TSA Plus DNP (HRP) System で増感をおこなった結果です。

in situ Hybridization で TSA を用いる場合のプローブラベルについて
TSAシステムを使用するにあたり、 使用するプローブのラベル方法は通常通りでかまいません。 TSAシステムでは標準的な Non-RI ISH と同様に、Random Priming や Nick Translation、RNA Transcription といった標準的な方法を使用し、 ジゴキシゲニン(DIG) や Biotin、Fluorescein、そして DNP といったハプテン標識を施したプローブを使用することができます。

ハプテン標識化プローブのハイブリダイズに続き、 TSAシステムを使用するための HRP標識された抗ハプテン抗体を作用させ、 その後にTSAを作用させます。

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■TSA と Immunohistochemistry (IHC)

免疫組織化学染色(IHC) は、組織中のたんぱく質を検出するための確立された技法です。IHCには凍結・パラフィン包埋などを施された組織が使用されますが、TSAシステムはどのサンプル処理法とも互換性があります。TSAシステムは PAP (Peroxidase Anti-Peroxidase)、APAP (Alkaline Phosphatase Anti-alkaline Phosphatase)、ABC (Avidin-Biotin HRP-Complex)、Immunogold Detection System など各種の酵素を使用した検出系も含め、既存の様々な検出系に適用することが可能です。もちろん、その際に使用する発色基質についても、DAB・ BCIP/NBT など様々なものが使用できます。いずれの場合にも TSAシステムを使用することにより、感度が非常に増大し、また抗体の使用量を減らすことができます。

 

 

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